きょうは平井堅『魔法って言っていいかな?』の歌詞の話をしたいと思います。
この曲ずっと前からCMでやってたから気になってたんですよ!
「愛という曖昧なものに君はその指で輪郭を描いてくれた」という歌詞。それにタイミングを合わせて、画面にタッチして人物に焦点を合わせる演出。そして「曖昧」な部分はハスキーに、「輪郭」の部分は明瞭に歌う平井堅さん。すごい! だいすきだ!https://t.co/P55dvzjMzz
— ハコサト📦 (@hacosato) 2016年4月15日
あまりにCMと相性がいいので、コピーライターさんとかが書いたのかな?と思ってたんですが、なんと作詞も作曲も平井堅さんでした。マジかよ。才能だな。
きょうはいかにこの曲がすごいかって話をするよ!!
平井堅『魔法って言っていいかな?』歌詞(歌ネットへリンク)
カメラのCMだから
この曲はカメラのCMのタイアップがついていました。たぶん、CMありきでこの曲が作られたんだとわたしは思っています。なにしろ相性がぴったりなのです。
君があんまり眩しく笑うから冒頭のこのシーン、「君」がいること自体が幸せだよ、って感じの部分に読めます。
つぶった瞼に残ったオレンジは
いつしか僕のハートの色になった
でもその表現には工夫があります。だって、「つぶった瞼に残ったオレンジ」というのは残像のことです。
光の残像で映像を記録するのはかげおくりだし、それをフィルムやセンサーに記録したらそれはカメラになります。
そもそも、写真撮影のことを英語で「photography」と書きます。「photo」というのは光のこと、「graphy」というのは描くことです。「光で描くこと」と書いたら、この歌詞の部分とまさに呼応しているのがわかりますよねー。
あと、CM動画のこの部分ぜひ見てほしいんですよ!
愛という曖昧なものに歌詞がこの部分にたどり着いたとき、CMの画面にはぼやけた女の子の写真が現れます。そこに指が現れて、女の子をタップした瞬間、ぼやけていた女の子の姿がはっきりと像を結ぶんですよ!! これがこの歌詞とリンクしてないわけがあるでしょうか!! ありませんよね!!(反語)
君はその指で輪郭を描いてくれた
これ、パナソニックのカメラの「フォーカスセレクト」っていう特別な機能で、いまの推しなんですね。それをちゃんと歌詞の世界に組み込めるの、才能しか感じない…。
大袈裟な事は 何も出来ないけどさらに、続くのはサビですよ!
君を笑顔にする魔法はいくつか持ってるんだ
帰り道の 犬の鳴き真似 あの日の本音
君の寝言の話 そして大好きのキス
この部分「君を笑顔にする魔法」としていくつか列挙されています。「犬の鳴き真似」「あの日の本音」「君の寝言の話」「大好きのキス」って感じ。
この部分のいいところは、ひとつひとつはぜんぜんドラマもない、取るに足らないこと、ってことです。
でもそういうことのひとつひとつが魔法を形成しています。
思えばこのCMに出てくる写真も同じで、なんでもない日の食事風景だったり、なんでもない日に公園に遊びに行ったりしたときの写真が取り上げられています。
入学式とか、運動会とか、そういう特別な日の写真はこのCMには出てきません。
それはこのCMのメッセージなのだと思います。
つまり、特別な日じゃなくて、なんでもない普通の日にこのカメラを使ってほしい、っていうメッセージです。
CMに出てくる写真も、この曲の歌詞も、足並み揃ったメッセージをはこんで来てくれますね。
って言っていいかな?
というわけで、この歌詞のすばらしさもカメラのCMとの関連も伝わってきてとっても満足です。
なのですが、いままで見ないふりしてたところがあります。
いままで出てきた「魔法」は、こういうフレーズでした。
君を笑顔にする魔法はいくつか持ってるんだいままでの部分は、「犬の鳴き真似」「あの日の本音」「君の寝言の話」「大好きのキス」が魔法だって歌ってきました。
2番だと同じ部分には「君の顔真似」「打てなかったメールの話」「大好きのキス」と歌われます。
言ってることはだいたい同じ。
日々のささいなことが魔法なのね、なるほどなるほど。って感じで、わたしたちはそれをナットクして受け入れてきました。
ぜんぶ短くて、具体的で、個人的って感じ。
ところが、先を見ると違うシーンが見えてきます。
思えばタイトルはもっと違う言葉でした。タイトルは『魔法って言っていいかな?』です。
このタイトルと同じフレーズを探すと、先の部分にちゃんと出てきます。
立ってられない様な悲しみが襲って来てここに注目すると、いままでと少し違うことが見えてきます。
君を笑顔にする魔法が消えてしまったら
一緒に泣こう 一緒にもがこう 一緒に生きよう
見つかるまで探し続けよう 魔法って言っていいかな
一緒に泣いたり、もがいたり、生きたり、探し続けたりすることも「魔法って言っていいかな?」って主人公は歌います。
ここでわたしたちは気づきます。ささいなことが魔法なのではないのです。
ささいなことでも何でも、それをつなぎ続けて積み重ねる意志こそが魔法なのです。
前半に出てきた、短くて具体的で個人的なエピソードのことを、主人公は自信を持って「君を笑顔にする魔法はいくつか持ってるんだ」と歌っていました。
一方で後半に出てきた、長くて抽象的で集合的な意志のことを、主人公は自信なさげに「魔法って言っていいかな?」と歌います。
主人公がほんとうにテーマにしたいのは、タイトルにもなっている、自信なさげな方です。
いままではその場その場の短いエピソードを魔法だって言ってきたけど、主人公はそれを積み上げる意志を魔法と呼ぼうとしています。
それはまるで、恋が愛に変わることのようです。
好きな人に会うことは最初は非日常になるけど、同棲するようになったらそれが当たり前になるし、結婚したら一緒に暮らすことは非日常ではなく日常に変わります。
でもね、誤解しないでほしいんですけど、わたしの中ではこの曲は結婚式に似合う曲とかじゃないんですよ! だって結婚式は非日常だから!
そうじゃなくて、もっとぜんぜんなんでもないようなふつうの日に寄り添うような、そういう日に似合う曲だとわたしは思っています。
しかもさ、願わくばそんな日の片隅に、このカメラがありますように、っていうメッセージも感じますよね。
もう! ずるいぞ! 巧妙すぎるぞ!!
というわけで、平井堅『魔法って言っていいかな?』でした。
この曲、CMで最初にやってから音源が出るまで時間があったので、こ、これはもしかして音源化しないやつでは…とか勝手に心配してたんですが、ちゃんとCDになったしオフィシャルの動画も出てたからよかったです♪
ところで前にさ、
https://twitter.com/hacosato/status/745229021261094912
こういう風に思ったんですけど、今回この話はしなかったのでした。
今回はわたし完全に「君」=恋人として考えましたが、ぜったいそうじゃない読みもいけると思うので、ぜひみなさんにはそちらの方向性で妄想力を発揮していただきたいです♪
これからもよろしくお願いします☆
https://itunes.apple.com/jp/album/mo-fatte-yantteiikana/id1115612193?i=1115612426&uo=4&at=10lrtS