人生で初めて白い日傘を買いました。
いままで持ってたやつなぜか黒とか青?とかよくわかんない色のやつだったくせに、ずっと白い日傘に憧れがあったんです。
理由、この曲のせいです。
My Little Lover『日傘~japanese beauty~』歌詞
日傘
日傘ってめちゃ“防具”って感じがするんですよね。
心に痛手を負っているときだと、防具が特に役に立ちます。
太陽が空で 全てを照らすから
失った 恋さえも 陽の光 浴びてしまうの
あたしに日傘は 似合わないけれども
心にさす 白い傘で あたしは守った
この曲では「日傘」「太陽」「鍵」といったキーワードが歌詞に出てきます。
そして、それぞれのキーワードが、主人公を取り巻く感情や状況と対応しています。
この曲はそういう対応がある歌詞です、というのを宣言するのが冒頭の2連です。
この曲は2001年のリリースです。この手の込んだ照応関係、20年前の曲って感じしますね!
無邪気に笑った 街の片隅から
やがて明日に息がつまった
主人公はさっきから日傘で「守った」と言っていて、主人公は「街」に対しても疎外感があるように見えます。
「街」が無邪気に笑っているのと対照的に、主人公は「息が詰まった」と歌います。
あなたとあたしの 心の片隅に
落ちていた 物語の
プロローグのドア 開けてく鍵
それを捕って
続いて出てくるのは「鍵」。
鍵は閉ざされた扉を開くために必要なアイテムのはず。
ところが、わたしの解釈では主人公はその鍵を手にすることができません。
主人公のいま、自分の身を守るための「日傘」を手放せないからです。
一度にふたつのものは持てないんだよな。
夏の陽が何故か センチにさせるのは
強すぎる その光り 心だけ 取り残すから
もうすぐに海は 夕なぎになるから
大切な ささやきでも 聞こえてくるでしょう
1年で最も日差しの強い季節の、1年で最も日差しの強い時間。
それをこんなふうにさらっと歌う曲わたしあんまり思い浮かびません。
夏の日差しを歌う曲なら日差しの中に飛び込んでいく曲のほうが思い浮かぶし、夏の音のことを描写するなら蝉時雨とか波音とかばかりが想起されます。
この曲の静けさ、夏っていうよりもétéって感じするんですよね(雰囲気の話です)。
美しさ求め 生きてゆくことから
シンプルな想いに 気がつく
あなたの心 繋がる鍵
それを捕って
2番に入って、歌詞はもう一度「鍵」について触れます。
「気がつく」って描写があって、1番の時点よりも「鍵」に近づいたみたい。
この曲では、曲が進むにつれて歌詞の描写に変化があります。
それは「鍵」への接近もそうだし、ほかの観点でもわかります。
たとえば時間。
1番では「もうすぐに」「夕なぎ」という描写から、つまり時間はまだ夕方ではないことがわかっていました。
2番ではこうです。
夕暮れの空と この街は痛みで
壊れたり 裏切ったり 悲しみも とめどないけど
時間は少し流れて、「夕暮れの空」(つまり夕方)になっています。
曲の中で、時間はゆっくりとだけ進みます。
この曲、このあとに半音上昇の転調があります。ここで曲のシーンは不可逆に変わります。
あなたがやって来て あたしを抱きしめる
持っていた 白い傘が 手から離れたら
陽の光が翳るのと同時に、いままでずっと不在だった「あなた」がやってきます。
そして曲の間ずっと持っていた「白い傘」=「日傘」が、手から離れます。
これは「鍵」を手にするチャンスを得るのと同義です。
愛しさも 勇気さえも 込み上げて泣いた 抱いた
こういう描写で曲は終わります。
「鍵」のことに明示的に触れることはありませんでしたが、たぶん「プロローグのドア」を開けることはできたのだと思います。
そのドアを開くことは、傘を閉じることと同義であり、「プロローグ」だと思っていたものはエピローグでやっと辿り着くわけですが。
My Little Lover『日傘~japanese beauty~』でした。
あとこの曲歌詞の蓮の書き方が独特で、1番では分けて書いてあったAメロとBメロが、2番ではまとめて1つの連になっていたります。
そうなるとどういう効果があるんだろう……って思っていたんですけど、描写の内容を連ごとにまとめるとこういうふうになるんですよね。
サビの部分で折り返して、シンメトリーになっているのです。
なんで?わかんないけどすごい!!