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5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

「桜」はメタファー - HKT48『桜、みんなで食べた』

歌詞を読む

こんにちは。
卒業シーズンです! 卒業生のみなさんおめでとうございます♪
わたしは安易な桜ソング大好物なんですが、最近めっちゃ聴いてるのこれです!

この曲最高だよ!!
でも歌詞はナゾです。

桜、みんなで食べた
満開の花びら
春風に吹かれた
一枚キャッチして…
ふつう、咲いてる桜は食べません。それ食べてたらだいぶ不思議な子だよね…。
この曲の主人公たちは、不思議な子のイメージもありつつ、でも不思議ちゃんなだけじゃこの歌詞の世界は見通しきれないとわたしは思っています。
この曲の「桜」は、ある別のもののメタファーだってことが今回は言いたいです。読んでね♪

HKT48『桜、みんなで食べた』歌詞(歌ネットへリンク)

「桜」はメタファー

この曲はこんな風に始まります。

長い時間かけて
仲良くなれたのに
もう別れの季節が来た
タイトルに「桜」があって、「別れの季節」と歌詞にあるんだから、舞台は3月で、シチュエーションは卒業だということがわかります。「時間をかけて」「仲良くなれた」のだから、この曲はラブソングとかではなくて、仲間との思い出を歌ったものだということも読み取れます。
たった3行に、すごくたくさんの情報量があります。
こんなふうに、曲の冒頭の数行でシチュエーションを説明しきるのは、秋元さんの楽曲の大きな特徴です。
hacosato.hatenablog.com
hacosato.hatenablog.com
hacosato.hatenablog.com
ほらね♪

わかり合うまでに
クラスの誰かと
何度ケンカしただろう?
続く部分からは、いまならもうお互いわかり合ってるってことがわかります。
旅立ちの日に』でいうと「意味もないいさかいに〜」の部分に相当するよね。わかる。

(同じ)
紺の制服
帰り道に集まって
(ここで)
いつもの木の下
黙って青空を見ていた
「黙って青空を見ていた」っていうのは、歌詞のサビの部分の雰囲気とは少し趣が違います。黙っているんだったら、たくさんの人がいてもみんながそれぞれ別々の物思いにふけっているみたいな感じに見えます。
みんな違うことを考えているんです。同じ制服を着ているのに。
昨日までだったら、みんなでおそろいの歩み方をしてきたのに、これからはたぶんそうではなくなるのです、っていう暗示が見えますね。

桜、みんなで食べた
満開の花びら
春風に吹かれた
一枚キャッチして…
Bメロは、静か動かでいうと静でした。でも、サビは明らかに動に移ります。
「春風に吹かれた」「満開の花びら」を「みんなで食べ」るのです。なんだそれは。
Bメロには「黙って」っていう描写がありました。口は閉じてるわけです。
サビには「食べた」っていう描写があります。口あいてるよね!
この部分は、口の動きで動静を描き分けてるんですよ! 匠の技じゃん!ヤバいじゃん!!

桜、みんなで食べた
掌の花びら
サヨナラつぶやいて
思い出と一緒に
ゆっくり飲み込んだら
涙テイスト
さらに、サビの後半は「食べた」のほかにも「つぶやいて」「飲み込んだら」という、口に関する別の描写も出てきます。
さっきまでは黙って口をつぐんでいたんだけど、最終的には「つぶやいて」「飲み込」むんですよね。口から出なかったものが、出てしまって、それからまた口に戻っていくのでした。
そして、戻っていくときにいっしょにカラダに入っていったのが、ほかでもなく「桜」です。

この曲は友だちに向けた卒業とお別れの曲なのに、なぜか入っていない言葉があります。
「ありがとう」とか「さようなら」とかです。そういう、感謝とかお別れとかの言葉を伝え合うシーンが、この曲にはありません。「サヨナラ」はあるけど、これ独り言だもんね…。
わたしは、「桜」の正体がそれだと思っています。
この曲の「桜」は「ありがとう」とか「さようなら」とかだと思います。
この曲の主人公たちは、「黙って青空を見ていた」っていう謎なやり方で、残りわずかな時間を過ごしています。ほんとだったら、もっとたくさんお互い伝えるべきことがあるんじゃないの?って冷静な視点で見ているわたしたちは思います。
けど、主人公たちは不器用だし、わたしたちはこの曲を聴きながら、その不器用さこそを愛しています。卒業のシーンで桜を食べちゃうような突拍子もない子、すきだよ!
けれど、主人公たちは不器用なだけじゃありません。その桜を食べるシーンで「サヨナラつぶやいて」「思い出と一緒に」「涙テイスト」と、ヒントをたくさん明かしてくれています。
だから、「桜」として飲み込んでるのはサヨナラの言葉であり、たくさんの思い出であり、涙が出そうな気持ちなのです。

