5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

「座って用を足す癖」がいまも直らないのと同じように - クリープハイプ『幽霊失格』

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こないだクリープハイプ#キケンナコトバアソビ ってタイトルで、尾崎世界観が自身の歌詞を解説する神配信やってたんですよ見ました? わたしは見た。

こっそり録画しようと思ってたんだけどやり方わからず挫折したよね。

さて、『幽霊失格』の歌詞の解説を見たので、きょうはわたしも同じ話をしようと思います〜! 尾崎世界観と張り合う!!

でもできるだけ、尾崎世界観が言ってたのとは重ならないところで、この歌詞のよさをうまく伝えられるようにしたいと思います。

当日の夜のわたしはぶっちゃけこういう状態だったけど、なんとか思い出しながらがんばります〜💪

クリープハイプ『幽霊失格』歌詞

ちょっとわたしの幽霊観を聞いてほしいんですけど、幽霊ってもうこの世にいないはずのひとが化けて出たものじゃないですか。

そこに込められる怖さって、幽霊単体の怖さだけではなくて、あの世の存在のはずなのに、この世にはみ出してくる、という文脈によっても支えられていると思うのです。

あの世のことを、わたしたちはよく知りません。一方この世のことはわたしたちはそれなりに知っています。

しかし知っている世界の中に、知らない世界の存在がはみ出してきている、という傷口に、わたしたちは恐怖するのです。

という前振りを経て歌詞を見たいんですけど、Aメロこういう感じ。

そんな夜を一人で歩いてる
ふいに後ろで誰かの気配がして
振り向いても誰もいないのはわかってるけど

「そんな夜」から曲が始まるのに、わたしたちはそれがどんな夜だか知りません。

しかもこの歌詞ではそれがどんな夜なのか説明しないままで、はっきりは書かないけどわかるでしょう?というスタンスでこの歌詞はそのまま進んでいきます。

わからないけどとにかくもうここにある、というのは、先ほどわたしが描いた幽霊観とよく重なり合います。

幽霊の物語は、もう始まっています。

夜の道を猫背で歩いてる
まるで飼い主を探す犬みたいだな
ガラスに映るのは君の幽霊

たいていの場合、幽霊を直接見ることはなかなかできません。

この歌詞でもスタートの時点では同じで、歌詞に最初に出てくる「幽霊」はこういう感じで描かれます。

ガラスに映るのは君の幽霊

ガラスに反射したところで、幽霊は初めて登場します。

ここからサビ。

化けて
顔色悪い ちゃんと食べてる
怖いどころか心配だよ

ところが幽霊は予想よりもずっとコミカルに描かれます。

主人公は幽霊に対して「顔色悪い」と歌うし、「怖いどころか心配だよ」と優しく声をかけます。

なぜなら、主人公は、この幽霊が顔色よかったときのことを知っているからです。

今回の幽霊は、冒頭書いたような未知の世界の存在ではありません。既知の存在です。

だから主人公にとって、幽霊は怖いものではないのです。

寝る前に繋いだ熱い手を 寝起きで開けただるい目も
思い出させてばかり 君は幽霊失格

しかもこの幽霊にはつよい身体の感覚があります。「繋いだ熱い手」「開けただるい目」のように。

だからますます、この幽霊は見知らぬ世界の存在ではありません。

ではなにか。

この幽霊はたぶん主人公の元カノ、なんですよね。

今日は珍しくまだついてくる
懐かしいとはしゃぎながら部屋のドアを通り抜ける さすが幽霊

それが完全にはっきりしたところで、2番に入るともう恐ろしい幽霊観は出てきません。

2番のサビに入ります。

抱きしめたとき 触れなくても
ちゃんと伝わるそんな霊感
座って用を足す癖 今でもまだ直らないまま
つくづく犬みたい

この「座って用を足す癖」ってところ。

主人公はきっと当時の元カノに“しつけられて”(犬だからね)、そういう癖に至ったんだと思うんですが、彼女が「幽霊」になっても、主人公の癖は直りません。

本人が存在しなくても、本人が存在した痕跡が残っているんですよね。

それって、この歌詞のメインのテーマである「幽霊」とリンクしている感があります、とても。

Cメロ。

せっかくの丑三つ時なのに眠そうで
気づけばいつの間にか寝息を立ててる
まるでこの世のものとは思えない
写真にだけ写る美しさ

前半は2番サビと同じように、幽霊のコミカルさを描いている感じ。

わたしが言いたいのは後半のところです。

写真にだけ写る美しさ

これはTHE BLUE HEARTS『リンダ リンダ』

ドブネズミみたいに美しくなりたい
写真には写らない美しさがあるから

を踏まえているのだと思います(し、放送で尾崎世界観も言ってたと思います)。

が、突然踏まえているだけではないと思うんです。

「幽霊」の様子を見るに、主人公が暮らすこの部屋はきっと、元カノもいっしょに暮らしてた勝手知ったる部屋だと思うんです。

そこにはきっとふたりの痕跡がほかにもいろいろあるはず。

たとえば写真です。

「ガラスに映る」と描写されていた通り、幽霊は直接目に見るのは難しいもの。

「懐かしいとはしゃぎながら」「気づけばいつの間にか寝息を立ててる」と、ひたすらかわいく描写される「君」ですが、見た目のことはこのようにしか描かれていません。

だるい目

 

顔色悪い

いや散々だな!

一方で、元カノがまだ彼女と呼ばれていたときの写真はまだカメラロールや写真立てに残っていて、そちらはきっと美しい過去のままなのだと思います。

過去が過去のかたちをしたまま、現世にはみ出してきている感じ。

それは、元カノが「幽霊」として現世に出てきているのと同じです。

また、「座って用を足す癖」がいまも直らないのと同じです。

ぜんぶ未練のエピソードに収斂していくのです。

成仏して消えるくらいなら いつまでも恨んでて

というフレーズににじむのと同じように。


というわけで、クリープハイプ『幽霊失格』でした。

クリープハイプのこと考えたのは『イト』以来だった…。

hacosato.hatenablog.com

ほんとかな? 『栞』とか『鬼』とか書いてなかったか…こんどやろうかな…。

ところで尾崎世界観さんの配信、解説もわかりやすかったし、スタンスもとても好感が持ててたのしいやつでした〜✨

あれ有料の配信だったとしてもわたし見るな? 本とか出してくれてもいいよ??(チラッ

幽霊失格

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