5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)に行ってきました! 『おれ、ねこ』の歌詞の話する!

yokohama.art.museum

こないだ横浜美術館佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)に行ってきました!!

きょうそこで出会った松本素生(GOING UNDER GROUND)『おれ、ねこ』の話をします!

公式の動画も音源もないかもしれないから、見たり聞いたりしたい人は適宜いい感じに探してください!

www.nhk.jp

早起きして放送を見るのがいちばんよさげ。

松本素生(GOING UNDER GROUND)『おれ、ねこ』の歌詞

「歌のテンプレート」

展覧会での解説を引用します。

展覧会での「おれ、ねこ」の解説。信じられないほど写真が下手。

2011年に始まった「Eテレ0655」(NHK)の人気コーナー。「おれ、ねこ」で始まる曲の歌詞一節一節にあわせて、猫の飼い主が写真を十数枚撮影し、NHKにWeb投稿します。その写真を歌に合わせてはめ込めば、たちまちオリジナルの「おれ、ねこ」が出来上がります

音楽は松本さんがすでにレコーディングしたものをそのまま使い、それに映像を変えていけば毎回異なる「おれ、ねこ」が放送される仕組みになっています。『おれ、ねこ』はその楽曲名でもあり、プロジェクト名でもあるということです。

これは東京藝塾大学の「歌のテンプレート」という課題から生まれたものだそうです。

わたしはこの「歌のテンプレート」、むかしからかなり好きです。

hacosato.hatenablog.com

とてもわかりやすい例はンバヂ『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』です。

好きな惣菜発表ドラゴンが 好きな惣菜を発表します
からあげ ハンバーグ とんかつ 肉を甘辛く炒めたやつ
正式名称がわからない惣菜も 好き 好き 大好き

ンバヂ『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』歌詞

こういう歌詞の曲に対して、「好きな〇〇を発表します」と替え歌して、さらに続きの箇条書きを自由に埋めることで、オリジナルの曲が簡単にできます。

ンバヂ『好きな惣菜発表ドラゴン feat.重音テト』は狭い意味での「歌のテンプレート」です。

『おれ、ねこ』の場合、曲は固定になっていて、映像が都度変わることによって総合的な体験が毎回変わっていきます。

こちらは広い意味での「歌のテンプレート」と整理できるかもしれません。

この曲のほかと違うところは、歌詞の各行が代名詞から始まっているところ。

おれ、ねこ
おれ、ねこ
ここ、おれのうち
ここ、おれのうち

曲の中で「おれ、ねこ」と歌われるとき、猫の顔が映像に映ります。

「ここ、おれのうち」と歌われるとき、主人公の家が映像に映ります。

歌詞の中の言葉は映像を指し示すようになっていて、その示す通りにわたしたちが映像に注目したとき、やっと歌詞の体験は充足されます。

それっていままでの似た替え歌とはやっぱりちょっと異なる、新しいことだと思います。

「はみがきじょうずかな」とは何が違うのか

『はみがきじょうずかな』という名曲があります。

はみがきじょうずかな
  
クチュクチュ シュワシュワ
クチュクチュクチュクチュシュワシュワ
クチュクチュ はみがき
シュワシュワ はみがき

こういう歌詞の楽曲に合わせて、市井の子どもたちが歯を磨いたり磨かれたりする、という楽曲でありコーナーです。

「おれ、ねこ」と「はみがきじょうずかな」は、同じ音楽に合わせて毎回視聴者からの異なる映像が組み合わさる、という点でよく似ています。

だけど、歌詞がもたらす体験は異なるように思います。

「おれ、ねこ」は歌詞の中の代名詞が、映像なしでは充足しないようにできています。

「はみがきじょうずかな」は歌詞だけでも自立します。

そこが、この2曲の大きな違いです。

歌詞の外の世界があって初めて歌詞が満たされる、そんな歌詞は他にありましたっけ?

考えてみたら、ありました!

「君」に似ている

思ったんですけど、これってアイドルソングが「君」っていうときと似てませんか?

嵐『MONSTER』では、「君を誘う」って歌詞のところで大野くんがこっちに指を差します。しかも目が合う。

「君」っていうのは画面越しのわたしたちのことじゃん!

嵐『MONSTER』歌詞

あといま公式の動画はないみたいだけど、AKB48『会いたかった』では、

会いたかった 会いたかった
会いたかった Yes!
君に…

「君に」のところでファンに向かって指差しする振り付けになっていると思います。

これも「君」という歌詞が、映像によってこっちのほうまでやってくる、という構造になっています。

AKB48『会いたかった』

歌詞の中での代名詞が歌詞の外側によって充足する、という仕掛けは、こんな風にアイドルソングではよく見られるものであるように思います。

どちらも2011年の直前のものを選んでみましたが、もっと古いものもいっぱいありそう。

だけど『おれ、ねこ』の場合は歌詞の中での代名詞が映像によって初めて成立する、それ自体が曲の根幹で、おもしろさにつながっています。

その点でやっぱりめずらしくておもしろい取り組みなんだなと気づきました。


松本素生(GOING UNDER GROUND)『おれ、ねこ』でした。

GOING UNDER GROUNDはふつうに好きで、偶然かもしれないけどわたしが生で見た最初のすきなアーティストなんだよね〜。

こんなとこで見かけるとは思わなかったです。

あと替え歌はほんとに好きなの!

hacosato.hatenablog.com

似た話は2016年からしてた、テンプレート古参のつもりだったけど『おれ、ねこ』のほうがなお古くて悔しいです。

これからも古参になれるようにいろんなこと書いておくようにするぞ!

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佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)の会期は2025年11月3日まで! 行こう!