虹のコンキスタドール『ナミダ、あわ雪』の歌詞の話です!
ひとひらナミダあわ雪
手のひらに そっとこぼれていく
とめどない想いの 結晶が輝いてる
「君が好き」
こういう歌詞で、自分の心情が雪になぞらえてあります…❄️
それって一見不思議な歌詞です。
「君が好き」っていう熱い想いがあるのに、なぞらえられているのは熱さとは真逆の「あわ雪」だから。
でもそうなっていることによって、とてもいい効能が五臓六腑に染み渡ります。
これからそういう話をしていきます!
愛情は、冷たい
この曲はこんな感じの歌詞で始まります。
君がくれた 白いマフラー 久しぶりに巻いた
こんなにあったかいって
あの頃はちっともわかってなかった
「君」の愛情が「あったかい」って言葉で表現されます。
愛情が暖かさで表現されるのは文化を問わないようで、認知言語学者のレイコフとジョンソンは、‹愛情は温かさ›(Affection Is Warmth)というかたちでそれを表現しています。
(彼女は温かい人だ)
というとき「温かい」という部分に、親身さや親切さ、愛のある接し方を感じると思います。
(彼女に対する愛は私の中でまだくすぶっている)
「くすぶる」の、燃え上がりはしないけれどまだ熱を持ったイメージが、恋愛の描写にもそのまま当てはめることができます。 日本語も英語も同じなんだな!
というわけで、愛情と暖かさはとても近いところにあり、この曲の最初の部分はそれを踏まえてあります。
ところが。
この曲の歌詞のよさは、それだけにとどまらないところにあります。
主人公の恋心は、逆に冷たいからです。
サビの部分の歌詞はこういう感じ。
ひとひらナミダあわ雪 手のひらに そっとこぼれていく
「あわ雪」というのは雪なのでもちろん冷たいわけなんですが、そのあとこう続きます。
とめどない想いの 結晶が輝いてる
「思いの結晶」というのは「君が好き」という気持ちに見えるよな……。
つまりこうです。
あわ雪=思いの結晶=君が好き
主人公の感情は、あわ雪のように冷たいのです、強い想いなのに。
ところがこの恋心にはもうひとひねりあります。
主人公は自分の恋心が冷たいことに納得してないのです。
会いたい 会えない でも会いたい
もう一度 この手を握ってよ
手を握るとだいたい相手のあたたかさを感じるわけじゃないですか。主人公の恋心にとって、暖かさは対極的な存在です。
熱に触れたら主人公の恋心は溶けてしまいます。だけど、
置いていかないでこの冬に どうか 私を溶かして
主人公はそれでいいと歌うのです。
本当は主人公の恋心は温かい側にあるはず(なぜなら愛情は温かいものだから)なのに、ボタンの掛け違いがあって、主人公は冷たい側に立ってしまっています。
主人公のあわ雪のような恋心は、温かい側に行ったら溶けてしまいます。
だけど主人公は、その恋心が溶けて消えてしまうことを望んでいるんですよね。
なぜなら、主人公が愛する「君」が温かい側の人だからです。
単に別れを描くだけならもっとシンプルな方法もあるけれど、気持ちを「あわ雪」と重ねることによって、ままならなさがより引き立つんですね……。
というわけで、虹のコンキスタドール『ナミダ、あわ雪』でした。
今回の曲と同じ手口(言い方)でわたしの心を魅了したのが、同じく虹のコンキスタドール『恋・ホワイトアウト』です。
「好き」が降りしきる夜に
前が見えなくなって
強い風に吹かれる恋は
ホワイトアウト
この曲のなぞらえ方の巧みさで、わたし完全に落ちたんですよね……とんでもねぇバケモンみてぇな曲だよ……。
虹のコンキスタドールの歌詞はほかにも考えてみたのがあるので、よければこちらもどうぞ。
hacosato.hatenablog.com hacosato.hatenablog.com
あと季節の変化と恋愛の変化を重ねた描写としてはこの歌詞もすっごくよかったです。
そして、途中で出てきたレイコフとジョンソンの話の出典はこちらです。
鍋島 弘治朗『認知言語学の大冒険』(2020)開拓社
認知言語学って、フレーム意味論、虚構移動、プロファイルとベース、といったいろんな道具立てがあるのはわかっても、それぞれの関係がいまいちわかんなくないですか? わたしゃ混乱してたよ。
それがこの本できれいに説明されてて、好き〜!ってなりました(素人なので理解したとは自信持って言えないんだけども……)。
そんな経緯があり、この本は、わたしの中では2番目に好きな「冒険」です(1番はこれです、よろしくお願いします)。
あといっぱい書いてきたんだけど、言いたかったことほぼ完結にもう言われちゃってるんだよな。
「君が好き」っていうとめどなく輝く思いの結晶を「どうか溶かして」って願うの切なすぎるだろ助けてくれ
— 々々々 (@_sosososososos) October 28, 2021
きらりココロに結晶が光る
— 々々々 (@_sosososososos) October 28, 2021
ふたつとない宝石みたい
溶けない冷めない愛を夢見てる
とめどない思いの結晶が輝いてる
とげつく思いの結晶が痛いんだよ
冷えきった思いをこの感情全部溶かして
スノラブと同じ二人だと思って聴くと切なすぎる。冷めきったのに溶けきれないせいで愛が棘になってるの糞悲痛
スノラブはほんとに解釈一致😡😡😡