5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

こんなback number『高嶺の花子さん』は嫌だ、「でも見たい となりで目覚めて “お疲れ”と笑う君」

おはよ〜〜☀️

NHKのラジオ第1のラジオ深夜便の「気になる日本語」というコーナーご存知ですか?

最近の日本語についての話をNHK放送文化研究所の塩田さんとアンカーの中川さんがしゃべる、というコーナーです。

なんですけどこれ、出典としてやたらとback numberが出てくるんです。

どう考えても塩田さんback number好きだとしか思えないんだよな!

10月13日の回では、back number『高嶺の花子さん』が出てきたのでわたしもその話したい!と思って来ました!

back number『高嶺の花子さん』歌詞

「おはよう」って言ってくれるから嬉しい

Bメロにこういう歌詞があります。

君を惚れさせる 黒魔術は知らないし 海に誘う勇気も車もない
でも見たい となりで目覚めて おはようと笑う君を

これをきっかけに、ラジオでは「おはよう」はいつ使えるのか、という話に発展します。

たとえばいったい何時何分まで「おはよう」が使えるのか、職業によって違うのか、地域差があるのか、性差があるのか……みたいな。

NHKってそういうことについてがっつりデータを持っていて、言語を使う文化背景の理解についてしっかりした裏打ちがあるので強いです、ほんとにすごいと思う。

で、ラジオでは最近の大学生についての話に発展します。

最近の大学生、あんまり「おはよう」って言わないんですって。

言われてみれば確かにそうで、構内で友だちに1日のうちに初めて会うときのあいさつは
「おつかれ〜」
って言う感じありますよね。

ある大学1年生は先輩からそういうあいさつをされて「自分も大学生になったんだな〜〜」って感覚になったって話を塩田さんは紹介していました。

ところで、アンカーの中川さん(1966年生まれ)はNHKに入社したときに同じあいさつをされて「社会人になったんだな〜〜」ってなったってエピソードを紹介しています。

当時の中川さんの先輩は「お疲れさまです」は不適切だ、という立場を取っていたそうで、ということはどうやら時代が進むごとに「お疲れさま」が使える範囲はどんどん広がっているといえそうです。

「お疲れさま」が何にでも使えるようになった世界の末路はこうです。

確かに乾杯も、出会いも、別れも、ぜんぶ「お疲れさま」のシリーズで揃いそう!

とはいえ「お疲れさま」はいまはまだ外向きなシーンだけで使える、という印象はあります。

たとえばいまはまだ高校生以下には日常生活で使っていないと思います。

家族同士で使うにも座りが悪いと思うんですよね。

だから「お疲れさま」であってもいいのに「お疲れさま」ではないあいさつは、これからは親しさや内輪の感じをうまく表現できる時代になっていきそうです。

そこへきて『高嶺の花子さん』です。

君を惚れさせる 黒魔術は知らないし 海に誘う勇気も車もない
でも見たい となりで目覚めて おはようと笑う君を

クルマの助手席で眠りから覚めた「君」が放つあいさつが「おはよう」であることには、親しさを醸成する効果があると思うんです。

いまはまだちょっと不自然だけど、眠りから覚めた同性の友だちの一言目が「おはよう」ではなくて「お疲れ」になっても変じゃない時代、そのうち来そうだな〜ってわたしは思います。

そしてこれ、同性が言えるなら異性も言えるはずなんですよね。

あとそういえば前に付き合ってた人、ふたりで1日過ごして、夜に別れるときのあいさつ
「お疲れ〜〜」
だったんですよ。これ年上の人だったら許容しなそうじゃないですか……?

これもいずれ数十年したら許容の世代しか残らなくなる感じがしています。

だけどそんな予感がある現代で、「君」のあいさつが「お疲れ」じゃなくて「おはよう」だったら、それってやっぱりハートを射抜く力があります💘

「おはよう」も「お疲れさま」も昔からある言葉だけど、使われるシーンは少しずつ変化しています。

その変化をきちんと捉えている塩田さんはすごいなぁと思うし、それによって新しい効果が生まれる歌詞は素敵だなぁって思います✨

hacosato.hatenablog.com

back number『高嶺の花子さん』については実は前に1回書いたことがあるんですが、今回は別の切り口でもう一度触れてみました!

この回に限らず、NHKラジオ深夜便では月に1回ぐらい?で「気になる日本語」のコーナーがある(だいたい木曜日の深夜!アーカイブあるよ!)ので、ぜひ聴いてほしいな〜流行ってほしいな〜〜って思います。すごくいい番組だし、back numberのいい曲が流れます。

次回も楽しみ!!