5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

DECO*27 feat.初音ミク『ゾンビ』 - ゾンビに対してだけ使えるツッコミ

もうすぐハロウィン〜🎃

ハロウィン曲っていろいろあるけど最近好きな曲なにかな〜〜って思ってたらそういえばコレがあった!ってなりました。

DECO*27 feat.初音ミク『ゾンビ』の歌詞の話をしますね!

DECO*27 feat.初音ミク『ゾンビ』歌詞

ゾンビに対してだけ使えるツッコミ

わっはー We’re ゾンビゾンビ

これがイントロで繰り返されるフレーズ。

これって結構珍しいと思います。具体的に言うと「We’re」が珍しいです。

たいていの場合、主人公って「わたし」、つまり単数なんです。

たとえばDECO*27『ヴァンパイア』ならこうです。

あたしヴァンパイア

だけどこの曲は『ゾンビ』と言うタイトルで、「We’re ゾンビゾンビ」と歌われます。

わたし“たち”の関係がタイトルとして選ばれることはちょっと新鮮です。

Aメロいきます。

「死にたい死にたい」って死んでるじゃん
なのに「会いたい会いたい」が消えないじゃん
いつだって痛いの痛いの飛んでいかないの なんでなんで
寂しさだけ残っちゃってるんだ

カジュアルに使われる「死にたい」に対して「死んでるじゃん」ってツッコミ入れられるのめっちゃよくないですか?

こういう風にいえるのは、主人公たちがゾンビとしてすでに「死んでる」から。

簡単に「死にたい」って言う人に「どうせ死なないくせに〜!」みたいに返すのは簡単だけど、歌詞の中でゾンビをモチーフにしてしまうと別のツッコミが入る余地が生まれます。

ベッタベタによく聞くクリシェに対して聞いたことないアプローチの返答ができるところに文彩の妙を感じます。超いい。

傷を縫って 蜜を塗って 何度だって 恋をするコーデ
傷擦って 蜜を吸って 何度だって 恋がしたい

「恋をするコーデ」っていうのもすごい好き。服を着替えるみたいに恋愛するってことだと思うんです。

ゾンビは一般に服を着替えたりするイメージないと思うけど、その間を取り持つのが「傷を縫って」って表現。

イラストともシンクロしていて素敵です。

あたしなっちゃってるの
あいらびゅー 腐りかけもいいね 
きみもなっちゃえば?
あいらびゅー ふたりだけのシークレット

「あたしなっちゃってるの」のニ格は「ゾンビに」です。

「きみもなっちゃえば?」のところも同じく「ゾンビに」でしょう。

この時点では「あたし」は完全にゾンビ、「きみ」はいままさにゾンビになろうとしているところです。

冒頭の「We’re ゾンビゾンビ」にまさになるところがサビで描かれています。

ってなるとゾンビになることはなにかいいことのような感じがしますが、この歌詞はもう少し複雑です。

わっはー We’re ゾンビゾンビ
ドッキドキがもう聞こえない
わっはー We’re ゾンビゾンビ
ぎゅっとしても冷たいまま

「ドッキドキがもう聞こえない」ってどういうこと……?

この曲の中でいう「死」は、恋愛感情の死だとわたしは思うんです。

ゾンビになって「ドッキドキがもう聞こえない」状態になるということは、もう相手にときめく気持ちがわかない、ってことです。

「ぎゅっとしても冷たいまま」なのは体温の描写でもありますが、同時に燃える気持ちがもう冷めてしまったことの描写でもあります。

1つ前の連にもう一度立ち返ります。

あたしなっちゃってるの
あいらびゅー 腐りかけもいいね

ここで「あたし(ゾンビに)なっちゃってるの」と描かれていることの真髄はつまり、「あたしの気持ちはもう冷めている」ってことだと思うんです。

だから、

きみもなっちゃえば?
あいらびゅー ふたりだけのシークレット

「きみも(ゾンビに)なっちゃえば?」は「きみもあたしのことは諦めな?」ってことになるんです。

わたしこの曲、そうやって相手を振る曲だと思ったんです。

ところが。

この曲のタイトルは『ゾンビ』でした。ゾンビは死体ではなく、半死半生の存在です。

つまり、ふたりにはまだ残った気持ちがあります、少しだけ。

「死にたい死にたい」って死んでるじゃん
なのに「会いたい会いたい」が消えないじゃん
いつだって痛いの痛いの飛んでいかないの なんでなんで
寂しさだけ残っちゃってるんだ

「会いたい会いたい」が消えず、「寂しさだけ残っちゃってる」理由はそこにあります。

ここにこの歌詞の奥行きを感じます。


DECO*27 feat.初音ミク『ゾンビ』でした。

DECO*27さんの曲って音韻が特徴的で、わたしは音韻が特徴的な曲すごく好きなのでいつもその話をしちゃいがちなんですけど、実際には歌詞の別の要素にも好きな要素はいっぱいあって、今日は比喩とマッピングの部分について掘り下げました。

こういう「ゾンビ」みたいな適切な比喩があるだけで、歌詞の世界の奥深さを急に広がるみたいなことがあって、文章表現たのしいなぁって思います!

DECO*27さんは過去にこの2曲の歌詞について考えたことがありました。

『ゴーストルール』で取り上げたことはDECO*27さんの他の楽曲でも基本的に全部にいえることなのでかこのかたの曲作りの骨格になっていることなのだと思います、めちゃくちゃいいよねこのポリシー!

hacosato.hatenablog.com hacosato.hatenablog.com

ゾンビ

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