ねぇ聞いて〜!
いま、歌詞の文の長さみたいなものについて考えています。
歌詞を文章に見立てたとします。
そしたら、文章は文で構成されているから、歌詞も文で区切れるはずです。
歌詞を文で区切ったときの、1文の長さに注目すると、何か見えなかったものが見えてきたりしないかな?というのが、最近考えていることです。
ババババンビの歌詞を題材にして、ちょっと考えてみました、という回です!
『キスしてほしい』
『キスしてほしい』という曲があります。
いまYouTubeでは最も再生回数が多い曲っぽいです。一番人気ってことでいいのかな。
サビはこういう歌詞です。
今、キスしてほしい キスしてほしい
キスしてほしい キスしてほしい
この気持ち止めらんない
君はどう思ってるの
この歌詞、“短い”と思うんですよね。
歌詞を文のようなものに区切ったときの長さの話です。
試しに区切り線を入れてみます。こういう感じになりませんかね?
今、キスしてほしい/キスしてほしい/
キスしてほしい/キスしてほしい/
この気持ち止めらんない/
君はどう思ってるの/
モーラ数の平均は8.67でした。雑にいうと、1文8.67文字ぐらいってことです。
これめちゃくちゃ短いと思うんです。
この曲のbpmだと、3秒あれば余裕で1“文”歌えることとなります。3秒聞けばサビのメッセージをまとまったかたちで受け取れるということです。
たった8.67モーラで伝えられるのってかなりのアドだよね…!
少なくともアイドルソングでは、短いほうが効果的なのかも?
…ってなりました。
ところで。
歌詞を文で区切る、と軽々しくわたし言いましたが、実際には単純ではありません。
たとえば、サビの4行分を全部つなげて、わたしの手元のCaboChaに投げてみるとこうなります。
CaboChaは日本語係り受け解析器(要はAI)(雑)です。
キスしてほしい-D キスしてほしい-----D この-D | 気持ち止めらんない-D 君は---D どう-D 思ってるの EOS
これどういうことかというと、最初の「キスしてほしい」は続く「キス」を修飾しているし、「この気持ち止めらんない」のは「君」だと捉えられているんですね。
ま、確かにそういう風にも取れるけどさ…
ふつう最初の「キスしてほしい」と2回目の「キスしてほしい」は同じことを2回繰り返していると捉えるし、「この気持ち止めらんない」のは私の側で、それと対になる「君」の側はどう?って聞いてるわけだからそこに区切り目があると捉えるわけじゃん?
と思うけれど、なかなか一概にこちらが正しいとも言い切れないのがネックになります。
…考え込むと行き詰まるので、いったん別の曲見てみます!
『ばばばばんびずむ~! (7人ver.)』
2番目に再生回数が多かったのは『ばばばばんびずむ~! (7人ver.)』でした。
#ババババンビ『ばばばばんびずむ~! (7人ver.)』の歌詞
サビの歌詞はこうです。区切り線も同時に入れてみます。
すゝめ!ばばばばんびずむ!/
ドレミファソラ駆け抜けてけ!/
しゃにむにらら〜/
会いたい知りたいワールド/
刻め!ばばばばんびずむ!/
摩訶不思議なニューアドベンチャー/
がむしゃらんら〜/
はっちゃめっちゃ止めらんない/
ばばばばんびずむ〜!/
1行1区切りになりました。
こっちの方がモーラが多いみたいで、平均モーラ数は10.22でした。
確かに『ばばばばんびずむ~! (7人ver.)』のほうが、言葉の並びのかたまりが大きいような印象があります。
けど、短すぎもしないし、ふつうの歌詞ってこれぐらい(もしかしたらもう少し長いかも)が1“文”の長さの相場かも!という心境です。
とはいえ、タイトルにもなっている「ばばばばんびずむ!」というフレーズは8モーラ。サビ全体の平均よりも短くて、長くなりすぎないように作られている感じ。
人間の短期記憶は7チャンクぐらいって聞いたこともあるし、それに合わせて歌詞の造語ができているのかも!と思いました。
CaboChaの結果も載せてみます。辞書も触ってない(IPADic)ので混乱してるようでかわいい。
すゝめ!ばばば-----D ばん---D びずむ!ドレミファソラ-D 駆け抜けてけ!しゃにむにらら〜-D 会いたい-D 知りたい-D ワールド刻め!ばばば-------------D ばん-D | びずむ!摩訶不思議な-D | ニューアドベンチャーが-D | むしゃらんら〜はっちゃ-----D めっちゃ-D | 止めらんないば-D ばばばんびずむ〜 EOS
『バカになって好きって言うだけ』
次に『バカになって好きって言うだけ』って曲を見てみます。
サビの歌詞はこうです。区切り線も同時に入れてみます。
バカになって好きっていうだけのことが、なんでこんなに難しい?/
この恋に関してはまだわたし
oh baby baby 生まれたてだ/
先走って好きって言えたならいいのに、なんでかふいに後ずさり/
いつも通り前のめりがいいね/
oh baby baby ちょっと待ってて/
oh.../
は? ながくない??
平均モーラ数は20.8でした。英語の部分は日本語と同じ基準で拍を定義するの難しいため読み飛ばしていてこの量なので、実際には1“文”の重みはさらに大きくなります。
その結果、『バカになって好きって言うだけ』の長さ、『ばばばばんびずむ~! (7人ver.)』の2倍を超えることとなります。
この曲のテンポでいくと最初の区切りまで約7秒、次の区切りまでもう7秒です。
たとえばCMの曲に起用することを考えてみます。一般的なTVのCMは15秒ですが、15秒で2区切りまでしか伝えられないことになります。さっき2秒とかいってなかった??
さらにYouTubeの広告だと5秒でスキップできるので、5秒の場合は文のまとまりを伝えきれないことになります。
でも。
だからといってこの歌詞は魅力がないかというと、そういうわけでもないんですよね〜!
この曲だと、
バカになって好きっていうだけのことが、なんでこんなに難しい?
ってフレーズ自体が、短い言葉で表現することの難しさを描いていて、要は描き方と描かれている内容が噛み合っているんですよね〜〜!
“文”というものがまだきれいに定義できないのでなかなかたくさんの曲を同じ尺度で比べたりしづらいけれど、たくさんのことが見えてきそうな観点だなと思って書きました!
(本編は)おしまい!
ところで。
ここまで書いてきた感じだと、“文”は短いほどキャッチーでわかりやすいし、流行りやすいしTikTokでバズる、みたいな印象を受けるかもしれません。
でも実際はそうとも言い切れないのがおもしろいところ。
この曲の歌詞をちらっと見てみます。
FRUITS ZIPPER『わたしの一番かわいいところ』歌詞
わたしの一番、かわいいところに気付いてる
そんな君が一番すごいすごいよすごすぎる!/
そして君が知ってるわたしが一番かわいいの、/
わたしもそれに気付いた!/
1“文”なっが!!
この曲、#ババババンビ『バカになって好きって言うだけ』と同じくヤマモトショウさんの作詞です。個性を感じるな!
かと思えば、
みたいに、わずか2モーラで大繁盛してた曲もあったのでした。
なんでもアリなのは歌詞の世界の豊穣さの証拠だねって思います!