たむらぱん『ジェットコースター』のおはなし。
(公式で聴ける動画がこのSPOTの冒頭数秒しかない…かなしい……)
作詞は読書感想文だ
わたし、(一部の)よい歌詞はよい読書感想文と同じだと思ってます。
だっていろいろあるけど、読書感想文って結局はおおまかにフォーマット決まってるじゃないですか。
たとえばZ会の作文クラブにはこういうのが載っています。
場所 | 内容 |
---|---|
「はじめ」 | 最も印象に残った場面にしぼって、内容を簡潔(かんけつ)に書く。 |
「なか」 | なぜ・どのように印象に残ったのか。 「もし自分だったら~/実は自分も~」と自分に引きつけてくわしく書く。 |
「おわり」 | 本をとおして考えたことや学んだことを書く。 |
上記を表にまとめたものです。
そしてですよ。
似たようなことが、歌詞の世界でも言われています。
たとえば、作詞家のいしわたり淳治さんは印象的に展開する歌詞の特徴として、こんな風に紹介しています。
Bメロ→半径0m:内面の話
サビ→半径100m:自分から離れた世の中一般の話
実はこれって、さらにさっぱりさせることができて、作詞家のzoppさんはこう言っています*1。
サビ:物語の結論
ここで「結論」と呼ばれているのは物語の筋道から離れた「もっとも伝えたいこと」です。いしわたりさんの話に照らしていうと、半径の大きさがちがうということなのです。
作詞家の高橋久美子さんは「粒から宇宙へ」というキーワードでそれを紹介していました。
宇宙:それを一般化した、大きい世界のこと
zoppさんが言うことと、本質的にはおなじであるように思います。
でしかも、それ、読書感想文の書き方と同じような気がするでしょ??
世の中のたいていのみなさんは、読書感想文を書いたことがあると思います。
ということはだな。
世の中のたいていのみなさんは、ステキな作詞ができるということなのですよ!
あと、この話を考えててもいっこ気づいたことあるんですけど言ってもいいですか。
読書感想文の代わりに作詞しても、同じ教育的効果あることない??
教育関係者のみなさんの大活躍に期待しています〜✨
ジェットコースターは人生だ
というわけで歌詞のAメロの部分。
震えていた
不安を抱え込んで
乗り込んでいた
少しくじけていたんだ
これって、主人公がジェットコースターに乗り込むシーンなんですよね。
いしわたりさんでいうと半径0m、zoppさんでいうと物語の展開、高橋久美子さんでいうと「粒」の部分の話をしています。
そしてBメロ。
昨日何かあった人も
何もない
何もない
ここでは
なんのしがらみもなく
~日常忘れて弾ける~ がテーマのパーク
いしわたりさんでいうと半径5m、zoppさんでいうと物語の展開、高橋久美子さんでいうと、すこし「粒」が膨らんだ話をしています。
で、ここで曲調が変わるわけなんですよね。
サビはこういう歌詞になります。
ジェットコースターが走り出した
ほら君も明日からは昇り調子
下り坂は瞬く間に終わるから
世の中楽しんだもん勝ちじゃない
息弾ませ興奮で目キラキラ
明日の力に変わって…
笑っていたい
↑見てこれ! 半径100m! 粒から宇宙!!
* *
あのですね、わたし実はむかし、ソニーミュージックアカデミーで、作詞の講座を受けたことがあります。
自分が書いたやつを高橋久美子さんに見てもらったこともあるんですよヤバくないですか!
で、わたしは素人の犯しやすいミスをしてしまい、高橋先生からご指摘受けたことがあるんですよね。
わたしが書いたサビ、この歌詞でいうとまさにこの部分でした。
ジェットコースターが走り出した
ほら君も明日からは昇り調子
下り坂は瞬く間に終わるから
これ、サビになってるのに、前半はまだジェットコースターの話をしたままなんですよね。
サビになったから、粒から宇宙になった〜と思ったら粒のままやないかーい!!ってなってるんです。
この歌詞のいいところは、そのあとにあるんですよね。
世の中楽しんだもん勝ちじゃない
息弾ませ興奮で目キラキラ
明日の力に変わって…
笑っていたい
サビ2周目で突然出てくる「世の中」!!
この部分で「粒」は晴れて「宇宙」に広がるわけ!
だれもが自分にとっての「ジェットコースター」ってなんだろう?って考えちゃうわけ!
この変化を、メロディの変化とずらしてお届けしてくれるところが、この歌詞のとっても好きなところなのですよ。
花火の音が、光から遅れて届くみたいなやつ!
というわけで、たむらぱん『ジェットコースター』でした。
たむらぱんの曲も歌詞も、わたしはほんとうに大好き。
いままでにはこの2曲の歌詞のことを考えたことがありました。
hacosato.hatenablog.com hacosato.hatenablog.com
もっとたくさんやりたい。