5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

歯切れ良かったり、悪かったり - back number『花束』


いまさらですが卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
わたし、卒業式って大好きなんですよ。
だから、3月に入ったらTwitterとかでひねもす卒業式ツイートを検索していました。
わけても印象的だったのがこいつですよ。ぜひ音声もONにして見ていただきたいの!


リア充かよさいこうだな!!って思ったわけ。
で、単純なわたしはこれ以降この曲が大好きになりましたとさ。
というわけで、きょうはback number『花束』の歌詞を考えます。

歯切れ良さと悪さ

この曲、Aメロめっちゃ歯切れ悪いんですよ。

どう思う?これから2人でやっていけると思う?
あのツイートで初めてこの曲を知ったわたしは、歌詞の1行目を見てぽかんとしました。
「どう思う?」って…。
だいたい歌詞っていうのはふだん口にするにしてはちょっと恥ずかしいものです。でも歌詞が恥ずかしい感じだからこそ言いたいことを歌詞にかこつけて伝えることができてとっても便利でもあるよね。
dentsu-ho.com
って思ってたのに、この歌詞は1行目から「どう思う?」です。なんだこの歯切れの悪さ。
そして、その歯切れの悪い問いかけに対しての応答がこうです。
んんどうかなぁでもとりあえずは
一緒にいたいと思ってるけど
歯切れ悪っ!!
問いかけもふわふわなら、応答もふわふわです。
わかるよ? 実際会話ってこんな感じだと思うよ? でもさ、歌詞とか小説とかドラマとか映画とか漫画とかゲームとかって、もっとみんなはっきりした意志をもってはきはき前に進んでなかったっけ??
そんなことを思いながら読み進めると、こうなります。
そうだねだけどさ最後は私がフラれると思うな
んんどうかなぁでもとりあえずは
同じメロディで淡々と続く会話。「私がフラれると思うな」っていう一歩踏み込んだ言葉を投げかける彼女に対して、主人公は相変わらず「とりあえずは〜」みたいなだらだらした言葉を返します。ところが、Aメロの最後はこうです。
一緒にいてみようよ
いきなり! ずばっとくる!!
この曲の良さは、そんな歯切れの悪さと歯切れの良さのバランスにあります。この曲は、それを計画的に組み立ててあるように思えるのです。

浮気しても言わないでよね
知らなければ悲しくはならないでしょ
Bメロになっても会話は続きます。「浮気しても知らなければ〜」なんていうさびしい投げ掛けに対して、主人公はこう答えます。
信用ないなぁ僕は僕なりに
真っ直ぐに君と向かい合いたいと思ってるよ
信用ないなぁ、なんていうふにゃふにゃした応答のあとで、「真っ直ぐに君と向かい合いたい」という、文字通りまっすぐな言葉が登場します。
前半が歯切れ悪くて、後半が歯切れ良い感じになるわけです。

こうしてみれば、AメロとBメロは、それぞれ最後に歯切れの良い言葉が置かれていることになります。
そうすると、メロディやコードの変化と対応して、大きく事態が動く感じを醸成することができるんですね!

そんなことより、サビがすごくいいんですよー!

僕は何回だって何十回だって
君と抱き合って手を繋いでキスをして
思い出す度にニヤけてしまうような想い出を君と作るのさ
そりゃケンカもするだろうけど
サビの頭は、曲の中で一番露出するいいとこです。さっきのツイートだってここが切り出されてBGMになっていました。
こういうところで、この曲は突然歯切れの良いことばが頻発するようになります。
なんだこれ? 何回だって何十回だって抱き合って手を繋いでキスをするだとぉ〜!?!?!? なんだこの歯の浮くような言葉、まるで歌詞みたいじゃねえか!!って思えちゃうのです。

さらにサビ後半。

それなら何回だって何十回だって
謝るし感謝の言葉もきっと忘れないから
ごめんごめんありがとうごめんくらいの
バランスになる危険性は少し高めだけど
許してよ
この部分だいっすきです。よくないですか??
わたしは、J-POPの多くの曲にはサビの後半問題という問題があると思っています。
hacosato.hatenablog.com
詳しくはNMB48ナギイチ』の記事を読んでいただきたいんですが、要するに、サビの後半ってみんな印象に残りづらいよね、っていうお話です。
たとえばですね『私以外私じゃないの』って曲があるじゃないですか。
で、それを歌おうするじゃないですか。
そうすると、こうなります。
「私以外私じゃないの 当たり前だけどね だから〜ふふふふふんふふふんふ〜〜〜ん」って! なりがちでしょ!*1
その点、back number『花束』は違います。
「ごめんごめんありがとうごめんくらいの/バランスになる危険性は少し高めだけど」って表現。めっちゃよくないですか!
中学のときにいたもん! 「ごめん、そしてありがとう」が口ぐせだった男子!
そういう少しコミカルなやり方で印象に残ることばを紡いで、それを「危険性」っていうまた珍しいことばでまとめてサビを締めくくるなんて、めっちゃ策士じゃないですか。
最後に歯切れの悪さを少し残しておいて、やっぱりそんなことないよ、ってまとめるあたりが、めっちゃいいと思います。
つまり、まとめるとこういうふうになるわけです。
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後半に進むにつれて歯切れが良くなっていくのがわかりますね!
この曲には、そういう色分けと、そしてその色分けの変化の、はっきりした流れがあったのでした。

