5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

みんなも地元を思い浮かべて、自分たちだけの「いやほい」をつくろう! -きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』

こんにちは。

この間、初めてお目にかかった人がいて、わたし自己紹介をしたんです。
「はははハコサトといいます。かかか歌詞が好きです。」
って。

そしたらコミュ強のその方、わたしに話を合わせて質問してくださったんです。
「歌詞がお好きなんですね〜。 僕は替え歌が好きなんですが、最近の音楽シーンで替え歌ってどうですか?」
って。
わわたしはキョドって、
「え、えっと、ニコニコ動画の歌ってみたのジャンルの中で替え歌を武器にしてる人がいていいですよね! 知ってますか、あああアンダーバーさんっていうんですけど!! 」
ってなってて、マジでもう少し気の利いた返答をすべきでした死ぬごめんなさい反省してます……*1

そんなある日、わたしはあるツイートを見つけました。

コレを見たとき、あのとき話すべきだったのはコレだっ!!!って思ったよね。

きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』です♪♪

わたしはひざを打ちました。

なるほどね! これは「○○いやほい!」って替え歌してね、っていう意味の曲だったのね!!ってやっと気づいたのでした。

きょうするのは、要するにこういう話です。


きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』歌詞(歌ネットへリンク)

当世替え歌概論

さっそくちょっと話が逸れます。
こないだの関ジャム岡崎体育さんが言ってたんですが、最近のMV業界では

  • 一発撮り
  • 二次創作狙い

のふたつの潮流があるんだそうです。

関ジャムわたし見てたのに、結局一発撮りの話しかしなくて二次創作の話は一切しなかったじゃねぇか許さん😡😡😡ってわたし思ったんですが、それはそうと。

そいえば、動画の世界の二次創作といえばコピーダンスというわかりやすいブームがあります。

たとえば去年めっちゃ流行した恋ダンスは、ひらまささんとみくりさんの二次創作ということができると思うよね♪

それに、柴那典『ヒットの崩壊』には、こういう記述があります。

音楽に「参加する」というのは、何もライブの現場だけで行われていることではない。曲に合わせて「みんなで踊る」ことがムーブメントを巻き起こし、そのダンス動画がYouTubeに投稿されることで長く愛されるヒット曲が生まれたというのも、10年代の音楽シーンの大きな特徴の一つである。

例としてAKB48『恋するフォーチュンクッキー』Pharrell Williams『Happy』三代目J Soul Brothers『R.Y.U.S.E.I』が挙げられています。なるほど!!

ダンスの世界での二次創作がこんな感じだとすると、たぶん歌詞の世界でも二次創作というものが可能なはず。

って考えてみると、わたしの頭にはひとつの言葉が浮かんできます。最近そういえばだれかとそんな話をしたばっかりだぞ…!

そうです、替え歌です。

二次創作としての替え歌っていったら、どんなものがあるかなぁ。そもそも替え歌なんて流行っていたっけ??

そんな風に内省してみてたんですが、よく考えてみたら思ったよりもたくさんありました。そうかアレもか!!

西野カナ『トリセツ』


たとえばこの曲。
結婚式場でバイトしてる友だちに聞いたんですけど、一時期どの会場からもこの曲が聞こえる!って状態だったんですって。

新婦友人が出し物をするコーナーで、この曲の替え歌で新婦を紹介するんですって。なるほど!って思ったよね。

わたしは、そういう用途を察知した西野カナさんが出したのが『Dear Bride』なのだと思っています。

西野カナさんの時流を読む鋭さはあいかわらずちゃんとしててすばらしいなぁ、って気持ちです☆

RADIO FISH『PERFECT HUMAN』


この曲も替え歌をたくさん聞きました。
「na,ka,ta,nakata」の部分を任意の人の名前に変更することで、カンタンにカスタマイズできる点が大人気でした。

わたしは文化祭フリークなんですが、今年は地元の高校の文化祭や、大学の学園祭などで、この曲の替え歌パフォーマンスをたくさん見たよ!

年末の忘年会カラオケ選曲ブログでも、この曲をダシに替え歌をオススメしている記事がいくつかありました。
hacosato.hatenablog.com

こんなに固有名詞がはっきりちゃんと出てくる曲なんかそんなにないわけで、これを見たらだれだって名前の部分をだれかに差し替えてみよっと、って思いますよね。あるある〜〜。

Suchmos『STAY TUNE』


最近の邦ロックのバンドがブレイクするときにはたいてい二次創作がセットになってると思うんですが、いまめっちゃ流れに乗ってる感じのSuchmosでいうと、それは言葉による二次創作、つまり替え歌が後押ししてるんだとわたしは勝手に思っています。

この曲には

ブランド着てるやつ もう Good night
Mで待ってるやつ もう Good night
頭だけ良いやつ もう Good night
広くて浅いやつ もう Good night
っていうすごく耳に残る部分があります。

そして、それをTwitterで検索するとつまりこういう感じになります。

なるほど〜〜!!!

