先日、「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2025』」の発表のイベントに行ってきました!
印象に残ったのはなんと言っても感動詞の話題。
辞書に感動詞、あんまり載っていないと思うからです。
わたしはアイドルソングをよく聴いているんですけど、アイドルソングの歌詞には辞書で見かけない感動詞がいっぱい見つかります。
てか感動詞自体はありふれたものに見えるのに、なぜかそれが辞書*1には載っていないのです。
ほんとかな。さっそく何個か見てみましょう〜!
「え」
で、なんといっても「え」です。
M!LK『好きすぎて滅!』の歌詞はこういう感じです。
「え、好き。」
マジ ぎゅんぎゅんぎゅん
好きすぎて滅!
心拍数はみるみる上昇中
ただ健やかに 生きていてね
それだけで幸せ
サビの直前にセリフが入るのが最近のアイドルソングのトレンドで、この曲ではそのセリフ部分に「え、好き。」が入っています。
この「え」です。
『三省堂国語辞典』ではこのようにあります(以下、用例などは適宜省略します)。
「ええ」のほうも見てみます。
「━、そうです・こういうわけなんですよね、━〔自分で打つ あいづち〕」
②〘フィラー〙次のことばが出なかったり、間を置いたりするときに そえることば。えー。
「ええ(長)、本日は、おいそがしいところ…」
☞ええと。
③ⓐ問い返すときのことば。えー。
「ええ、なんだって?」
ⓑ不満やおどろきの気持ちをあらわす ことば。えー(っ)。
「『いいな、わかったか』『ええ⁉』」
④→えい⦅感⦆。
「えい」は関係ないのでもう見ないんですけど、この中でせいいっぱい近いのは③です。けど、なんか違うんですよね!
「え、好き」は不満や驚きの気持ちを表しているわけではなくて、ポジティブな発見のパフォーマンスをする感じだと思うんです。
「え、似合うじゃん!」「え、ありがとう!」みたいに使うときの「え」は、まだこの辞書にはないみたいなのです。
わたしのこのポストもそうね。
えーたのしそう!読みたいな〜
— ハコサト📦 (@hacosato) 2022年11月12日
「オタク用語辞典」爆誕 名古屋短大の学生ら:中日新聞Web https://t.co/r6EufxBeGI
あとこの用法の「え(ー)」は他とイントネーションが異なり、中国語でいうところの第1声に当たる発音になるはずです。
いやでもこれはほら、たまたま『三省堂国語辞典』になかっただけだよね。
さすがに、どこか他の辞書には載っててくれるはず……みんな使ってるもんね!
「はぁ」
別れてよかったなんて 思わせないでほしかった
好きだったから はぁ
超ときめき♡宣伝部『最上級にかわいいの!』の歌詞には「はぁ」という言葉が登場します。
ここは落ちサビの直前に当たります。落ちサビって曲調がちょっと落ち着いた雰囲気になって内面的な描写が多く出がちなところ。ここではため息をつくような、気落ちしたイメージを伝える感動詞になっています。
『三省堂国語辞典』を引いてみます。
「はぁ」はなかったけど「はあ」ならありました。「はぁ」もあれよ!!
①受け答えの声。
②おどろき・感心の気持ちをあらわす声。
③(なっとくが いかず)〈聞き返す/不満を表す〉ときの声。ああ? はあっ? は?
④はあなっとくのいったときなどに出す声。
二⦅副⦆
息をはく声。
「━(っ)と ため息をつく」
感動詞として立てられている①〜④には、とき宣の用例に該当するものがありません。
強いて言えば③はちょっと近い気もするけどこちらもイントネーションが合いません。
辞書に載っているほうは文末を上げるほう、とき宣の用例は下げるほうのはずです。
二のほうでは「息をはく」話をしており、語釈としては近いんですが品詞が副詞扱いになっていてちょっと違う感じ。
というわけで、この辞書では「はぁ」も捕捉できていないように見えます。
で、でも辞書っていろいろあるし!
どこかの辞書には載ってるものがあってもおかしくないはず……!
「せーの」
さすがにこれは載ってないはずなく、どこかの辞書には絶対あるでしょってやつを最後に挙げます。
FRUITS ZIPPER『NEW KAWAII』は、こういう歌詞で始まります。
(せーの)
ららららららららららら
掛け声を示す「せーの」、なんと『三省堂国語辞典』には載っていません。
少し探してみると「せえの」という表記で立項されていることに行き着きます。
「せえの」!?
手元のデータベースで歌詞を検索してみるとこんな感じ。
せえの: 23件
せーの:1,938件
「せーの」のほうが84倍も多いじゃん!!
ってわけでわたしは「せーの」で立項して語釈のところに「せえの」って書いてほしい派です。
そもそも辞書の見出し語にいろんな役割を持たせているからこういうもたつきが起こってしまうと考えているので、もう少し使いやすくなってもらえるといいよね。
『ジショカツ彙報』という本でオジマさんが論考書いていらっしゃるのでぜひご覧ください。
さて。『三省堂国語辞典』で「せえの」の語釈を見てみるとこんな感じ。
〔話〕力をあわせて物を動かすときや、何かをいっせいに始めるときなどの、かけ声。いっせえの。せーの。
「せえの(下降上昇)、よいしょ!」
こちらは『NEW KAWAII』ときちんと噛み合っていそうですね。よかった〜〜見出し語は変だけど。
ところで辞書のこれ系の見出し語全体的に同じクセがあって、たとえば「はーい」とかも載っていません。
『三省堂国語辞典』では「はあい」になっています。なんで!?
ルビィちゃん! はあい!
ルビィちゃん! はーい!
だとだいぶたたずまい違うくない?
「せーの」「はーい」で引かせてくれる辞書をお待ちしています! さすがにこれはあるはず、フリじゃなくて。
というわけで、アイドルソングから探す辞書にない感動詞、でした。
繰り返しますが「辞書にない」はだいぶ盛ってて、1冊しか辞書に当たってないので最新の辞書たくさんお持ちの方は教えてください〜〜🙏
ところで「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2025』」で受賞した言葉は公開されていて、なんと選評もでています。供給助かる。
dictionary.sanseido-publ.co.jp
1位は「ビジュ」で、M!LK『イイじゃん』が引き合いに出されていました。
J-POPの歌詞がこういう場所に出てくるのはうれしいですね〜〜!
で、3位は「えっほえっほ」でした。これの選評はこんな感じ。
このように、「えっほえっほ」は荷物・ 駕籠など、物を運ぶときの掛け声として使われてきました。現在では一生懸命走る場合にも使われます。今後の辞書は、このような掛け声にも目を配らなければならない。そんな気持ちとともに3位に選びました。
このテキストでは直接は触れられていませんが、イベントでは登壇の方から「感動詞」というキーワードを使って同じ趣旨のことが語られていたのでした。
「目を配らなければならない」。
それはほんとにその通りなんだよねェ!ってなったので、今回目を配ってほしいものを具体的に探してみました。
たまたまアイドルソングで探しやすかったのでそうしたけど、幅を広げるともっといっぱいあるんだよね〜〜。
これからの作詞の深まりと、辞書の充実を期待しています✨
*1:以降は『三省堂国語辞典 第八版』のみを引用していきます。本来もっと多くの辞書を当たらないといけないし特に『三省堂現代新国語辞典』『明鏡国語辞典』とかがアツいのは知っているんですけど持っていないのでお持ちの方いたら引いてみてほしい〜〜!