メリークリスマス🌲
SEKAI NO OWARI『silent』の歌詞の話です。
この曲は、こういう歌詞から始まります。
純白の雪が降る
街から音が全て奪われていった
こんなに静かだと
閉じ込めた言葉も聴こえてしまいそう
静かだからこそかえってよく聴こえる、という逆説的な表現が印象的です。
この歌詞にはほかにも「かえって」がたくさん出てきていて、それが曲全体の骨格になっているように思えました。
きょうはそういう話をします!
「かえって」の曲
国語辞典で「かえって」を引いてみます。
『三省堂国語辞典』第八版です。
たとえば先ほど引用した下記の部分。
純白の雪が降る
街から音が全て奪われていった
こんなに静かだと
閉じ込めた言葉も聴こえてしまいそう
雪が降って静かな状態だと、“ふつう”は閉じ込めた言葉も静けさで聞こえないはずなんだけど、”予想されるのとは反対に”、静けさの中に言葉が聴こえてくる、ということをこの歌詞は描写しています。辞書の説明と同じです。
この曲には、そんな「かえって」がたくさんあります。
体温で溶ける雪の結晶 触れることが出来ない
雪は目で見て知覚することはできるけど、手に触れてさらに感覚につなげようとすると“かえって”消えてしまったり。
凍える身体、力を抜いたら
震えが少し治まった
でもそれは刹那 無意識のうちに
身体が強張っていく
意識すれば“かえって”力が抜け、意識を背けるほど“かえって”力が入ってしまったり。
そのほかにも、わかりやすい順番に並んでいないものもあります。
2番のサビはこういう歌詞。
こんな真っ白な世界の中にいたら
自分だけちょっと汚れてるみたい
この後、Dメロにはこういう歌詞があります。
純白の雪が降る
「降るなら積もってね、汚くなるだけだから」
そんな事を思った私は
どんな顔してた?
「どんな顔してた」かは、前述の2サビを踏まえるとわかりやすく感じます。
目に見える外の世界を汚くなるだけと思うほど、“かえって”自分自身のことを汚れた存在に思えている、というのがこのシーンです。
こんな風に、AであるけどそれはかえってBに帰結する、という組み合わせがたくさんあります。
ここまで来ると、この歌詞をもっと違う風に見ることもできます。
Aだけ見つければ、“かえって”の先のBが透けて見えると思うんです。
この降り積もる雪は
やっぱり貴方と見たかったな
この部分はAに当たります。対になるBパートは歌詞の中で明示していないように思えます。
だけど貴方と見たかったと思っていたけど、そう思うほど“かえって”……と想像すると、続きは明確です。
貴方と見たかったと思っていたけど、そう思うほど“かえって”貴方とは見ることはできない、ってことですよね。
この曲の中で「貴方」は不在です。
だけど「いません」ということを言葉にせずに、いないことがわかるように描く、というのがこの歌詞の選んだ方法です。
これは歌詞の中でたくさん埋め込まれている“かえって”があるからこそひとりよがりにならず達成できているように見受けました。
夜を泳ぐように過ごしたあの瞬間を
このスノードームみたいに閉じ込められたら
ここも同じで、過去をスノードームになぞらえるほど、“かえって”現在の時間が止まることなく流れていくこととの差が際立つ、とわたしは考えています。
それは歌詞の中の、
貴方は私の知らない時間の中にいる
こういうフレーズに符合しているんだと思います。
歌詞のばらばらなパーツを繋ぎ合わせると、そういうひとつの大きな絵が浮かび上がってきそうです。
SEKAI NO OWARI『silent』でした。
セカオワの曲の歌詞についてここで書くの、調べてみたら7年ぶりでした。さすがにびっくりした。
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