KEYTALK『MONSTER DANCE』の歌詞のことを考えていました。
KEYTALK『MONSTER DANCE』歌詞(歌ネットへリンク)
(Monster Dance!!) 踊れや騒げやこの4行の間に、「Monster Dance!!」も「ya」や「Dance」も繰り返し出てきます。繰り返し出てくるとリズムがあるし、リズムがあると踊れます♪
(ya ya ya!!) 朝が来るまで
(Monster Dance!!) 激しい胸騒ぎ
最高の Sixth Sense で Dance Dance Dance!!
この曲は、“踊る”ためにいろんな部分を追求してある曲だと思いました。
もう、アートっていうよりデザインって感じです。
今回はこの曲の、デザインとしての精緻さを考えました。
繰り返し→リズム
この曲について検索してみると、だいたいみんな振り付けとか踊りとかの話をしてます。
この曲は、歌詞にも踊れる仕掛けがあるのです。
たとえば、この歌詞には小さい繰り返しがたくさんあります。各連の最初こんな感じです。
知らないよ全然そんなの 教えて How to!!なるほど♪ 「How to!!」と「Give me!!」がセットです。
立ち寄ったらついでに ほどこして Give me!!
熱い熱いよ熱すぎる 僕にはちょっと早すぎる「熱い」も「〜すぎる」も2回ずつ出てきます。
踊れ踊れさあさあ踊れこの10文字中で「踊れ」率が60%もあります。政権支持率が60%だったらだいぶ安泰です。
(Monster Dance!!) 踊れや騒げやサビはさっきも引用したけど、「踊れ」も「ya」も何度も出てくる!
(ya ya ya!!) 朝が来るまで
何度も出てくると「あっこれ知ってる!」って気持ちになります。
知ってるものが短い周期で出てくると、それはリズムになります。
そして、リズムがあると、ダンサブルです♪
この曲は、何度も曲調が変わります。
ふつうは、曲調が変わってしまったら、聴いてる私たちは変化から取り残されてしまいがちです。
でもこの曲は、変化するやいなや、歌詞の中にリズムのある、繰り返しのフレーズを埋め込んできます。
だから私たちは、曲調が変わっても、すぐにその中から新しいリズムを見いだすことができます。やった!
変化→一体感
でもどうして、こんなにすぐに曲調が変化するのでしょうか。
それは、変化がリズムにのることの手がかりになるからです。
この論文からの孫引きになりますが、
- リズムにのること
- なりきること
です。
このふたつは、別々のものに見えるけど、もとをたどればひとつのものです。
リズムに没入すると、なんだか自分がリズムそのものになりきるような、そういう感覚に包まれます。私は、キャンプファイヤーでジンギスカンを踊ったときにすごくそれ思った!
この論文では、以下のように紹介されています。
私たちは踊りながら、自身が演奏者になっているような感覚になります。
「リズムにのること」とは、演奏者に「なりきること」と裏表です。
この論文によると「リズムにのること」には手がかりとして「4つのくずし(変化)」があります。
- 身体のくずし
- 身体の軸を様々な状態に変化させる
- リズムのくずし
- 動きや速さを変化させる
- 場のくずし
- 方向や場の使い方を変化させる
- 仲間のくずし
- 1人ではできない仲間との様々な動きをする
そして、この4つは、ぜんぶ『MONSTER DANCE』のPVに出てきます。
ひとつずつ見てみます。
身体のくずし
これは曲調に合わせて振り付けが変化することに対応します。
たとえば、1番の
熱い熱いよ熱すぎる 僕にはちょっと早すぎるは、2番の同じ個所と振り付けが違います。1番はPPPHだけど、2番は横向きにくねくねします(これっていわゆる縦ノリと横ノリの違いなのかな…)。
今すぐに君に会えるなら 暴れ出せ胸騒ぎ
これは、身体のくずしに相当します。
リズムのくずし
曲が進むと、パートによってテンポが違う個所があります。
(How to!!) もっとすごいの教えてから始まる2連は、他と比べてゆっくりになっています。
(No No!!) そんなもんじゃどうってことないよ
必然的に、振り付けもそれに合わせてゆっくりになります。
これがリズムのくずしです。
場のくずし