テーマと伝え方

ところで、わたしは歌詞にはふたつの切り口があると思います。ひとつは歌詞のテーマで、もうひとつはそのテーマの伝え方です。
たとえば米津玄師『アイネクライネ』だったら、
hacosato.hatenablog.com

テーマ
障害のある子どもを育てること
伝え方
「あなたの名前を呼んでいいかな」という描写

こうなります。
西野カナ『トリセツ』だったら、
hacosato.hatenablog.com

テーマ
「これからもどうぞよろしくね」って伝えること
伝え方
取扱説明書になぞらえる

こうなります。
この2曲には、大きな違いがあります。
『アイネクライネ』という曲は、テーマ自体が珍しくておもしろいようにわたしには思えます。障害のある子どもを育てることをテーマにした曲は、わたしの知ってる範囲だと1曲もありません。少なくともそれほど多いタイプの曲ではありません。
この曲がほんとうにそういうテーマで作られたのかはわたしは知りません。ただ、もしそうだったとすると偶然とは思えないぐらいにつじつまが合うから、わたしはそういう妄想をして楽しんでいます。そしてそんなアブダクションをしっかり検証しながら書いた文章をわたしはブログにしています。
一般的に「歌詞解釈」っていうと、このやり方を指しているように思えます。

でも、わたしのブログにはそれとは違うタイプの歌詞読みの記事があります。
たとえば『トリセツ』です。
『トリセツ』という曲は、テーマがすごく平易です。これからもよろしくしたい歌は、いままでもたくさんあったし、これからのたくさんあるでしょう。こういう曲を「歌詞解釈」してるひとは、ネットにはあまりいらっしゃらないようです。
でも、わたしはこういう曲でもすごくおもしろいです。なぜなら、テーマが平易な代わりに、その伝え方が傑出しているからです。自分を『トリセツ』になぞらえるとかめっちゃ新鮮じゃん楽しいじゃん!
だから、この曲のテーマにはわたしのつけ入る隙はありません。わたしがこの曲を取り上げてブログを書くなら、この曲のトリセツ感を味わうことがその中心になるわけです。これはこれで、すごくおもしろいよね。

back numberの曲の場合は、全体的にテーマは非常に平易だと思います。
たとえば今回のback number『花束』ならこうです。

テーマ
これからもどうぞよろしくね
伝え方
どう思う?って問答を入れたりする

こんな感じ。テーマは西野カナ『トリセツ』とほとんど同じだと思うんです。これからもよろしくしたい歌だよね?
でもこの曲は、いままで書いてきたように問答を入れたり、ごめんとありがとうのバランスで書いたり,そういう迂遠で不器用な方法で綴られています。だからこの曲はおもしろいのです。
思えばback number『クリスマスソング』も、ストレートな主人公と斜に構えた主人公とが切り替わるバランスの中で本質が見えてくるようになっているわけで、その感じがすごく似ています。
hacosato.hatenablog.com

テーマ
「君が好きだ」
伝え方
ストレートさとひねくれとが切り替わるバランスで表現

こういう感じなわけだ!

歌詞解釈っていうと、テーマがあっさりした曲はスルーされがちですけど、こういう表現の妙にももっとスポットライトが当たっていくといいなと思っています☆



というわけで、back number『花束』でした。
ほんとはback number『SISTER』とか読もうと思っていたんですが、時間が足りませんでした…。『SISTER』はわたしの中では、back numberとしては珍しくテーマにひねりがある曲だと踏んでいたので、これできたらバランスいいよなぁって思ってたんですが、なかなか…。全体的にはわたし、テーマが平易なほうがさくっと書けるような印象を持っています。どっちも得意になりたい!

ところで今回の読み方はback number『クリスマスソング』とめっちゃ似ちゃいました。
ほんとは『花束』に関してはほかにも言いたいことがいっぱいあったんですよ!
1番「ケンカもするだろうけど」が2番だと「ケンカもするんだろうけど」になってたりとか、ほかに萌えポイントがかなりあるんですが、うまくまとまらなかったのと字数が多すぎちゃうのでやめました…。また今度。
hacosato.hatenablog.com

花束

花束

  • back number
  • J-Pop
  • ¥250
花束

花束

*1:ゲスの極み乙女。『私以外私じゃないの』にはほかに楽しいところがいくらでもあるので、別にこの曲キライとかじゃないですっていうかスキです!