5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

クマリデパート『幸せハッシン!フロムキッチン』 - 歌詞はキッチンからできるだけ遠くに行きたい

クマリデパートのこと去年ぐらいまでよく知らなかったんですけど、無銭の対バンで聴いたこの曲がよすぎて腰抜けになりました。なにこれ?

そして調べると平野レミさんが作詞をされているとのことで二重にびっくり。平野レミさん料理もトークもできて作詞の才能もあるの??

にんにく叩き潰す
トマトも握り潰せばいいの
おいしければ大丈夫
飲み込んだら同じ おいし

って感じでスタートするこの曲。

料理の手順をなぞった曲なのかな、そうだとすると絵描き歌みたいに最後には何かができあがるのかな?って歌詞を見ると思えてきます。

ところが、歌詞は料理の世界からどんどん外への広がっていきます。具体から抽象に、粒から宇宙へ行ける歌詞が最近はとても好きです。

そんな観点を抱えて、この曲がどういうふうに好きな曲なのか、そういう話を今日はしようと思います。

クマリデパート『幸せハッシン!フロムキッチン』歌詞

キッチンから世界へ

冒頭に引用した続きの部分の歌詞を見ていきます。

豆乳を投入しましょ
マヨネーズも マヨわず マヨわず
ダジャレも時には入れて
笑わなきゃ ダメよ

この時点でただのレシピではありません。すでにちゃんと歌詞としての萌芽があります。

どういうことかっていうと、具体的な食材があって、そのあとで教訓があるのです。しかも1連目の時点ですでに。

振り返ってみます。1連目はこうでした。

にんにく叩き潰す
トマトも握り潰せばいいの
おいしければ大丈夫
飲み込んだら同じ おいし

最初の2行でにんにくトマトを握りつぶし、そして続く2行でそれに対するレミからのコメント(飲み込んだら同じ)があります。

2連目をもう一度見ます。

豆乳を投入しましょ
マヨネーズも マヨわず マヨわず
ダジャレも時には入れて
笑わなきゃ ダメよ

最初の2行で豆乳とマヨネーズを迷わず投入し、続く2行でそれについてのレミからのコメント(笑わなきゃ ダメよ)が来ます。

こんなふうに、この曲は料理の曲だけど、歌詞の視野はキッチンの外を向いています。

この曲はとても明るい雰囲気の曲です。その明るさの源泉は、歌詞の視野が遠くにあって閉じこもった感じのない点に由来すると感じます。

その予感が、続くBメロでもさっそく裏打ちされます。

辛い時は 楽しいお料理を
いっぱい食べて 世界は平和

料理はどこまでいっても手元のことだけど、2行目では突然「世界は平和」の話?って一瞬思います。

だけどAメロの構成を見ていたら別にそれも違和感ないのです。

手元の話から敷衍して、遠くの話をする、これは歌詞の最初からずっとやってきたことなのでした。

サビです。

レッツ・クッキン!
毎日がハプニング
でもきっと大丈夫
キッチンから幸せを発信
あなたへと

「毎日がハプニング」ってところにレミの料理観を味わえます。

わたしはネットで話題になるときだけしかレミの料理を追っていないけれど、レミの料理にはハプニングを感じます。

それは多分、日常的な毎日がハプニングの連続であることとつながっているんだろうな、って思うのです。

一方で、

レッツ・クッキン!
みんなの笑顔が 調味料になるから
ちょっとくらい つまづいても
平気平気よ レシピ

この曲は何度も「大丈夫」「平気」って何度も歌います。

それは料理が毎日(のように)繰り返すものだということとパラレルなのだと思います。

この曲の中で、料理には二面性があります。

毎日違う料理に挑戦して毎日違うハプニングが起こるいつもと違う!の要素と、それでもその営みは毎日のようにだいたい同じ時間に繰り返されるといういつも通り!の要素です。

その、それぞれのいいところに着目して歌詞が描かれていて、レミの料理観の洞察の深さと、作詞のレシピの手際の良さを感じます。

あと好きなところDメロ?なんですけど聞いてもらっていいですか?

大好きなお友達や 家族と一緒に
ごはんを簡単に刺激的に
おいしく食べましょう

この曲調の変わるシーン。

3行分のテキストを文節に分けると、「一緒に」「ごはんを」「簡単に」「刺激的に」「おいしく」が全部「食べましょう」にかかっているんですよね〜!

「食べましょう」の様態を描くために5つも言葉が積まれています。これ結構多いよ?

食べ物つながりということで、係り受け解析器のCabochaに投げるとこうなります。わかる。

大好きなお友達や 家族と一緒にごはんを簡単に刺激的においしく食べましょう
    大好きな---D            
      お友達や-D            
          家族と-D          
            一緒に---------D
            ごはんを-------D
                簡単に-----D
                刺激的に---D
                  おいしく-D
                食べましょう

「食べましょう」にかかる部分がいっぱいあることがわかります。

どういうことかというと、食べることを表現するためにかなりたくさんの言葉数を使っているということです。

「食べましょう」にエネルギーを割く感じがこの歌詞にぴったり。

あとその次の部分。

レッツ・クッキン!
こんな毎日が ずっと続いてゆく
幸せの道具になるから
レミパンも買ってね

レミパンも買ってね」?? こんなにストレートな広告の曲ある???

PRのハッシュタグつけなよ!!(褒め言葉です)


以上、クマリデパート『幸せハッシン!フロムキッチン』でした〜!

武道館公演もよいステージになりますように🐻🏬

幸せハッシン!フロムキッチン

幸せハッシン!フロムキッチン

  • クマリデパート
  • J-Pop
  • ¥255

https://www.youtube.com/watch?v=AdVcYWadd_4