卒業は通過儀礼

ところで、2番になると新しい謎が登場します。

上手く言えないけど
今まで生きて来て
一番楽しかった日々
次の未来でも
しあわせな出来事が
きっと待っているだろう
「次の未来」ってなんだ??ってだれもが思うでしょうよ。
たとえばこの曲が中学校の卒業だったとしたら「次の未来」は高校生活ということになります。でも、そんなに単純でいいのでしょうか?

(そうだ)
わかってるのに
なぜか歩き出せない
(今日は)
いい天気だから
余計に切なくなるんだ
 
全部、食べてしまおう
悲しみの理由(リーズン)
口の中 広がる
桜の香りたち
そうして口にする桜の描写は、1番のときよりも詳細です。
口の中に広がるのは「桜の香り“たち”」です。思い出にはいいものも悪いものもあるのと同じで、桜の香りにも、それぞれ違いがあるんだってことを感じさせます。

全部、食べてしまおう
大切な記憶も…
味なんかしないのに
しょっぱく感じた
やがて散ってしまったら
遠い青春
「しょっぱく感じた」のは「涙テイスト」だからですね。
で、ここで注目したいのは「遠い青春」です。
いくら卒業で、また「青春」から遠ざかってしまうとしたって、桜ソングの中でそれを「遠い青春」という言葉で歌わなくたっていいじゃないですか!
hacosato.hatenablog.com
松任谷由実『春よ、来い』のように、遠い過去になってしまった青春を指して「遠い青春」っていうのだったらまだわかりますが、この曲はリアルタイムで卒業を迎えているみたいなのに。おかしい。

で、わたしが思い出したのはこのツイートだったのでした。

この曲の捉え方ってまさにこれだって思ったのでした。
未来から見たいまが過去に見えるのが気になるのは、未来と過去が現在を伝って連続してるって意識があるからです。

いつか きっと
ここの前で
今日のこと
思い出して
(うるうると)
泣きたくなるね
卒業の時点では、主人公たちは泣いたりしていません。
けど、いつか思い出したら「泣きたくなるね」という感情があります。

あのですね、話かわるんですけど、わたしの知り合いに現高校1年生(つぎ2年)がいまして、その子今年、母校の卒業式に合わせて中学校を訪ねているんですよー。
1年越しの凱旋で、後輩の卒業を祝って、懐かしの先生と再会して怒られたりして懐かしい気持ちに浸ってたようなんですけど、この曲もそういうことだと思うんですよね。

卒業っていうのは、柱に身長を刻むようなもので、本に挟んでおくしおりのようなもので、時間に刻んだしるしなんだなぁ、って思ったりしたのでした。
いまだったら友だちがすぐそばにいて、涙を流すの恥ずかしいかもしれないけど、1年経ったら心置きなく泣けるかもね!



というわけで、HKT48『桜、みんなで食べた』でした。
わたしは卒業式だいすきで、身内がいるわけでもない地元の小学校の卒業式に行ったことがあります。なぜか来賓席に通されました。最高に楽しかったです☆
だれかデイリーポータルZとかで記事にしてくれないかな。他人の卒業式もぜったい好きだなわたし。
現役の卒業生と話をしてみると、みんな卒業式なんてそんなに好きじゃないみたいなのにね。これも「遠い青春」現象ってことなのかな(遠い目)。
桜、みんなで食べた

桜、みんなで食べた

ところで、昔といまとで、卒業ソングの捉え方がちがう、って話はおもしろいですね!
そんなにたくさん難しいことしなくてもよさそうなので、次回までに時間あったらやってみたいな!(これが死亡フラグだったとはこのときのhacosatoには知る由もなかったのでした…)

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