5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

バレンタイン曲歌詞のチョコレート手作り論争

もうだいぶ過ぎちゃったけど、先月バレンタインがありました💝

そんなバレンタインソングについて、こんなツイートを見かけました。

そうだっけ……?

というわけできょうはそれを調べてました!

先取りして結論を書いておきます。

結論:まあ珍しい、です!

調べて数える!

まずは手持ちの歌詞のデータの中から、

  • 歌詞に「バレンタイン」または「valentine」を含む
  • リリース年がわかる

ものを抽出します。182曲ありました。

その中から、チョコレートを買ったり作ったりする曲があるかを見てみます。

歌詞を見て、「レシピ」とか「テンパリング」とか入っていたら作ってるな?とかって感じでゆるく判断しています。

作ったか、買ったか、それ以外かで数えると下記のようになりました。

種別 曲数
作った 31
買った 7
チョコなし・不明 144
総計 182

買ったチョコは作ったチョコの23%しかありませんでした!

少ない! けど「かなり珍しい」ってほどでもなかったです!!(歯切れ悪い結論)

元ツイートに対して言いたかったことは言い尽くしちゃったんですが、せっかくなのでもう少し掘り下げてみます。

年別に分布を見てみるとこういう感じです。

まずはグラフ全体の高さ、つまりバレンタイン曲全体の数に注目します。

バレンタイン曲のチョコレート曲数

2018年がバレンタイン曲流行ってた時期なのか!?

って誤解されそうなのですが、実際にはわたしの手持ちのリスト自体の偏りがあるため、百万曲あたりの構成比率で出し直してみると、こういう感じ。

バレンタイン曲のチョコレート割合

バレンタイン曲の割合としては80年代にピークがあるように出ていますが、80年代の曲はそれほどサンプルサイズが大きくないのであまり信用できないかもしれないです。

2000年以降でいうと2013年に曲数のピークがあるようでした。

また、コロナ禍に入った2020年以降、バレンタイン曲の曲数が割と落ち着き傾向かもしれないです。

(てか全体に180曲とかしかないと統計的にろくにものを言えない)。

この中で、『チョコレイト・ディスコ』は2007年の曲です。

グラフを見た感じ、『チョコレイト・ディスコ』の前にも後にも「買った」を示す黄色の曲があるため、その点でも特に珍しい立ち位置にはなってなさそう。

次にバレンタイン曲の中で、歌詞の主人公の性別を分類してみます。

これは歌詞の口調とかでふわっと判定しています。「僕は」って言ってたら男性、「大好きなの」って言ってたら女性、というように役割語基準で見ています。

クロス集計するとこういう感じ。

チョコ種別 不明 総計
作った 10 19 2 31
買った 1 4 2 7
チョコなし・不明 42 64 38 144
総計 53 87 42 182

男性主人公の曲だと作る:買うの割合が10:1、女性主人公の曲だと作る:買うの割合が19:4です。

どういうことかっていうと、男性主人公の曲の方が女性主人公の曲よりもずっとチョコの作る率高いということです。

男は手作りチョコに夢を見過ぎなのでは???

この件については以上です。

リリース年別でも見てみます。

バレンタイン曲の主人公性別

ちゃんと曲数が揃ってきた2000年代以降でいうと、2022年の男性比率の高さが目立ちます。

もともとバレンタイン曲って女性主人公の歌詞が多くなりがちでしたが、最近はそうでもないってことなのかも!と思いました。

調べて読み込む!

おもしろい曲をいくつか見てみます!

いしだあゆみ『バレンタイン・デー』(1977年、女性主人公、チョコなし・不明)

バレンタインの話はタイトルにも出てくるものの、チョコレートの話は出てこず、当然作ったか買ったかみたいな話もありません。

そもそもバレンタイン曲でもチョコレート出てこない曲は結構あり、それをどう手配したのか言及しない曲が実は大半でした。

可愛い娘から 贈り物もない 淋しい男なら 私の所へ どうぞ遊びにおいで 今夜だけ抱いてあげるわ

この歌詞、オタクに優しいギャルみたいだな……。

次の曲。

(公式の音源ないです)

西脇唯『最後のバレンタイン』(1995年、女性主人公、買った)

やさしげな2月の 街並みがさざめく 小さめの箱を買う そっと二粒 ビターチョコレート

今回の対象の中では買ったチョコレートが初めて出てくる曲です。

ただこの曲、恋愛が冷めていくところを描いた曲なんですよね。

最後の最後の最後のバレンタイン あなたの気持ちは彼女へ急いでる

心は冷めているから手作りじゃなくて出来合い、みたいな含みがあるのかな…? 90年代の雰囲気知らん!

次の曲。

ライムライト『LOVE ME DO WOP』(2007年、男性主人公、作った)

男性主人公の曲に多い、女子からの手作りチョコレートに夢みるタイプの曲です。

望むところよ 忘れちゃ困るゾ
あの子の心はオレの事想い
悪戦苦闘しながら
チョコに集めるよ
仕上げはハート型
流し込むのさ

この曲の面白いところは、ホワイトデーのお返しまでが視界に入っているところ。

3.14を前にして
「予算的にどんくらいに?」

お返しは手作りじゃなくて買ってくるみたいですね〜🎁

虹のコンキスタドール『本命ショコラティエ』(2019年、女性主人公、作った)

バレンタインの前日は
命懸けの自分とのファイト
レベル高杉 レシピには
恋叶える 本命ショコラティエ

バレンタイン曲って「わたし」と「あなた」の恋愛関係を描く曲が大半だと思うんですが、この曲ではその恋愛関係の中で自分自身と向き合っています。

女性アイドルのバレンタイン曲だと、作って→あげて→結ばれたい!に終始する曲が多くてそれはそれで好きなんですけど、新しい切り口を探る萌芽があるのもとても好き🌱

浦島坂田船『SWEET TASTE PRESENT』(2021年、男性主人公、買った)

甘い so tenderness 愛 for you
届いてよピンキーなハッピネス

この曲、バレンタインだけど男性主人公があげる側に立っていて、それが結構珍しい感じです。

Candy, Lolly, Cookie, Sweetie, Honey, Juicy
君はどんなのが似合うかな

って書いてあるので男性主人公曲の中では唯一の買ってる判定したんですが、実際にはどっちとも言えるところあるよな……。


ということで、バレンタイン曲のチョコレート手作り論争についてでした!

バレンタインというイベント自体の性質によるものだと思うんですが、バレンタイン曲ってヘテロのラブソングが大半です。

しかもチョコレートあげるのは女性、受け取るのは男性、という構図の歌詞がほとんどという印象です(ぜんぶ印象)

別のかたちの恋愛を描くならバレンタインにこだわる必要がないし、その上ここ数年のコロナ禍では手作りの食べ物のやりとりにためらいも出そう。

そういう意味ではこれからバレンタイン曲がすごく増えるということはなさそうだとわたしは思っています。

とはいえ。

2月14日はこれからも毎年やってくるし、せっかくならバレンタインをもっと新しい風に描く曲があってもいいですよね。

ここ数年の歌詞を見ていると、そういう芽が見えてきているように感じます。

これからも世の中にバレンタイン曲、楽しみにしています✨