ぼっちぼろまるさんメジャーデビューおめでとうございます🎉
きょうは『おとせサンダー』の歌詞の話をしたいです!
稲妻にうたれました
死にましたそして蘇りました
いたずらにその可憐さに
一撃必殺で燃やされてる
Aメロの部分はTikTokで流行ってたから歌詞もわかります〜!
その続きの歌詞はちゃんと見たことなくて、今回初めてちゃんと読んでみてびっくりしました。
この曲、歌詞全体でひとつのストーリーになってる!
歌詞全体がひとつのストーリーになっているような曲は、たくさんあるけど最近あまり見かけないように思っていました。
しかもTikTokで流行るような曲ではそういうふうになんないと思っていました。
だからとってもびっくり!!⚡️
きょうはそのびっくりについてのお話です。
ぼっちぼろまる『おとせサンダー』歌詞(YouTube概要欄)
図鑑じゃなくて物語
わたし、以前より歌詞は図鑑型と物語型がある、と主張しております。
このときとかにそういう話をしました。よければ読んでね。
最近は世の中のトレンドでも、またわたしの興味でも、図鑑型のほうが断然アツくて、そういう歌詞ばっかり目にしてきたし、裏を返せばそういう歌詞ばっかりに注目してきました。
例をいくら挙げても証明にならないんですが、いくつか見てみます。
Official髭男dism『ミックスナッツ』では、サビでこう歌われます。
仮初めまみれの日常だけど ここに僕が居て あなたが居る
この真実だけでもう 胃がもたれてゆく
1番のサビでこのように歌われ、2番のサビでも同じように歌われます。
「僕が居て あなたが居る」こと自体は曲の間変化せずずっと居るままで、その居方について、歌を通して深めていく、というのがこの歌詞です。
それは図鑑と同じです。描かれている筆致はページを進めていっても変化がないけれど、たとえば魚の図鑑だったら、ページをめくるたびに魚の別の面にスポットライトが当たり、異なる種類の魚が紹介されて、魚に対する捉え方がどんどん深まっていきます。
図鑑型はそういう歌詞です。
もう1曲だけ見てみます。SEKAI NO OWARI『Habit』。
俺たちだって動物
こーゆーのって好物
って歌詞は1番にも2番にも最後にも出てきます。
壊して見せろよ そのBad Habit
って歌詞は3回出てくるけど、結局「Bad Habit」が壊れて次のフェーズにいくようなことはこの歌詞の中では起きなくて、歌詞の中では「壊して見せろよ(まだ壊さない)」の状態が繰り返し描かれるだけです。
最近はこういった図鑑型の歌詞の方が流行っているしよく見るしわたしも好きで聴いていました。
流行っている理由はよくわからないけれど、好きな理由は明確です。
図鑑型の歌詞の方が、キャッチーだからです。
図鑑は一部分だけを切り取っても価値がなくなりません。図鑑型の歌詞は一部分だけを切り取っても鮮度が落ちづらくて、集中力を切らしてても楽しく聴ける感じがするんですよね〜♪
でも物語型
ところが、ぼっちぼろまる『おとせサンダー』はかなりはっきりと物語型です。
稲妻にうたれました
死にましたそして蘇りました
いたずらにその可憐さに
一撃必殺で燃やされてる
Aメロの部分で、主人公は「稲妻にうたれ」ています。
もちろん文字通りの稲妻ではありません。これは恋のメタファーです。
だいたい稲妻っていったら恋のメタファーじゃん? Aメロだけでは言い切れないけどそうなんじゃないかなぁ…と思いながら読み進めると、その通りなので安心します。
安心できるのはよい歌詞です。
色めき立つライバルたち
席替えも委員決めも神頼み
その根性 叩き直せよ
僕ら向かってく戦国時代
「席替え」とか「委員決め」といった、学校の縁語が出てきます。主人公は高校生あたりで、クラスのひとに恋に落ちちゃって、それで席替えで隣の席になれたらいいな〜的なやつかな? と思いながら読み進めます。その通りなので安心できます。
安心できるのはよい歌詞です。
制してくは情報戦
君の好きな音楽聴いて
たどり着いた魔法陣
きみの心打ちぬく今 最前線
「君」との共通点ができると会話のきっかけにもなるし恋がはかどるもんね!!
