こんばんは。遅刻した〜!
LiSA『明け星』の話をしにきました。
「明け星」って何?
まずこの曲のことを考えるのに当たって、いきなり気になることがあります。
「明け星」って何?
調べてみましたが「明け星」は辞書には載っていませんでした……。
しかし、インターネットで調べてみると、辞書編纂者の飯間浩明さんは、紅白歌合戦を見つつこのようにツイートされていました。
冒頭のトークもそこそこにLiSA「明け星」。この「明け星」は大きな国語辞典にもない語で、この作品での造語かと思われます。東の地平空高く輝く「明けの明星」(金星)ということでしょうか。古代に同じ意味で「あかほし(明星)」ということばもありました。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) December 31, 2021
このことから「明け星」は金星ということで間違いないようです!
(ここまでトレンドブログしぐさ)
さて。
J-POPの歌詞には星がとても多く出てくるので、天体のお勉強もしたいところ🌙
↓このページを見ながら概要を確認しましょう。
というわけなんですが、注目なのは観測できる時間帯と方角です。
ということで改めてまとめると、明けの明星としての金星は、
- 明け方に
- 東の空に
見えるのです。
でも明け方、東の空に見えるものといったらもっと有名なものがあります。
太陽です。
考えてみたら金星は地球よりも内側、太陽の近くを巡っているので当たり前なんですが、そうとしてもこれは象徴的です。
夜明けは、明けの明星の方角から明るくなるからです。
わたしは明けの明星見たことあるんですが、そのときってたしか、最初からこの時間この方角で輝くことをわかって東の空を見ていたのです……。
でも、もしそれを知らなくて、よすがのない夜を過ごしていたとしたらどうでしょうか。
東の空に輝く明けの明星が、たいそう心強いだろうなと思うんですよね。
っていうのを踏まえて
っていうのを踏まえて聴くと、Aメロはまさに不安な夜から始まる描写に見えます。
太陽を朱く閉じ込めて
車輪(くるま)は何処へ進む
混沌の吹き荒れる夜に
僕らの声が響いた
太陽は閉じ込められ、夜には混沌が吹き荒れています。
続くBメロを引用します。
願いのあかりを灯して
心は夢を脱ぎ捨てて
白い道を行く
Bメロには「白」という色が出ています。Aメロの「朱」の禍々しさと対比されている感じ。
五行思想との対比があるかもしれないと思い、調べてみましたがわかりませんでした!*1
五行思想はともかく、朱色と白色の対比があるのは明らかで、Bメロではシーンの転換を感じます。
歌われている内容としても、引きの描写から始まったAメロに対して、Bメロでは内面的で抽象的な歌詞になっています。
「白い道を行く」と書いてあるとき、道が実際に白くて、それに沿って足を運んでいるとは限らないと思います。
「混沌の吹き荒れる夜」に背を向けて、明るい希望を目指していく、ぐらいのイメージがここではしっくりきます。
さてサビ。
内面の描写から離れて目に見える世界に戻ってきたとき、この「混沌の吹き荒れる夜」に見える具体的な希望の描写がひとつ登場します。
昏い空には明け星が未来を
どうしても指して動かないから
それが「明け星」です。
先ほども触れた通り、夜の終わりのタイミングで、夜が終わる方法から金星は昇ります。希望を託すのにぴったりの存在です。
さらに、サビの2回し目では、その明るさがもう1段階上がります。それは、夜明けが段階的で不可逆であるのと呼応しているように感じます。
迷っても嘆いても生命(いのち)は
明るい方へ手を伸ばすから
光を祈り空高く、歌声
せめて君に届くように
サビの1周目では、「明け星」の輝きを示すために使われていたのは「昏い」空との対比でした。
ところが2周目では、「明るい」という言葉が直接明るさを示します。
こういう描写に、揺るがない希望が感じられるんですよね……。
さらによく見るとこの「明け星」は、明るくて、高くて、そして歌声とともに描かれます。
善悪の描写のいい側の方 全部載せじゃん!ってなりました。
そして、少し観点が変わるんですが、コード進行の点でも、歌詞と似たことが起きているように思いました。
Aメロの最初の3行は、コードがずっとCmです。キーといっしょのマイナーがずっしり続く感じ。
続くBメロでは、コードもA♭→Fmと進行し、サブドミナントを経て動きが出てきます。
そしてサビでは同主調に転調してさらに動きが感じられます。
という感じで、段階的に変化が出て、それが希望につながる感じがしているのですが、もうひとつ工夫を感じる部分があります。
サビ、1周目と2周目でコード違うのです。
1周目の「どうしても指して動かないから」の部分は、
それに対して、2周目の「明るい方へ手を伸ばすから」の部分は、
となっています。
1周目の「B♭7→E♭m」も、2周目の「D♭→G♭」も、両方ともドミナントモーションだけど、1周目はマイナーで、2周目はメジャーになってますよね?
だから、1周目は力強い動きにも翳りがあり、2周目にはその動きに明るさが伴うように思うのです。
こういうとこの積み重ねで、だんだん明るく希望が手に届きそうな感じを表現できているんじゃないかな!と思いました。コード進行よくわかんないけど!
以上、LiSA『明け星』でした。
ところで年末にツイートしたんですけど、2021年は夜明けを描いた曲がとてもたくさんあったように思いました。
紅白歌合戦の選曲
— ハコサト📦 (@hacosato) December 31, 2021
LiSA『明け星』
白石萌音『夜明けをくちずさめたら』
宮本浩次『夜明けのうた』
みたいに夜明けを描いた曲が多かったし
BUMP OF CHICKEN『なないろ』
BiSH『プロミスザスター』
にも似た気配!
仮に今年が夜明け前でも、2022年はいろんな歌詞の通り日当たりのいい年になるといいね✨
それってもちろん真夜中みたいないまの世相の表れだと思っています。
2022年、いまのところまだご来光に照らされるほどではない状況に思えて、歯痒かったり寂しかったりするけれど、まずはこの歌のように明るい兆しが見つかるといいなって思っています!