この曲の基本的な場の使い方は、演奏者(KEYTALK)と運動者(聴きながら踊る人)が向かい合う、というものです。
でも、途中で場の使い方が変わります。
運動者側の中心にひとりダンサーが現れて、残りのみんなはその周りを盆踊りのように踊るのです。
最初は1次元的な対立だったのが、途中は極座標みたいな感じに変わるのです。
これが場のくずしです。
仲間のくずし
この曲の登場人物は、基本的には演奏者と運動者のふたり(2グループ)です。
でも、この仲間関係も途中で変化します。
さっきも出てきた盆踊り。このときには、中心にダンサーがひとり現れます。全員一様だと思っていた運動者側に、実は違いがあったことが見えてきます。
さらに、後半のサビには運動者の中からふたりが、チアリーディング的な感じで高みに飛び上がってきます。
これが仲間のくずしです。
というわけで、くずしには4種類もあるのに、その全部がPVの中に出てくるということがわかりました。
くずしはリズムにのることへの手がかりです。
そして、リズムにのることは、演奏者になりきることとつながります。
みんなが演奏者になりきる境地に達すれば、きっと極上の一体感でしょう。
この曲はそんな極上の一体感を味わうするために、精緻にデザインされた曲だったのでした。
というわけで、KEYTALK『MONSTER DANCE』でした。
私がこの曲を知ったのは、去年の11月のことでした。
そのとき私は、こういうツイートをしています。
https://twitter.com/hacosato/status/531806378994569217
この曲の存在を知ったとき、私はフェス文化ってものがあって、みんな踊れる曲を求めてて『MONSTER DANCE』がそれにハマる曲だってことは、一応ネットで知っていました。
けれど、フェスの文化は自分には関係ないと思っていたし、自分がこの曲にかかわるとしたらまあ歌詞を読むかもしれないぐらいだよね〜〜、って思っていました。
だから私は「めっちゃ嫌われそう〜♪」だなんて言ってたのです。
自分と、踊ってる側の人たちとの間に境界線を引いていたのです。
ところが。
なんの巡り合わせか、今年のGWに、JAPAN JAM BEACHに行ってしまったのでした。ロックフェスです。
しかも、KEYTALK見ました。
会場は海辺。暑かった日もだんだん暮れて、きれいな夕焼けが見えて、空はすっかり夜の色です。その日最後のアクトがKEYTALKでした。
つよい照明で夜が照らされて、KEYTALKが現れて、演奏が始まって。
私たちは少しでも高く手を掲げて、リズムを成して踊りました。
ひとりひとりの手が、光に照らされてさまざまな色に変わって見えました。
私は知ってる曲半分もなかったんだけど、でもすごくいいないいなって思ってました。
アンコール前の最後の曲が『MONSTER DANCE』で、私はそれを聴きながら、少し踊りながら、じわじわ感動すらしてきました。
だって、私が、小さなイヤホンでしか聴いたことないような音が、いまここでみんなにも聴こえるように鳴っていたから。
それに、小さな画面でしか見たことがなかった人たちが、いまここでみんなにも見えるように演奏してたから。
そして、私がひとりでしか見たことなかった踊りを、みんな私が知っているように踊っていたから!
もう、とってもびっくりしました。
私はみんなの振り付け見ながら、マジか! YouTubeと同じだ!マジか! マジか! ってずっと思ってました。きもちわるいね。
私に想像力がないだけで、本当はネットの向こうに、ちゃんと人がいるんだなぁ〜って、ばかなことを思いました。
ネットの向こうに本当に大勢の人がいるなんて、私は、いまいち想像できてなかったんですね。
そんなことを考えながらおうちに帰りましたとさ。おかしなはなし。
こんな斜に構えたツイートしてた私が、たった半年後に踊る側になってしまうなんて、ぜんぜん考えてもみなかったな。https://t.co/SKTerKTnYW https://t.co/aaW2yHubkt @YouTubeさんから
— ハコサト📦 (@hacosato) 2015年5月4日
嫌われないといいな。次回はSEKAI NO OWARI『プレゼント』の歌詞を考えます。
今年のNコンの課題曲です。