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5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

たむらぱん『ココ』

歌詞を読む

5W1Hをぜんぶ埋める謎
こんにちは!
今回はたむらぱん『ココ』を取り上げます。いえーい! たむらぱん『ちゃりんこ』以来です。大好きなんですが、あんまり取り上げられなくてごめんなさい…。
さて、今回の『ココ』は

そう帰る場所なんてもうどこでも良かったの
大切にしたいものはココロが今分かってる
大丈夫 世界は繋がる様に動いてるんだ
もう一回もう一回 ちゃんと笑って会える様に

なんて感じのサビがキャッチーです。
でもなんだか煙に巻かれたような気持ちです。場所のことが、よく分からないのです。
タイトルから察するに、重要な場所は『ココ』であるはず。なのに歌詞には「帰る場所なんてもうどこでも良かった」なんて書いてあるのです。どこでもいいのかよ! なんなの! どこなのよ!
というわけで、今日はカンタンに煙に巻かれちゃった私が、どうやって謎から脱出したのか、というお話です。
ココ(初回限定盤(CD2枚組))
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND152512/index.html
構成はこちら→イントロ-A-A-サビ-A-サビ-中トロ-サビ-アウトロ

5W1Hを埋めにいく。

さて、私はこの曲を聴き、歌詞に目を通し、メモを取って、こう思いました。
この曲、5W1Hがぜんぶ分かんない…。
5W1HっていうのはWho(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ)How(どのように)の頭文字。ニュースの記事を書くときにおける慣行です。ここまで、出典はWikipedia
まず、この歌詞が編まれている場所がどこなのかが、よく分かりません。場所がヒントになるような個所を探してみると、

そう帰る場所なんてもうどこでも良かったの

なんて歌詞が出てきて、はぐらかされる気持ちでいっぱいです。投げ出さないでよ! 曲のタイトルが『ココ』なんだから、ここがどんな場所なのか、もっとヒントになるべき場所があってもいいじゃん! なのにありません。
もっと難しいのは時間です。いまがいつなのか、この歌詞から判断するのは困難です。

だけど生きることはできる
ひとりの夜 戦ってるんだよ

「ひとりの夜」という部分があります。いまは夜のまっただ中でしょうか?

そう帰る場所なんてもうどこでも良かったの
さよなら太陽 いざなう様に夜が昇ってく

いや、「夜が昇ってく」だから、これから夜になるところでしょうか?
なんだか夜の近辺のような感じがしますが、これから夜になるのと、夜のただ中にいるのとでは響いてくる意味がけっこう違ってきます。これから夜になるのならますます暗くなる一方ですが、夜のただ中にいるのならこれから明るくなっていくしかないんだから。その違いは大きいはず。なのに、分かりません。
こうやって一度“分からない病”を発症したらなかなか完治しなくなりがちです。主人公はだれなの? なぜなの? 何なの? いっこも分かんないよ!!
…と、思っていたのです。最初は。
私の疑問がほどけるきっかけになったのは、最初にも引用したサビの部分でした。

そう帰る場所なんてもうどこでも良かったの
大切にしたいものはココロが今分かってる
大丈夫 世界は繋がる様に動いてるんだ
もう一回もう一回 ちゃんと笑って会える様に

この1行め「帰る場所」っていうのは、帰るあて先のことです。ゴールのことです。スタート地点のことではありません。この歌詞は、帰る先のことは大事じゃないよ、と言っていることになります。
なら、大事なのは何でしょうか。ゴールでないなら、スタートでしょ? この部分の歌詞は、スタート地点を大事にしようね、って言っていることになりそうです。そしてスタート地点ならどこだか、私たちは知っています。スタート地点は『ココ』です。この部分の歌詞は、やっぱりちゃんと、場所について語っていたことになります。
ところでこの歌詞、短いイントロ、中トロ、アウトロを除くと、全部で6連あります。そしてその全部が、5W1Hにちょうどひとつずつ対応しています。マジかよ! って思うじゃん? マジだから!(断章取義だけど!)

いつだってココが全てなんだ
雨だって綺麗に降ってるし
風の様に 踊れるから

1連を引用しました。1行めには「いつだってココが全てなんだ」と、タイトルでもある『ココ』が大事なんだ!っていう決意表明があり、2行めと3行めはその理由が綴られています。タイトルの理由。つまりこの連は、Why(なぜ)に答える連です。

だってちゃんと楽しい
リズムだって意外に持ってるし
誰かの 耳にしては
笑いながら 育んで来た

2連の前半を引用しました。「今だって」から始まる2連めは、5W1Hで言うならWhen(いつ) に答えています。簡単に言うとこうなりますね。
「いつやるの?今でしょ!щ(゚д゚щ)」
…。
さて、この連には他に「リズム」「声」という言葉も出てきます。どちらも時間という概念と強い関係のある言葉なので、Whenとの相性もいいような感じ。よし次の連いってみよう!

