5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

虹のコンキスタドール『サマーエンドシンフォニー』 - 夏の一晩は秋の縮図

きょうは虹のコンキスタドール『サマーエンドシンフォニー』の歌詞についての話をします!

この曲がこのグループにとってどういう意味を持つ曲なのか知りたい人はインタビューとかを当たってみてください!

虹のコンキスタドールって毎年夏をテーマにした曲を出しているし、夏がとっても似合う感じ。

一方でこの曲はタイトルにもあるように夏の終わりを描いています。

虹コンがいちばん得意としている夏、それが終わった先はどんな風に描かれているんでしょうか。

虹のコンキスタドール『サマーエンドシンフォニー』歌詞

夏の一晩は秋の縮図

歌詞の始まりはこういう感じ。

天気予報もあいまいで ずっと終わらない季節みたい
まだ会えないんだねアンドロメダ

「あいまい」「ずっと終わらない季節みたい」「まだ会えない」と含みのあるフレーズだらけで曲は始まります。

ここに出てくる「アンドロメダ」は秋の星座。

次の季節は見えそうで見えない、ということです。

夜の途中で落っこって 抜け出せないタイムトラベラー
どうやったっていつもふりだし
結局は夏のせいなのです

「結局は夏のせいなのです」というフレーズ、前に考えた虹のコンキスタドール『in (door) the Summer』にもよく似たのが出てきます。

hacosato.hatenablog.com

『in (door) the Summer』だとこういう感じ。

My Dream in(door) the Summer
君のせいで夏が 好きになりそうさ
もうずっとアツいままでいい!

こちらはアツくなってしまう口実を夏に求めているような歌詞です。

一方で『サマーエンドシンフォニー』の「結局は夏のせいなのです」だと、季節のあわいを飛び越えられないいら立ちのようなものも感じます。

全体的に、主人公の気持ちはすっきりとしていません。

いまが夏なら夏一色で楽しめるのに、いまは秋も混ざり合っている季節の境界で、気持ちも一色では塗りきれません。

続きの部分で重要なのは「黄昏のサンセット」の部分。

走る車 開けた窓に blowing blowing wind
きのうより ほんのすこし 冷たく頬なでて消えてった
⻩昏のサンセット girls don’t cry 待って

夏の終わり、たとえば8月31日だったとして、舞台はだいたい18:00ごろだとわかります。

eco.mtk.nao.ac.jp

国立天文台のサイトからその時間の空を見てみます。こうです。

8/31 18:00の空

東の空(画像の左端)の地平線付近に「アンドロメダ」の文字が見え始めていることがわかります。

地平線のあたりは街明かりがあるのでこれだと観測は難しいです。

さっき主人公はアンドロメダについて「まだ会えない」って歌っていました。

この歌詞に描かれている空模様は、実際の空とリンクしている考えてよさそうです。

このあと曲はサビを迎えますが、いったんそこは飛ばして2番のBメロを見てみます。

1番に比べて曲が進んでいるのがわかるからです。

午前2時に 通り過ぎる guiding guiding light
ゆっくりとノックしてる 次の季節がほら見えてきた
もうすぐにサンライズ the last time きっと

午前2時! あれから8時間ほど経過しました。

そのときの空の様子も見てみます。こちらです。

9/1 02:00の空

アンドロメダは画像中央上部のほぼ天頂、つまり空のど真ん中にいます。まぎれもなく秋の空です。

中学のときに習うやつだと思うんですけど、深夜になればなるほど先の季節の空を先取りして観察することができます。

たとえば11/30の20:00の空はこういう感じ。太陽系の恒星の位置はぜんぜん違うけど、アンドロメダの位置は9/1の2:00ほとんど変わりません。

11/30 20:00の空

つまり夏の終わりに午前2時まで夜更かしすることは、秋の空を見ることといっしょなのです。

そしてわたしはここでもちろん、天体の話だけをしているのではありません。

夏という季節の終わりに立ち、割り切れない気持ちのままで夜更かしをしている主人公は、実は秋の空と同じ景色のもとに立っているのです。

夏の一晩は秋の縮図。

季節の変わり目にいたはずの主人公の照らす空は、もうずっと先の季節を映しているのです。

さっき飛ばしたサビの部分を引用します。

さよならしなくちゃワンダーランド
最後の花火でグッドバイ
はしゃぎすぎた二人の
永遠みたいな一瞬の世界線
きらめいた淡い記憶を
この場所に置いていくから
いつかの約束はまたね

こういう星の配置の下で、主人公は夏というワンダーランドにさよならをする決意が固まるんだと思います。

夏は暑ければ暑いだけいいみたいなところあって、ルールが単純でわかりやすいけど、これからはそんな簡単なルールだけに頼っていけるわけではないでしょう。

「最後の花火でグッドバイ」というフレーズはサビで3度も繰り返されます。

そして曲の最後。

花火がいま打ち上がった
サマーエンドシンフォニー

サビで何度も繰り返された「最後の花火」が、しっかり登場して曲が終わります。

花火が打ち上がれば夏の終わりです。

それはワンダーランドの終わりでもあるし、熱狂的な日々の終わりでもあります。

だけど「真っ白な朝」は始まります。

主人公の新しい朝にいいことがいっぱいあるように祈っています。


虹のコンキスタドール『サマーエンドシンフォニー』でした。