竹内まりや『September』の話をします〜! 9月だから!!
この曲聴いたのつい最近なんですけど、この曲最後まで聴いてマジで声出たんですよね……。
最後がすごいいいんですよ……。
歌詞の冒頭はこういう感じ。
辛子色のシャツ追いながら
飛び乗った電車のドア
いけないと知りながら 振り向けば隠れた
これが最後の1行と呼応するんですけど、きょうはいっしょにその良さみを分かち合っていこうと思います🍁
※公式動画がYouTubeにないんだが!!
異なるカメラワークで描くひとつの歌詞
辛子色のシャツ追いながら
飛び乗った電車のドア
いけないと知りながら 振り向けば隠れた
この3行、前半の2行と最後の1行でカメラワークが違います。
前半の2行は情景の描写。
何度か引用している歌詞の半径の話に当てはめると、この部分は半径5mの話だと思います*1。
Bメロ→半径0m:内面の話
サビ→半径100m:自分から離れた世の中一般の話
ところが「いけないと知りながら 振り向けば隠れた」は半径が異なっていて、こちら半径0mの話です。
「シャツを追う」という外から見える描写と、「いけないと知りながら」という内面の描写を合わせて、わかることは下記の通りです。
この曲の主人公は女性で、彼氏さんを尾行している、でしょ。
この曲全体的に、かなり言葉を絞っているのに、言いたいことがだいたいわかる感じがあり情報の効率がいいのです……。
さて。
連の中の前半と後半で半径が異なるやつは、その後も続きます。
街は色づいたクレヨン画 涙まで染めて走る
年上の人に会う 約束と知ってて
前半の「街は〜」の部分は完全に引きの画。つまり半径5mの話です。
「街」が「走る」と描かれているのは、主人公が電車に乗っていて、電車の窓から景色が走り去っていくのを見ているからです*2。
でも「年上の人に会う 約束と知ってて」はどう見ても内面の描写です。つまり半径0mの話です。
ここでも1連と同様、異なる半径の描写を使って、ひとつの世界を描き分けようとしています。
主人公は、彼氏が別の女(年上)と会う約束してると嗅ぎつけて追跡に来たのですね🕶 人目を忍ぶじゃん。
そしてサビ。
September そしてあなたは
September 秋に変わった
夏の陽射しが弱まるように心に翳がさした
まずここがいいのよな。
「あなたは」「秋に変わった」というのはまず、やっぱり年上の女と会ってた!ってことだと思うんですよ。それを季節になぞらえて表現するのがいいよね。夏ほどの熱がなくなったってこと。
あと、「あなた」が「秋」の側にいたことには伏線があるんです。
歌詞の1行目。
辛子色のシャツ追いながら
「あなた」が着ていたシャツは辛子色。
これって秋の色だと思うんですよね……🍁
さらに、心に影が差す描写も9月に絡めて「夏の陽射しが弱まるように心に翳がさした」と歌われます。できすぎでは……。
そしてこんなにできすぎなのにサビ畳み掛けてくる……。
September そして九月は
September さよならの国
解きかけてる愛の結び目涙が木の葉になる
一般に場所と時間って人の知覚の上ではよく似ています。例えば自分から離れた場所を「遠く」と言うし、それと同じ言葉で「遠い過去」「遠い未来」のように時間も指すことができます。
「そして九月は」「さよならの国」というのはそれを踏まえた表現です。
いま主人公は電車に乗って、ふだんと違う場所にいます。ふだんと違う場所にいるのと同時に、付き合っている相手が他人と一緒にいるというシチュエーションに立ち会っています。
その疎外感を、両方とも「九月」という言葉で束ねて呼んでいるんですよね。すごいな……。
さらに、よ。
「愛の結び目涙が木の葉になる」もめちゃ強いですよね…。
結び目がほどける瞬間ってこの絵のいちばん左みたいなかたちになるじゃないですか。
これが涙の形(💧←これ)であり、木の葉(🍂←これ)である、っていっているんですよね…。
さっきからメタファーがいちいち三重なんだよな…なんでそんなことできるの……??
最後のとこよすぎん?
2番もよすぎるんだが最後のところしゃべっていい?(いいよー!)
借りていたDictionary 明日返すわ
“Love”という言葉だけ切り抜いた後
それがGood bye, good bye
辞書切り抜くなよ!!!
って気持ちもあるんだがJ-POPは辞書汚しがちなのでそれはいったんよしとします(?)
なんだけどさ、この部分も表現力で殴ってくる感めちゃくちゃあるんですよね…。
まず、辞書ってなんだかんだ森羅万象を記述しようする傾向あると思うんですけど、それを彼氏さんから借りてたってことは「あなたは私のすべて」的な含みを免れないと思うんですよね〜。
そして、それを返すってことは「もうあなたは私のすべてではない」ってことでは💡
さらに「“Love”という言葉だけ切り抜」く、っていうのも強くて、
- 私の元には愛が残っている
- だけどあなたの側にはもう愛はない
ってことを同時に示せるし!
さらに。
September そしてあなたは
September 秋に変った
私ひとりが傷つくことが残されたやさしさね
この「私ひとりが傷つくことが残されたやさしさね」のとこ、辞書の話を引き継いでると思うんです。
さっきの辞書の話、黙っていたら彼氏さんはそれに気づかない可能性あると思っています。返された辞書のうち、1ページだけ切り抜かれていてもたぶんわからないから。
それを「私ひとりが傷つくこと」と言い換えるの聡明ですよね…切り抜いても彼氏が気づかないだろうこと、主人公は自覚的なんだよなきっと。
そして最後のサビ。
September そして九月は
September さよならの国
トリコロールの海辺の服も二度と着る事はない
これよこれ!!(声がでかい)
主人公さ、彼といっしょにいたときには「トリコロールの海辺の服」を着てたんですよね⛴
トリコロールはたぶん夏の服。
でもその服はもう着ないのです。
それって、8月はもう戻らないし、それと同じようにふたりの関係が元に戻ることはないということだと思うのです。
8月 | 9月 | |
---|---|---|
服 | トリコロールの海辺の服 | 辛子色のシャツ |
陽射し | 夏の陽射し | 翳がさした |
めっちゃきれいじゃん……。
竹内まりや『September』でした。松本隆ヤバすぎでしょ……。
前からJ-POPの季節に応じた曲ってだいたい傾向があると思っていて、
季節 | だれと? |
---|---|
春🌸 | だれかと |
夏🌻 | みんなで |
秋🍁 | ひとりで |
冬⛄️ | ふたりで |
って感じだと私は主張してきました。
だけどそう言い張る割には秋の曲そんなに知らなくて、秋…??ってなっていたのです。
今回秋でひとりで、の曲をこうして発見したので自分メモに追加しておきます。
情報がもっと集まったら大々的に自慢しよ✨