いつだってココが全てなんだ
誰だってきっと寂しい

サビはさっきやったので飛ばして、今度は2番のAメロです。この連には「誰だって」っていう部分があります。ということは、この連はWho(誰が)に答える連です。この連には後半に、「ひとりの夜」っていうシーンも出てきます。ひとりかどうかもWhoとは強い関係のある言葉のはず。やっぱりこの連は全体にWhoのことを語っているみたい。

もう必死になりたくない
いい加減になれるなら本当に最高
でもココロは真面目になってく

今度は2番のサビです。この連は明らかにHow(どのように)の連です。どんな風に?という疑問に対して、必死じゃないように、いい加減に、っていう風に答える連に見えますよね。この連にはさらに後半「上手く行く様」「ちゃんと笑って会える様」と、様態を示す言葉がさらに続きます。

そう帰る場所なんてもうどこでも良かったの
さよなら太陽 いざなう様に夜が昇ってく
大丈夫 世界は繋がる様に動いてるんだ
もう一回もう一回 ちゃんと笑って会える様に

そうすると、最後のサビはWhat(何を)に答える連だということになります。この連は1番のサビと似ていますが、2行めの「さよなら太陽 いざなう様に夜が昇ってく」だけは初出です。ということは、この部分がWhatの本質なのでしょう。つまり「太陽」と「夜」がWhatの問いに答える、ということになりそう。
こうして曲がりなりにも、6つの連が5W1Hとひとつひとつ符合したのでした。すごくないですか?

ラブソングをラブソングにしない。

さて、5W1Hは埋まってみたものの、主人公がどんな境遇にいるのか、ここまでだけだとまだよく分かりません。
で、いろいろと考えたのですが、私、この曲はラブソングだと思ったのです。ぱっと見は恋愛要素ないけど。分かってるけど、それでも、です。
主人公は失恋しました。そして、そんな自分と向き合って、いま、この歌詞を紡いでいます。

いつだってココが全てなんだ

「ココ」というのは、いま主人公が立っている場所です。どこか別の場所ではなくて「ココ」を中心として選ぶのは、現状の自分をきちんと見つめることです。Mr.Children『かぞえうた』と同じように、主人公はあるがままの自分を見つめることから、始めようとしています。

今だってちゃんと楽しい

時間についても、空間と同じことがいえます。別にこの歌詞を、過去のエピソードから始めたってよかったのです。でも主人公はそうしません。「今」と「ココ」のことだけから、愚直にスタートしようとしています。それは、失恋した自分を認めることです。後悔とか怨嗟とかではなくて、ひとりである自分を認めることです。

そう帰る場所なんてもうどこでも良かったの

主人公にとっては、ひとりになることは「帰る」ことです。主人公はきっと、別れ方についていろいろと考えることがあったのでしょう。でもその思いは吹っ切れました。別れ方は、歌詞の中の言葉でいうと「帰る場所」です。そんなのは「もうどこでも良かった」と言い切れるぐらいにまで、主人公の気持ちは整理されました。
もともとひとりで生まれてきたし、きっと最後はひとりで死んでしまうことを、主人公はそれとなく意識しています。だれかと一緒にいい時間を過ごせたら最高です。でも、うまくいかなくたって何かもが終わってしまうわけではありません。

誰だってきっと寂しい
だけど生きることはできる
ひとりの夜 戦ってるんだよ

だから「ひとりの夜」でも戦う気になれます。この期に及んで、主人公の気持ちは前のパートナーなんかにはもうほとんど向いていません。戦う相手は自分自身です。

もう必死になりたくない

「もう必死になりたくない」という言明は、きっと恋愛に対して、なのでしょう。いままでは恋愛に必死になりすぎていたんだっていう主人公の気づきがここから見え隠れします。

そう帰る場所なんてもうどこでも良かったの
さよなら太陽 いざなう様に夜が昇ってく

ついに最後のサビです。太陽はきっと、別れてしまったパートナーであり、恋をしている自分です。そして「夜」はきっと、ひとりでいること、です。
今までは太陽に未練があったけれど「さよなら」と言えるようになった主人公がここにはいます。恋をしている自分に未練があったけれど、いまはとりあえず、恋に恋することからは距離を置けるようになったんですね。

もう一回もう一回 ちゃんと笑って会える様に

何度も繰り返し吹き込まれるこのフレーズ。ちゃんと笑って会える、その相手は誰なのでしょうか。
白馬の王子さま?
違うと思います。きっと、恋をしている自分、なのだと私は思いました。新しい恋をするなら、今の恋と上手に別れること。主人公はいま、それを心に吹き込んでいるところなのでしょう。



というわけで、たむらぱん『ココ』でした。
私は今まで、数々のラブソングをただのヘテロセクシュアルな恋愛じゃない感じに読んできました。mihimaru GT『幸せになろう』とか、aiko『ずっと』とか、スキマスイッチ『奏』みたいに。
こういう歌詞を、こういう風に読むたび、私は心に誓っていたことがありました。
いつか必ず、ラブソングじゃなさそうに見える歌詞をラブソングとして読んでやるからな、と。
その思いが、やっとここに結実しました。『ココ』はラブソングっぽくなくないかもしんないけど、ギリいいよね! さらに言うとこの読みもラブソングっぽくないトコあるけど、ギリいいよね!!
ところで2番のサビのあとって、なんて言ってるんですかね…? miwa『カラフル』が聴き取れないのは知恵袋とかで盛り上がってるのに『ココ』の話はネットでは盛り上がってないようです…。こ、これが、格差社会か…!(違)
ココ

ココ

次回予告:次回はClaris『コネクト』を読めたら読んでみようと思います。まどマギ見てないけどな!!

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