5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

ヒーロー VS 小粋 - 赤い公園『KOIKI』

赤い公園『KOIKI』の歌詞を読みました。

この曲だいすき!!

世界が浮き足立っても
あなたが泣いてたらしょうがない
こんな時笑えるジョークを
ひとつくらいは持ってたいな
だって小粋でいたいのだ
っていうサビの歌詞がおしゃれ! この「小粋」がタイトルの『KOIKI』になってるんだと思ったよ。
この「小粋でいたい」っていう感情、すごく今っぽいっていうか、等身大でいいなぁってわたしは思いました。
今回は、そういう話です!

赤い公園『KOIKI』歌詞(歌ネットへリンク)

ヒーロー VS 小粋

この曲、さっきも触れたように

だって小粋でいたいのだ
っていうフレーズが歌詞の芯になっています。

でもこの歌詞の前半は、小粋じゃない話をしています。
歌詞の前半は「ヒーロー」の話です。

赤いマントたなびかせ
颯爽とやって来たけど
並の正義じゃ務まんない
あっち立てりゃこっち立たず
ヒーローは赤いマントをたなびかせていて、いかにもヒーロー然とした身なりはしているものの「あっち立てりゃこっち立たず」って感じで、いまひとつ段取りがよくありません。
段取りのよさはヒーローの必須スキルだと思うんだけどな。

決めたビートをひた打って
淡々と生きてきたけど
たまに正義が決めらんない
そっちじゃない
それに、ヒーローにはぜひ自信も持ってもらいたいものです。
「たまに正義が決めらんない」ヒーローなんてやだよ。
アンパンマンだって、バイキンマンいいやつなんじゃね?それに比べてボクなんて…っ!なんて疑問を差し挟んでたらいやだよー!

良いとこ見せたくても
ここぞでかっこ悪くて
とてもじゃないけど
ヒーローになんてなれっこないね
ところがBメロに入って、じつはいままで描いてきたヒーロー像はヒーローそのものじゃなくて、ヒーローになりたがっていてじつはなりきれていなかった人を描いていたのだと種明かしされたのでした。よかった! 人生に迷ったアンパンマンはいなかったんだ!

世界が浮き足立っても
あなたが泣いてたらしょうがない
こんな時笑えるジョークを
ひとつくらいは持ってたいな
だって小粋でいたいのだ
そこへきて、新たな目指すべき道として提示されるのが「小粋」という概念です。小粋こそ人類が目指すべき道なのですよ!
サビでは「世界が浮き足立っても/あなたが泣いてたらしょうがない」って歌われます。
小粋なひとは、じつに近視眼的です。世界のことなんて関係ありません。「あなた」が泣いてるかどうかだけが大事なのです。
ヒーローは違いました。ヒーローは世界平和を守るために活動するしカバオくんの空腹を満たすためにも活動します。ヒーローは「あなた」と「世界」の両立を目指すのです。
でも小粋な人はそんなこと無理だと思ってやっています。「世界が浮き足立っても/あなたが泣いてたらしょうがない」っていうのは、そういうメッセージなのだと思います。

こうして考えてみると、ヒーローと小粋は、いろんな点で対立しています。
それをまとめてみると、こんな感じです。

ヒーロー
颯爽、正義、「あっち」と「こっち」の両立
小粋
ジョーク、悠々自適、あなたが笑ってたらいいじゃない

こうやって考えると、なんかヒーローっていうと少し20世紀って感じがしますよね。
わたしは思います。もちろん世界を救えて、「あなた」も救えたらそりゃいいんだけど…。でも、両方を幸せにするのはとっても大変だよね、って。
それだったら、せめて「あなた」だけでも幸せになってほしい、ってわたしは思います。
そういう考えが「小粋」なのだと思います。なんかいかにも21世紀、って感じがしますね。

be VS do

ところで、小粋とヒーローは別の点でも対立しています。
小粋がbeで、ヒーローがdoなんですよ!!

小粋に関する描写が出てくる部分をまとめて引用してみます。

こんな時笑えるジョークを
ひとつくらいは持ってたいな
だって小粋でいたいのだ
こんな時ふたりでそっと
踊れるステップ覚えたいな
だって小粋でいたいのだ
こんな時笑えるジョークを
ひとつくらいはひねり出して
呆れて笑うあなたのそばで
ずっと小粋でいたいのだ
サビの最後はぜんぶ「小粋でいたいのだ」になっています。
「小粋になりたいのだ」じゃなくて「小粋でいたいのだ」になってるの、おもしろいと思いませんか??
英語でいうと、doじゃなくてbeなわけで、動作じゃなくて状態として「小粋」を表現しているのです。

さっきから対比しているヒーローと比べてみると、コントラストははっきりしています。
ヒーローは、

赤いマントたなびかせ
颯爽とやって来た
決めたビートをひた打って
良いとこ見せたくても
たなびかせたり、やって来たり、ひた売ったり、見せたがったり、ヒーローのアイデンティティはぜんぶ行動です。

小粋は違います。

こんな時笑えるジョークを
ひとつくらいは持ってたいな
こんな時ふたりでそっと
踊れるステップ覚えたいな
こんな時笑えるジョークを
ひとつくらいはひねり出して
呆れて笑うあなたのそばで
ずっと小粋でいたいのだ
持ってたかったり、覚えてたがったり、そばにいたりするのは、動作じゃなくて状態です。小粋は状態で描写されるんですね!

ヒーローが世界を救うのはドラマです。そこにはストーリーがあって、感情と状況の変化があって、それが日々に色を付けます。
小粋なひとが「あなた」を救うのは日常です。そこにはドラマなんてなくて、その代わりに日々の確実な積み重ねと、それが生み出す安心感があります。
だから、ヒーローの動的な感じは動作で表現できるし、小粋なひとの日々は状態で表現するのが似合うんだと思います。
結局これも、ヒーローと小粋なひとの違いに根ざしているものだとわたしは思ったのでした。



というわけで、赤い公園『KOIKI』でした。
赤い公園は前に『サイダー』も読んだことがあるので、よければ合わせてお楽しみください!
hacosato.hatenablog.com
それから、赤い公園津野米咲さん(今回の『KOIKI』も書いた方です)がSMAPに提供した『Joy!!』の歌詞も前に読んだことがあります。この曲サイコー!
hacosato.hatenablog.com

ところでじつは今回、いちばんメインで書こうとしていたことはここには書いていないのです。
なぜかというと、別の曲に触れてからのほうがじょうずに伝わると思ったからです。
というわけで、次回は別の曲を読んで、今回の『KOIKI』も絡めながらお話ができたらと思っています。
それを踏まえて、次回はMr.Children『HERO』の歌詞を読みたいと思います。
この曲、赤い公園『KOIKI』と似てるんですよね。

そんな話をします。お楽しみに!
https://itunes.apple.com/jp/album/koiki/id1051245872?i=1051245873&uo=4&at=10lrtS

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