5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

サルをテーマにしたかわいいアイドルソングなんか成立するわけないじゃん🐵(そんなことなかった) - リルネード『サルネ!』

こんにちは。

リルネード『サルネ!』の歌詞がもうめちゃくちゃよくできていて好きです🐵

この曲、サルをテーマにしたかわいいアイドルソングなんですけど、

  • サルとかわいいなんて両立しなくない?
  • そもそもサルをテーマに1曲語り切るほどの情報量サルになくない?

という2種類の疑問がぶわと湧き上がります。

  • どうせ奇を衒っているんじゃない?
  • よくあるかわいいソングの逆張りなんでしょ?

みたいな予感もあるかも。

ところがこの曲、ぜんぜんそんなことないんですよね。

最後までずっとかわいいし、最後までずっとサル🐵

どういう風なのか、いっしょになぞってみます!

リルネード『サルネ!』歌詞(動画の概要欄より)

サルの引き出し

この曲、「サル」に関する引き出しがめちゃくちゃ大量にあります。

順になぞってみます。Aメロはこういう感じ。

サルベージした記憶、
わたしたちの前世は何?
先祖はたぶんモンキー? (モンキー?)

開始から3行目で「モンキー」が出てきて、サルへの展開が早い〜!ってなります。

が、この曲、それよりさらに前からサルいるんですよね。「サルベージ」です。

今回のは意味これだと思います。

サルベージ(salvage)とは本来、難破船などの引き揚げ作業のことを指す言葉です。PC・NASにおいてのサルベージとは故障したハードディスク・SSDUSBメモリなどからデータを救い出す作業のことで、一般ユーザーではデータの修復が困難な状態のものを特別な技術を用いて元あったデータを救出することを言います。

www.cretbird.co.jp

この言葉知ってたけどさ、歌詞で使うんだ……!っていう意外性があります。偉大。

こんな風に、この歌詞ではサルを音の面と意味の面、両方で拾ってきます。

続くBメロからはさくさくと。

気をつけてても、
たまには木からは落ちちゃうような、毎日なんです

これ知ってる! 「猿も木から落ちる」!

悩み事でも、
小さい山のどこにいるかとかの問題なんです

猿山+お山の大将かな?

気にしてると、いろいろあるけれども それも込みで
うっきうっきしちゃうよね?

「うっきうっき」はもちろんサルの鳴き声!*1

そしてサビ。

あー
まっかっかな顔もかわいいね
ちょい長い手と足もかわいいね
少しずつなんだかぜんぶ違う、それが大切なとこ

サビからはまた少し風情が変わります。

サビでやっと、常人が思いつくサル🐵×アイドルソング🎤感が出るんですよね。

AメロBメロとずっと「サルにこんな切り口が!?」って驚きの連続でしたが、サビはとってもストレート。

だけどストレートだから物足りない、というわけではまったくありません。サビだからこそ直球で刺しにいきたいわけで、そういう意味でとっても印象に残る、大好きな歌詞です。

で、サビの2回し目。

あー
めだっちゃってるのもかわいいね
ちょいすみっこなのもかわいいね

この部分めっちゃよくないです?🐒

サルを見たとき、顔と手足がかわいいのはいいとして、それ以外でどこをどうかわいいとほめよう?と思ったとき、身体のパーツから離れる発想になるのすごく好きです。

そういえば猿山見てると、サルにもいろいろと個性があって、目立っててかわいい子もいれば、すみっこでかわいい子もいるんですよね〜だいぶ前に行った上野公園を思い出しての感想ですけど。

そこにかわいさを見出して、サビの歌詞にできる気概が好きです。

たしかに思い返すと、目立っちゃってるのってかわいいし、すみっこでいるのもかわいいんだけど、ふつうわたしたちが「かわいい」っていうときのバリエーションの引き出しの中にはそういう要素は入ってないんですよね。

だけど思い出すと、あっそういうのもかわいいんだった!ってなるような、その感じがいいなと思います。

自分で自分のことわかってるよ、サルじゃないので

縁語の引き出しもさることながら、もうひとつこの曲でおもしろいなと思うところは、自己言及的なところ。

1番のサビはこういう歌詞。

あー
まっかっかな顔もかわいいね
ちょい長い手と足もかわいいね

2番のサビはこういう歌詞。

あー
まっかっかな顔がかわいいね
ちょい長い手と足がかわいいね

1番だと「顔も」「手と足も」と歌われています。

あれもこれもぜーんぶかわいいな!というニュアンスが感じられます。

だけど2番だと「顔が」「手と足が」と歌われます。さっきは「も」だったのに「が」になった!

「が」になると、改めて見ると……顔がかわいい……あっ、手と足もかわいい……って感じで、それぞれのパーツに再注目している感じが出ると思うんですよね。

かわいさの味わい方が、2番になると一巡しているのです。

しかもこの観点で好きなのは、この続きの部分。

2番のサビではその続きがこうです。

少しだけ昨日となんか違う、それが大切なこと

味わい方が少しだけ変化したことに、この歌詞は自覚的なのです。やば。


というわけで、リルネード『サルネ!』でした。

好きなところいっぱいあっていっぱい書いたんですけど、じつは最初に刺さったところはいままでに書いてないところ。

1番のサビの最後はこうでした。

一番きめるよりもみんなで
一番になりたいな
あなたはどう?

「あなたはどう?」と言われて、正直わたしは自分に問いかけられてる自覚ぜんぜんなくて、てきとうにスルーしていました。

ところが2番のサビで、リルネのみなさんはわたしにもう一度問いかけてきます。

一番きめるよりもみんなで
一番になりたいな
あなたはどうなさる?

なサル!?!?

このときわたしははじめて、歌詞の世界が自分と地続きだと思い知ったのです。第四の壁をこうやって超えてくることあるんだ……。

わたしもみんなで一番になりたいです! あなたはどうなさる?🐵

サルネ!

サルネ!

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*1:そんなの園児はみんな知ってると思うんだが、手持ちの国語辞典ひとつも載ってないっぽくて鬱