P丸様。『シル・ヴ・プレジデント』の話をしたいよ!!
まず検索から来た人のためにタイトルの話をするんですけど、
「シル・ヴ・プレ」(s'il-vous plaît)はフランス語で「お願いします」的な意味。
「プレジデント」(president)は英語で「大統領」とかって意味です。
それを音の近いところでつなげたのが『シル・ヴ・プレジデント』というわけなんですね〜〜。
ところでひとつ言ってもいいですか。
「お願い」のあとに慕う人の名前を繋げたタイトルの曲に覚えはないですか……?
『シル・ヴ・プレジデント』って『おねがいダーリン』と同じ構造のタイトルなのよね…!! 雰囲気近い感じのステキな楽曲です♫
しかも曲を手がけたのは両方ともナナホシ管弦楽団さん。これは…何かあるぞ…!!(ないです)
それはそうと、『シル・ヴ・プレジデント』の曲の歌詞が好きすぎるので、きょうはこの歌詞の話をしますね!
「ロマンスの不祥事」ってフレーズ好きすぎる……💕
だ・だ・だ・大統領になったらね
まずは君を捕まえるね
この曲のサビはこういう感じ。
TikTokでもここが流行ってるわけなんですけど、この曲の「君」っていうのは主人公の恋人。ヤンデレ主人公が相手男性の浮気をたしなめる構図になっています。
濡れたタオルで
洗いざらい吐かせるね(だ・だ・だ!)
誰ですか あの女(いやぁ~)
ダメですか そうですか(あちゃ~)
ところがこの主人公、たしなめるというレベルを超えた罰則を相手に与えるんですよね……濡れたタオルがあれば、呼吸を止められるんだよな……。
ロマンスの不祥事 逃がさない
主人公は、相手の浮気ことを「ロマンスの不祥事」と呼びます。プレジデント(=大統領)は政治家なので、それに釣り合った表現として「不祥事」と呼んでいるというわけ。巧みな縁語です。
しかも。
ここのメロディがアクセントと合わせてあるんですよね。
「ふしょうじ」、発音するときは「ストーブ」とかと同様に低高低低になるはず。
これがだいたいメロディと合うようになってるんですよね〜〜(下がり核の位置が正確にはちょっと合ってないけど)。
『NHK 日本語発音アクセント新辞典』だとこうなってます!
これがすごく気持ちよくて、個人的一大推しポイントです!!!
つづき。
消してあげる
しる・ヴ・ぷれぷれ プレジデント
「消してあげる」はとても軽々しい感じの言い方。だけど内実はだいぶおそろしいフレーズです。
だって大統領に消されるっていうのは、その、そういうことじゃん……。
この曲、全体的にとても明るくてかわいくて華やかな曲調です。だけど歌詞を見てみるとヤンデレの枠に収まらないようなヤバみが宿っているわけで、それがこの曲のチャームポイントになっています。
ちょっと戻ってAメロのところを見てみます。
宣誓! 私が大統領になったら
いやただの友達だよ~って誤魔化す奴はヘソから電気を流します
ここでいう「誤魔化す奴」っていうのは浮気を誤魔化す彼氏さんですよね。ここはいいんですけど、もうひとつ宣誓があって、それの話をしたくって……。
宣誓! 私が大統領になったら
人の男にちょっかいかける女は島流しにします
この宣誓すごくないですか?
「人の男にちょっかいかける女」って彼氏さんの浮気相手なわけなんですけど、その人も島流しにするんですよね。えっ島流し??
全方位への暴力。
これがこの大統領のヤバみをよく表している部分です。
歌詞の言葉の難しさを測ってみる!
ところでいまから想定読者が行方不明になることを書くんですが、jReadabilityを導入します。
というサイトです。すごそう!
前半でちらっと触れた通りなのですが、この曲ってかわいくて明るくて華やかな雰囲気です。
なのに歌詞に出てくるのは「大統領」「不祥事」「島流し」と、不穏なだけではなくふだん使わない、ちょっと難しい言葉ばかりです。
そこにギャップがあってめっちゃいいってわけなんですけど、その難しさを計測してみよう、というのが今回の趣旨です。
といっても、
にアクセスして、テキスト貼り付けて「実行」するだけです。カンタン……GUIありがとう…😭(でもほんとはAPIもほしいよ……✨)
じっさいにやってみました!
するとさまざまな指標が出てきて、「文章難易度」は「とてもやさしい」とわかりました!!
この「とてもやさしい」は、どうやら1文の短さが特に効いている予感。たしかに1文は短いんだよね。
ところでわたしが気にしているのは語彙です。語彙のグラフが出ています。こういう感じ。
それぞれのレベルに分類された形態素をいくつか挙げておきます。
レベル | 形態素の例 |
---|---|
初級前半 | 私、見る、悪い |
初級後半 | 病気、変わる、たぶん |
中級前半 | 理由、大統領、デート |
中級後半 | 付き合い、地位、誤魔化す |
上級前半 | ロマンス、裁く、徹底 |
上級後半 | のうのう、気取り |
分類なし | 不祥事、のらりくらり、洗いざらい |
たしかに後半に行くにつれて難しい響きを感じます。
なおわたしの推しの「不祥事」は辞書にないみたいで分類されませんでした。ざんねん……。
ところで。
これがどれぐらいのすごさなのか、よくわからないんですよね……。
こういうときには?
他の曲と比較してみるのがいちばん!
ということで、この曲と同じくTikTokで流行っている曲の中から追加5曲を選定し、それぞれjReadabilityにかけてみました。
曲目は、
です。めちゃくちゃ豪華だな……。
計6曲の結果の語彙の部分を抜き出して、グラフを描くとこうなりました!
青と赤が初級なんですけど、『シル・ヴ・プレジデント』は初級たしかに少なかったです! ほら!!!(クソデカ声)
上級のが一番多かった『グッバイ宣言』を見てみると、折、籠る、篭る、などが上級前半に分類されていました。繰り返しの多い部分で上級がいっぱい出てくるようです*1。ずるいな!!(ずるくないです)
別にレベルが高いほうがいいというわけではありません。
『同担☆拒否』はかわいい内容をやさしく表現できる一貫性に値打ちがあるのだし、『ドライフラワー』は奥行きがある内容を簡単な単語で表現するテクニックがいいわけなんですよね。
そういう意味でいうと、『シル・ヴ・プレジデント』はやっぱり曲調と歌詞との間にギャップがあると思うし、そのギャップがめちゃくちゃ推せるわけなんですよね〜ほんとそれ。水鉄砲に漂白剤詰めてそう。
それがわかったのでよかったです!
というわけで、P丸様。『シル・ヴ・プレジデント』でした!
ところで「証明する!」ってタイトルにしたけど、証明はできてないんだよな…曲調はわたしの肌感覚だし……。
SpotifyのAPI叩くと、曲のダンサビリティとかアコースティック度合いとかがわかるんですが、それのvalenceで曲調捉えらえるかな……。
こんどやってみます……。
さて、ちょいちょい織り込んでいたHoneyWorks『同担☆拒否』feat. かぴ、歌詞だいっすきなので先月記事書いてました。
よければこちらも読んでほしいし、さいあく読まなくていいから聴いてほしい…!
おしまい。
本記事では、科研費(課題番号 25370573)の成果物である「日本語文章難易度判別システム」(http://jreadability.net)を利用しました。