替え歌って、TVとかで流通することが少ないから地味に見えますが、よく見るとそうでもないや、ってわたしは思ったのでした。

以上。ここまでが前段。

孤高の一人は流行らない

そしてここからは、きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』の歌詞のお話です♪

あー 刺激求めて ランランとしたくて
曇りかけた空じゃ ダメ カラフルに変えて
みんな集めよう ワイワイ素敵なSHOW
オトナには気付けない砦

この歌詞でわたしがいいなって思ったのは「みんな集めよう」のところです。

この歌詞は「みんな」のものです。

シャイになら もう成り飽きた 踊ろう
ハイになれ あの交差点から始まった
プリーズプッチャヘンズアップ ワントゥー
キミの楽園まで 今 昇りたいの

この歌詞に出てくる「あの交差点」とは、きゃりーぱみゅぱみゅのデビューシングル『PON PON PON』のことだと思うんです。

『原宿いやほい』と『PON PON PON』は同じ主人公なんだ!ってわたしは思ったのです。

あの交差点で みんながもしスキップをして
もしあの街の真ん中で 手をつないで空を見上げたら
もしもあの街のどこかで チャンスがつかみたいのなら
まだ泣くのには早いよね ただ前に進むしかないわいやいや
http://www.uta-net.com/song/116334/

デビューシングルでは主人公は「チャンスをつかみたい」と言っています。

そのためには「WAYWAY空けて あたしの道を」とあるように、ライバルを蹴落としていくような覇気がありました。

デビューシングルのときには、主人公にとって「みんな」は蹴落とすべきライバルだったのです。

でも『原宿いやほい』ではちがいます。

みんな集めよう ワイワイ素敵なSHOW
オトナには気付けない砦

「みんな」で(を?)集めることによって、一人ではできないことを達成しようとしています。

思えば「いやほい」みたいなかけ声のあるテンションの高まりは一人ではたどり着くのが難しいもの。

たくさんの人が集まって、その相互作用の中でハイテンションは生まれます。

そして相互作用というのは、インターネット上ではSNSとして体現されています♪

二次創作はSNSで行われるわけで、ここにさっきのお話がこの曲とリンクする機運を感じるよね!

あー リアルな道は ランウェイと違くて
でもねそんな時も ほら カラフルに変える
みんな集めて ワイワイ素敵でSHOW
コドモでも気付けない 一人じゃ

たぶん、主人公は『PON PON PON』のときにはあの交差点をランウェイだと思っていたんでしょう。

だとすると、正面や横から歩いてくる別の人たちはランウェイ上の進行を妨げる邪魔者でしかありません。

でも『原宿いやほい』の主人公は「リアルな道は ランウェイと違くて/でもねそんな時も ほら カラフルに変える」と言っています。

「リアルな道」にはいろんな方向からやってくるひとたちがいるけど、主人公はそれをポジティブに捉えています。

この曲に出てくる「交差点」は、「みんな」を生み出すものとして肯定的に考えられているのがわかって、それがこの曲のSNSとの相性の良さともリンクして感じられます! とってもいいよね♪

原宿でいやほい 原宿でいやほい とりあえずいやほい
ほい ほい ほい ほい ほい ほい 1.2. いやほい

世の中のほとんどの人は原宿とは無関係のところに住んでいるから、身近な交差点を思い浮かべるなら原宿にはならないんですよね。

だからわたしだったら、身近な「みんな」といっしょに、もっとローカルなものを「いやほい」したいよなぁって思います。

そんなときに「原宿いやほい」っていうわかりやすいフレーズがあるのはとっても助かります。

「○○いやほい!」って書き換えるだけで、カンタンにオリジナリティが出せるから♪

わたしの知り合いの小学生はそうやって遊んでるわけで、こういう遊びがSNSでもちゃんと認められるような環境が整うといいなぁって思いました。


というわけで、きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』でした。

わたしがここまで妄想してたことにはひとつすごく難しいところがあります。

それは、この曲のカラオケバージョンがカンタンには手に入らないこと。

iTunesにもAWAにもないし、YouTubeでだれでも無料で手に入る、っていうのから比べるとギャップがあるよね…。

公式のoff vocalが手に入るボカロ業界とかに比べたら、J-POPは歌詞においてのUGCハードル高いと思います。

たとえばHoneyWorksさんだったら

ニコニコ動画YouTube、こえ部、等」Webで個人的に公開する範囲で、「歌ってみた、演奏してみた、アレンジ音源、オリジナル解釈のPV、BGM」としての使用は、自由にしてもらって構いません。
歌詞改変、替え歌もご自由にどうぞ。
(公認という意味ではありません)
http://com.nicovideo.jp/community/co474645
と言ってるし、J-POP業界の人にもぜひがんばってもらいたいよ〜〜!!😭😭😭

これからもよろしくお願いします!!

本文で言及したのはこの本。

音楽ライターさんの本なんだけど、音楽そのものに深く立ち入っていくというよりも、音楽と社会との関わりみたいなところを見つめている方で、文体もわかりやすくてたのしいのでとってもよかったです☆

わたしは鮮度が高いうちに読めてほんとうにうれしかったから、みんなもいまのうちに読んでほしい!!

そしてひとつめっちゃかっこいい洞察のAmazonレビューが付いてた!!
www.amazon.co.jphttps://www.amazon.co.jp/review/R131TMECSTY8KD/ref=cm_cr_dp_cmt?ie=UTF8&ASIN=4062883996&channel=detail-glance&nodeID=465392
惚れたよね…😍

原宿いやほい

原宿いやほい

次回は乃木坂46『サヨナラの意味』の歌詞をやります。なんともう書いてある✏️

*1:このときにはまだパーマ大佐『森のくまさん』のことぜんぜん注目してなかった…。