5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

かくしてまたストーリーは始まる - UNISON SQUARE GARDEN『kaleido proud fiesta』

こんにちは。

子どもと大人のちがいっていろいろあると思うけど、“自分で判断できる”っていうのがひとつ大きな要素だと思います。

前に別の曲の歌詞を考えたときには、なにかをやめること、がもう一段具体的なテーマでした。

だけど大人は、やめることもできれば、また始めることもできます。

「また始める」ことをテーマにした曲の中でも、この曲の歌詞がすごく好きなのでお話ししにきました。

今日はUNISON SQUARE GARDEN『kaleido proud fiesta』の歌詞のお話です。

UNISON SQUARE GARDEN『kaleido proud fiesta』歌詞

カレイド

この曲は、最初から最後までずっと「始まり」を歌っています。

1行目はこう。

かくしてまたストーリーは始まる

しかも「また」始まる、と歌われます。開始ではなくて、再開の歌詞です。

わたしの考えでは、主人公は再開を選ぶことのできる大人です。

だからこの再開について、責任感を持っていると思います。

自分の意志で再開を選んで、それに付随するいろいろを自分で背負える覚悟、みたいな。

なのに主人公は、Aメロで観衆に向けてこう歌います。

これが運命だったんだ、期待してたかい?
何も言わなくても伝わりそうだから とりあえず今は黙っておこう

「これが運命だったんだ」なんて、自分の責任を脱いだような言い草じゃないですか!

とはいえ、実際にどう責任を背負っているかということと、それをどう見せるかということは別物です。

わたしは、主人公はちゃんと責任を持って再開を選んでいるのに、歌詞の中ではそういう素振りを見せない、というパフォーマンスをしているように思いました。

そういう選択を取れること自体に、大人がにじみ出ています。かっこいいよね。

喝采のロードサイド 止まない未来の向こう側で
倒れちゃいそうな不安をみんな持ってる

「止まない未来」は耳慣れないけど、説得力のある言い回しです。

「止まない」っていったらふつうは雨とかを指すことが多いと思います。それを踏まえて「止まない未来」といったら、未来がまるで(雨と同じように)自分の手に負えないもの、という含みが出ると思うからです。

未来は手に負えなくて、走り続けなければ「倒れちゃいそうな不安」がまたむくりと目を覚ますのです。

だから主人公は再開を選んで走っていくんだね。

あと話はそれるけど「喝采のロードサイド」という表現自体に動き続ける視点が内包されていてきれいな表現! だいすき。

(Play it, ready? Louder! Please more!)
C'mon please DJ, 問いただしてくれ この街を誇る権利
羽が無くても心が促す飛び立つような感覚を
  
ただ眠っていたって夜は明けてしまうから
走れ 進め 狙え 今を理由にして

ここに出てくる「今を理由にして」は、この歌詞を貫く大事なキーワードです。

再開を選んで、また走り抜ける理由は、未来にはありません。

未来は止まなくて、わたしたちの手に負えないから。

その代わりに主人公が理由に選ぶのは「今」です。

「今」を光らせるために、再開を選んで走っていこう、っていうのがこの歌詞の真ん中にある気持ちです。

そういう気持ちで見ていると、サビに出てくるキメの言葉がよく選り抜かれていると気づきます。

サビの最初を見てみます。

その願いを叶えようか 歌えkaleido fiesta
きれい過ぎて忘れられないような ような 景色になる

まず「歌え」は今という時間を使った芸術です。

つぎに「kaleido」はkaleidoscope(万華鏡)を下地にした言葉のはず。万華鏡は見るたびにちがう模様に変わって、二度と同じかたちの輝きを見ることはできません。

そして「fiesta」は祝祭を意味するのだとすると、それはハレかケでいうと明らかにハレの日で、日常とは切り離された一時的な時間です。

というように、どれを見ても「今」という時間にフォーカスを当てた表現になっているのです。

今あなたと僕だけで夢を見続けないか
刹那したプレリュードだけが答えだろう?

「プレリュード」は前奏曲この曲はまだプレリュードだから!ということによって、言外にまだ続きがあるからね!という想いが伝わってきます。

主人公の姿勢は一貫して大人です。再開を選んで、いまを理由にして、走っていきます。

主人公はその過程で、観衆であるわたしたちを巻き込んでいきます。そのコミュニケーションは、できるだけはっきり、わかりやすく、行動しやすいようにデザインされています。

それが「今」を起点にすることだったり、「走れ 進め 狙え」と具体的な命令を織り交ぜることだったりに現れています。

しかも最後、この再開には鮮やかな目印まで付きます。

祝祭の鐘よ鳴れ
かくして快進撃は始まる

この再開には、目印の鐘が鳴るのです。

あとはこの快進撃を見届けるまでだ!


UNISON SQUARE GARDEN『kaleido proud fiesta』でした。

冒頭で触れた大人はなにかをやめることができる、って話は、前にOfficial髭男dism『アポトーシス』の歌詞を考えたときに考えました。

hacosato.hatenablog.com

それから、ユニゾンの曲の話は以前にも読んだことがあります。

hacosato.hatenablog.com hacosato.hatenablog.com

よければ合わせてぜひ読んでね。

そして! 的場華鈴さんおかえりなさい!