好きな音楽を共有できたら、いっしょにお話しできたりライブに行ったりできるかもね!
こっからサビ。
おとせサンダー おこれワンダー
ぼくら快進撃を見せてやる
届け君へ はなてランチャー
誰より強い愛を見せるぜ
モブキャラたちをなぎ倒せ
イケメン 運動部も敵ではない
大爆発 恋心
目標センター入れスイッチ
サンダービーム
タイトルにもなっている「おとせサンダー」っていうのは、Aメロの「稲妻にうたれました」と対になっているのだと思います。
Aメロでは「君」の魅力に、「僕」がうたれちゃったのでした。
でもいまは、「僕」の魅力を「君」に気づいてもらいたいという状況。稲妻の撃ち手が逆なのです。
話それるんですけど、「付き合ってください!」みたいに声をかけることを「アタックする」って呼ぶことがあります。
英語の「attack」は「攻撃する」みたいな意味が主軸なので、わたしは前から変だなぁって思っていました。
だけど、この歌詞を見ると、なんとなく「アタック」のこともわかってくるような気がします。
ほんとにほんとに好きな相手に好きですと伝えることは、稲妻を落としたり、ランチャーを放ったりするのと地続きなのかもしれません。
さて。
ここで終わればこの歌詞はまだ、図鑑にしてはストーリーの厚みがあるわね……ぐらいで留まっていました。
この歌詞が物語になる所以は、その先です。
2番Aメロ。
街を行く 君を見つけ
大運命 これぞ主役の証明
どんな風に登場しよう
あれ?その前にその男誰だ
主人公は、ある日偶然「街を行く 君を見つけ」ます。
明らかにいままでの1番とは別の時間が流れています。
これがこの歌詞のすごいところです。
主人公はこの偶然に「これぞ主役の証明」と一瞬ドヤるわけですが、直後に「君」の隣にいる別の存在に気づきます。
あれ?その前にその男誰だ
と。
このあともさらに時間がどんどん進展します。少し飛ばして次の部分から。
「君」と街で偶然出会ってからさらに別の時間が舞台になります。
よく調べりゃあの男
闇社会で有名ブローカー
仕掛けたのは盗聴器
きみの悲鳴 聴こえたらエマージェンシー
「よく調べりゃ」という表現で時間の経過がわかります。
「君」の隣の「その男」は真っ黒な悪役だったのです。
「仕掛けたのは」という部分でさらに時間が経ち、その上で「きみの悲鳴 聴こえたら」でもうひとつ時間が経過しています。スピード感がすごいな!
おとせサンダー なぜか出せた
喰らえ大天罰だ この僕を怒らせたな
響けウォウォー これこそが愛パワー
駆けつけた「僕」は、なぜかサンダーを落とすことができます。
それを、あの悪役ブローカーをやっつけるために使ったのでした。
もともと「愛パワー」だったものが、なぜか攻撃力を手に入れて、敵を蹴散らしています。
ここでも2種類の「アタック」が混線していておもしろい感じ。
そして倒れるやつらを踏み分けて
ちょい引き気味なきみの手を引いて
超ハッピー噛みしめて
そして、ヒロインにかっこいいところを見せつけて「超ハッピー」を噛み締めつつ、「僕」は改めてこう歌います。
いつか きみに ちゃんと落とすぜ
ぼくの心 全部込めた超サンダー
これ、1番の終わりの部分や、冒頭の「稲妻にうたれました」を踏まえています。
この曲は「稲妻」から始まって「サンダー」で終わります。
おんなじ言葉を使っているのに、ふたりの関係はしっかり変わっています。
変わっているけれどまだ(付き合ってないから)変わり切ってもいなくて、だからその変わり切るところへ向けて主人公は「いつか きみに ちゃんと落とすぜ」と決意するのです。
この歌詞には物語があるけれど、突拍子もないところへ進むのではなくて、ちゃんとスタート地点から脈絡のあるところで歌詞が終わっています。
だからとっ散らかった感じも出なくて、曲を聴いてすっきりした気持ちになれるのだと思います。
こんなに物語は進んでいくのに「サンダー」がいつもそばにあるから、物語の軸はブレないし、キャッチーさが減りません。
そのバランスがとっても好きな曲でした⚡️
というわけで、ぼっちぼろまる『おとせサンダー』でした。