5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

『おジャ魔女カーニバル!!』のメロディはしゃべるイントネーションとぜんぜん合ってないじゃん(でもべつによくない?)

歌詞のある歌は、発音のイントネーションが曲のメロディと合ってないといけない、という話はときどき聞きます。

つまり歌の曲を作るときは、イントネーションを守ったメロディを作る方が好ましいというわけです。

ameblo.jp

メロディの音数に合わせることばかりに気を取られて、イントネーションを破壊してしまうことはできるだけ避けましょう。

sakky.tokyo

メロディの音程の上下と音韻の音程の上下とを比較し、両者が一致していれば歌として自然であり、不一致であれば不自然と考えられる

堤彩香・平賀譲『日本語の音韻と旋律の関係について 〜童謡・唱歌を中心に〜』

ときどき聞くけど、べつにどっちがいいってわけではありません。

イントネーションがメロディと合っていることで気持ちいいという曲もあれば、それがぜんぜん合っていないけれど別の魅力が、あるいは合っていないことそのものによる魅力が見られる場合もあります。

そういうことを考えてて、とりあえずイントネーションがメロディが合っているということがどういうことなのかを調べてみました!

おジャ魔女カーニバル!!』がテーマです!

歌詞のイントネーションとメロディが合っているかどうかについては先行研究があります。

さっきも引用したけど堤彩香・平賀譲『日本語の音韻と旋律の関係について 〜童謡・唱歌を中心に〜』はまさにそれ。

だけど、このやり方だと根本的な問題が2つあると思います。

この研究だと発音の上下を『新明解日本語アクセント辞典』によっています。

『新明解日本語アクセント辞典』はべつにいいんですけど、歌詞に出てくるようなことばって結構アクセント辞典には載ってない、ってこと。

あともっと根本的なことに、文の発音の上下ってアクセント辞典ではわからないんですよね……。

単語単位でのアクセントと、文の中で実現する発音の音の高さの上下は異なるからです。

ちゃんとそういう研究もあるんですけど、話し手が文章をどう解釈するかによっても発音変わっちゃうんですよね〜〜。

わたしの内省ちゃんに相談して歌詞の構造を解釈しつつイントネーションを考えてもいいんだけど(というかわたしは前まさにその方法でやったことある)、なんかそういうの排除できないかな〜〜〜〜。

って思ってたんですけど、そういえばこういうときのためのコンテンツあったわ💡

NHKアナウンサー登坂淳一さんが歌詞を読み上げるシリーズあるんですよね〜これ使えばいいじゃん!!

わたしたちの身の回りではすでにAIによる自動の音声読み上げあるけど、2023年ならまだ登坂淳一さんの圧勝だとわたしは思ってる! 2023年夏休みの自由研究になら間に合う!!

というわけで今回見てみるのは『おジャ魔女カーニバル!!』。

MAHO堂『おジャ魔女カーニバル!!』歌詞

おジャ魔女カーニバル!!

おジャ魔女カーニバル!!

歌詞を文節で区切って、それぞれで発音したときどこで上がりどこで下がるかを書いていきます。それぞれ上がり核、下がり核と呼びましょう。

上がりに「核」ってつけることはあまりないけど「下がり核」に合わせてこう呼ぶことにします。

さらにそれぞれの上がり核・下がり核について曲のメロディが上がっているか下がっているか変わっていないかを照らし合わせます。

上がり核でメロディが上がっていれば一致、上がり核でメロディが下がっていれば不一致と判定します。

同様に下がり核でメロディが上がっていれば不一致、下がり核でメロディが下がっていれば一致と判定します。

たとえば歌詞の最初の文節、「どっきり」の発音は「低低」になります。

ということは、上がり核が「どっ」、下がり核が「き」になります。

当該部分のメロディも書いていきます。「どっきり」のメロディは「高高高」になるので、上がり核の「どっ」部分は変化なしで「→」、下がり核の「き」のとこは「↘︎」という判定です。

その結果、上がり核部分では不一致、下がり核部分では一致、ということになりました!!

