5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

虹のコンキスタドール『君がいて良かった!了解です。』 - 会話噛み合ってるから!

虹のコンキスタドール『君がいて良かった!了解です。』が話題です。

たとえば朝日新聞連載の「いしわたり淳治のWORD HUNT」。

www.asahi.com

ライムスター宇多丸×宇垣美里『アフター6ジャンクション 2』2023年10月30日(月) #17とか。

www.youtube.com

さらに……ハコサトもです!!

ということで、きょうはその話題性の頂点を飾るために?しゃべりにきました!!

虹のコンキスタドール『君がいて良かった!了解です。』歌詞

この曲の歌詞はこういう感じ。

君がいて良かった!了解です。
出会えて良かった!了解です。
顔見れて良かった!了解です。
了解です。
髪型変えた? 了解です。
服かわいいね 了解です。
今夜空いてる? 空いてません。
はい、了解です。
了解です。
Yeah yeah
Yeah yeah
了解です。了解です。
( はい了解 )

歌割りではわかりづらい(途中でどんどんごちゃ混ぜになる)ですが、この曲はたぶん2人の人が対話している形式になっています。

それをLINE風に示すとこうです。

hi0a.com

これ使いました。

一方が「君」に想いを寄せていて、寄せられている「君」側は塩対応、みたいな構図に見えます。

いしわたりさんはこの曲について、

メッセージのやり取りが歌われるのだが、そのやりとりはまるでかみ合っていなくて、一方は疑問文も交ぜながら果敢にメッセージを送っているのに、一方は徹底的に「了解です」の一言で冷たくあしらっていく。

と言っています。

また、宇多丸さんも「ディスコミュニケーション」というキーワードでこの歌詞をまとめようとしています。

でもよく見ると、会話はかなりがっちり噛み合っているように見える部分がけっこうあります。

たとえばここ。

久しぶり元気?了解です。
最近どうしてる?了解です。wow
なんかそっけないね?了解です。
どしたん話し聞こうか?
大丈夫です。

「どしたん話し聞こうか?」に対して「君」は返答を変えて「大丈夫です。」と言います。

いままでだったら「了解です。」というところですが、ここで了解してしまうと「君」は話を聞かせなければならない立場になってしまい、塩対応が貫けなくなるからです。

こんな風に「君」は相手の投げかけに対して「了解です。」と言えるときだけ言い、言えないときには異なる返答を使い分けています。

別のシーンでも同じです。

月が綺麗ですね。了解です。
パスタ屋 行こうよ No Thank You!
今月空いてるとこ・・・ありません。
はい、了解です。

ここにも「了解です。」を使わず、「No Thank You!」で返すシーンがあります。

「今月空いてるとこ・・・」に対して「君」は話の途中で「ありません。」と断ち切るし、それを受けて誘っていた側が意趣返しのように「はい、了解です。」と返答するユーモアもあります。

お互いの会話は、かなりしっかり噛み合っているのです。

中でも落ちサビに相当するあたりがいちばんそれを感じる部分です。

ここでは何かを言うことではなくて、言わないことによってコミュニケーションが成就しています。

君に会いたくて
笑顔が見たくて
胸が苦しいよ
了解です。了解です。

「君に会いたくて」「笑顔が見たくて」の後ろ、「君」の側は「了解です。」と言いません。

今までなら言える余地があるところ、「君」は黙って聞いているのです。

これがふたりのコミュニケーションがいちばん噛み合うシーンだとわたしは思いました。

その間、誘う側はいままでよりも長文でしゃべり、そして「胸が苦しいよ」と締めくくります。さっきまでコミカルな誘い方をしていたのとは表情を異にした眼差しがあります。

「君」からの返しはいままでと同じ「了解です。了解です。」ではあるものの、ここで一段階深い理解が生まれたように感じます。

一方でこの曲の最後。

ここにも似たようなシーンがありますが、先ほどとは景色が少し違います。

諦めないよ 了解です。
いつか二人で 了解です。
映画見ようよ 興味ないです。
はい、了解です。
了解です。

ここでも誘う側は「諦めないよ」「いつか二人で」「映画見ようよ」と長尺で語ります。

それに対して「君」のほうは、さっきと同様なら黙って聞いているはずのところ、わざわざ「了解です。」を毎回はさんでいます。

ディスコミュニケーションがあるとすればこの歌詞でここだけです。

だけどこの外しは、「君」がふざけてやっているんだと思うのです。

ちょっと話を変えます。

この曲が出てすぐのときに、虹のコンキスタドールのメンバーの何人かが歌詞の解釈について語っていました(自分は的場さん、岡田さん、清水さんがしゃべっているのは聞きました、ほかにもいるかも)。

その中で、この歌詞には2つの解釈がある、という指摘がありました。

ひとつはラジオの中で宇垣さんが言うのと同じように、たとえばオタクとアイドルのような関係です。

オタクが「服かわいいね」「焼肉やるけど家来る?」と誘い、アイドルがそれに対して難色を示す、という構図です。無銭接触は良くない🙅

そしてもうひとつは、振り入れの際に出てきたという意見。

それは、外の世界への扉を閉ざして自分の中に閉じこもる友人に対して主人公が語りかける、という解釈です。

そうだとすると誘う側も「君」の側も、丁寧なコミニケーションをずっとあきらめなかった理由が立ち上ってきます。

誘う側はなんとか「君」といっしょにまた外へ遊びに行きたいし、「君」の側は心や身体がついていかないにしてもそうやって声をかけてもらっていることが嬉しくて、それをきっかけになんとか前に進みたいってことなのだとわたしは理解しました。

そうだとすると、最後のシーンはだんだんまぶしく見えてきます。

再び引用します。

諦めないよ 了解です。
いつか二人で 了解です。
映画見ようよ 興味ないです。
はい、了解です。
了解です。

ここ、ふたりで真面目な/シナリオ通りな/役割に応じた会話をするのを降りています。

そしてふざけた/自己言及的な/会話を会話として楽しむようなやり取りに変化したシーンだと捉えることができそうです。

いままでのやり取りの中で出てきた「了解です。」はほんとにただの了解だったけど、ここに出てくる「了解です。」は過去の自分の発言を引いてくる引用の了解です。

それってふたりのやりとりの蓄積の上にしか成り立たないもので、友情に裏打ちされた「了解です。」の輝きを帯びます。

Yeah yeah
Yeah yeah
了解です。了解です。
了解です。了解です。
了解!

そういうシーンを経て締めくくりに描かれる「了解!」は、ふたりが一歩踏み出せた証になる、ふたりだけのキーワードなんじゃないかな、と思いました!


虹のコンキスタドール『君がいて良かった!了解です。』でした。

今回著名人がこの曲について取り上げているのは主に歌詞についての側面です。

そういえばこの曲配信リリースされたときのオタクの中での賛否両論が沸き起こっていて、それも歌詞についてのことでした。

わたしは歌詞が好きで虹コンが好きみたいなところがあり、プラスの評価もマイナスの評価もあったにしても、みんなが虹コンの歌詞の話をしていて嬉しいな〜と思っています。

これからも虹コンの歌詞の好きさについてはいっぱい言葉にしていきてぇな〜って気持ちです。素敵な歌詞と楽曲の供給があってきょうもとても嬉しいです🫶

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