ンバヂ『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』、流行ってますよね!
好きな惣菜発表ドラゴンが 好きな惣菜を発表します
からあげ ハンバーグ とんかつ 肉を甘辛く炒めたやつ
正式名称がわからない惣菜も 好き 好き 大好き
この曲の好きなところは、プレイスホルダーが明確なところ。
その結果この曲って替え歌にすっごく向いている、っていう特徴を手に入れたと考えています。
きょうはそういう話をします!
歌詞のプレイスホルダーってなあに?
歌詞のプレイスホルダーというのは、歌詞の中で書き換えできる場所を指すことばです。いま自分が作った。
この曲でいうと、
好きな惣菜発表ドラゴンが 好きな惣菜を発表します
○○○○ ○○○○○ ○○○○ ○○○○○○○○○○○○○○ å
のマルのところ、書き換えて別の料理にしても曲が成立するようになっています。
ってことはここを替え歌にして別の曲を作ったりしやすいようになっています。
替え歌がしやすいっていうのは、曲が定着することにとって大切なことだと思っています。
前に調べたことあるんですよ〜〜↓
こんなふうに曲がSNSで繰り返し擦られていくにあたって、曲によっては替え歌しやすいという特徴が大きな力になる場合があります。
たとえばAdo『うっせぇわ』では、
うっせぇ うっせぇ うっせぇわ
— くまちゃん (@depaspakishil) May 12, 2022
茶碗蒸しぷるぷるおいしいね
ってツイートがバズっていたことがありました。
原曲では好戦的なフレーズと、ほのぼのしたオノマトペとの対比がおもしろさの源です。
この曲では、
はぁ?うっせぇうっせぇうっせぇわ
あなたが思うより健康です
という歌詞のうち、
はぁ?うっせぇうっせぇうっせぇわ
○○○○○○○○○○○○○○
の部分がプレイスホルダーになっていて、そこにみなさんが「うっせぇわ」って思うことを入れる(あるいは関係ないことを入れて意外性を出す)ことで、簡単に替え歌を作れるのです。
もとの『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』に戻ると、この曲は2行目の他にも、さらに別のプレイスホルダーを見出すことができます。
好きな○○発表ドラゴンが 好きな○○を発表します
○○○○ ○○○○○ ○○○○ ○○○○○○○○○○○○○○
1行目もいろいろ替えることができるじゃん、ってことに気づくんですよね。
ここまで来るとだいぶ自由です。
替え歌って一般には結構難しいと思うんですけど、この曲の場合は好きなものをいうだけでなんか替え歌みたいになるんですよね。
そこまで仕組みを作られているところが、この曲の良さなのだと思いました。
2行目にはさらに、替え歌にしやすいポイントがあります。
この曲、箇条書きなのです。
箇条書きの歌詞にははっきりした構造があります。
構造がある曲は替え歌が簡単なのです。
また少し別の曲を引き合いに出してみます。
たとえば西野カナ『トリセツ』。
この度はこんな私を選んでくれてどうもありがとう。
ご使用の前にこの取扱説明書をよく読んで
ずっと正しく優しく扱ってね。
一点物につき返品交換は受け付けません。
ご了承ください。
急に不機嫌になることがあります。
理由を聞いても
答えないくせに放っとくと怒ります。
いつもごめんね。
でもそんな時は懲りずに
とことん付き合ってあげましょう。
引用した部分の2連目はプレイスホルダーです。
そしてこの曲のプレイスホルダーは、箇条書きで書かれています。
続きの部分も含めて、階層を考慮して組み立て直すとだいたいこんな感じになるはずです。
- 急に不機嫌になることがあります。
- 理由を聞いても答えないくせに放っとくと怒ります。
- いつもごめんね。
- でもそんな時は懲りずにとことん付き合ってあげましょう。
- 定期的に褒めると長持ちします。
- 爪がキレイとか
- 小さな変化にも気づいてあげましょう。
- ちゃんと見ていて。
- でも太ったとか余計なことは気付かなくていいからね。
これを埋めていけば(あと捕捉的な情報も適宜入れていけば)この曲は簡単に替え歌を作ることができます。
この曲が流行っていたとき結婚式場でバイトしていた友だちが
「新婦の友人が出し物で全員この曲の替え歌を歌ってた」
って証言していました。
それってこの曲の構造の強さに裏打ちされているのだと思います。
『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』でも箇条書きの構成であることは同じです。
- からあげ
- ハンバーグ
- とんかつ
- 肉を甘辛く炒めたやつ
という4惣菜が、ひとつの番で紹介されています。
この箇条書きを埋めるだけで替え歌を作れる、というところがこの曲のやさしさです。
また『トリセツ』でも『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』でも、きれいに整った箇条書きではなく、少しバランスを崩してあるのもポイントなのかもしれないです。
『トリセツ』では階層が2階立てになっていて、箇条書きはしばしば脱線しながら進みます。
一方で『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』では階層はひとつしかないものの、4項目めがやたらと長くて、それがこの曲のチャーミングさにつながっています。
そういう隙みたいなところがあると、ますます替え歌として楽しみやすくなるのかもな〜って思いました!
ところでXで「歌詞 プレイスホルダー」で検索したら1件だけポストが見つかりました。
極めて重要な指摘。作詞において僕はなんの意味も機能も持たない言わばプレイスホルダー的な言葉を極力配置しないように気をつけています。その点では『New Young City』の収録曲の歌詞にはかなり満足しています。お楽しみに。#FTHNYC https://t.co/vi0Y0Mmp9H
— 管梓 Azusa Suga (f.k.a. 夏bot) (@chelseaguitar) August 1, 2019
こういう話だったんですけど、この方がおっしゃっている「プレイスホルダー」は歌詞の中での無駄で冗長な部分を指すみたいです。
わたしは「プレイスホルダー」に他の言葉に代替できるという要素があることを重視するので、この方の言い方とは違うみたい。
歌詞にははっきり「ここがプレイスホルダーだよ!」って主張している部分がある場合があって、それは業界でなんらかの名前で呼ばれているんだと思うんですけど、知らなくて調べられませんでした。
スピッツ『不死身のビーナス』の「ネズミの街」という歌詞が、ライブではそれぞれのライブ会場の街やハコを指す、みたいなやつ。
ぜったい名前があると思うんだけど調べられなかった……知ってる人いたら教えてください〜〜!
それでは、ンバヂ『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』でした🐲