……え?

……なるか??

下がり核部分はいいんですけど、上がり核部分はこれでいいんでしょうか?

しゃべるときに上がる部分ではメロディも上がるべきか? 上がってなくても、まあ横ばいでもよくない?

では判定をstrict(厳しめ)とloose(ゆるめ)の2パターン用意して見比べてみましょう。

strictでは上がるべきとき上がれば一致判定、looseでは上がるべきとき上がるか横ばいのどっちでも一致判定、そうしましょう!

そうすると、こういう表ができました。

おジャ魔女カーニバル!!』の歌詞を文節で区切って、イントネーションとメロディの上下を表で記載

これで合致率を出すことができますね。こうです。

指標 割合
上がり核合致(strict) 17.35%
下がり核合致(strict) 36.30%
strict合計 28.33%
上がり核合致(loose) 48.98%
下がり核合致(loose) 72.59%
loose合計 62.66%

厳しく見ると合致率28%、ゆるく見ると63%ということになりそうです。

冷静に考えると、メロディって上がるか横ばいか下がるかの3択です。

だからメロディがこの3つが均等の確率でランダムだった場合、strictでは33%、looseでは66%の合致率になるはず。

おジャ魔女カーニバル!!』はどちらの基準でもイントネーションとメロディがランダムよりも合ってない、ってことになります。

イントネーションとメロディを合わせようとする気はさらさらなく、むしろ合わせないようにしようとしないとこうはならないじゃんね〜〜すご!

でもこれって他の曲でもそんなもんなのだろうか……

もう1曲同じように調べてみて、曲によっての傾向を比較してみましょう。

というわけで先月ぐらいになぜかよく見かけた米津玄師『Lemon』を選んでみました。

こういう表ができました。

『Lemon』の歌詞を文節で区切って、イントネーションとメロディの上下を表で記載

おジャ魔女カーニバル!!』と同様に、合致率を出して並べてみます。

指標 お魔カ Lemon
上がり核合致(strict) 17.35% 70.48%
下がり核合致(strict) 36.30% 58.26%
strict合計 28.33% 64.09%
上がり核合致(loose) 48.98% 76.19%
下がり核合致(loose) 72.59% 66.96%
loose合計 62.66% 71.36%

まてまてぜんぜん数値が違うな!!

まずぜんぶの指標で『Lemon』の数値が高いです、しかもだいぶ。

たとえば「上がり核合致(strict)」、つまりイントネーションが上がるべきところで、メロディも上がっている割合、『おジャ魔女カーニバル!!』は17%しかないのに対して、『Lemon』は70%もあります。

意志を混ぜ込んでわかりやすいストーリーでいうと、おジャ魔女カーニバル!!』のほうはほとんど合わせるつもりない感じなのに対して、『Lemon』はできるだけ合わせようとしているってぐらいのちがいがあります。

一方で「loose合計」のほうでは、『おジャ魔女カーニバル!!』が62%、『Lemon』は71%になり、さっきほど数値に開きがありません。

つまり『おジャ魔女カーニバル!!』ではイントネーションとメロディは逆じゃなければまあよし!というスタンスなのに対して、『Lemon』はイントネーションとメロディの上下はできるだけ揃えたい!ってスタンスのように見えます。

これは『おジャ魔女カーニバル!!』が作詞と作曲別々の人であるのに対して、『Lemon』は作詞と作曲が同じ人であることに由来するかもしれないですね〜〜!

と思ったけど、合唱曲だと作詞作曲が別の人でも相当合わせてくる文化を感じることがあります。

hacosato.hatenablog.com

あと、別に合ってればいいってわけじゃなくて、合っている曲には合ってるなりの、合ってない曲には合ってないなりのよさがあるんですよね〜〜。

アイドルによく楽曲提供をしている玉屋2060%さんがインタビューでそういうことを言ってました。これほんとにそう😠

realsound.jp

曲によっていろんな傾向あるはずなんですよね〜もっといろいろ見てみたいな!!