さばさばさば、まちがえてさんま変な歌詞でしょう? ネタ曲だと思うでしょう?
すしすしすし、シャリなくてさしみ
とろとろとろ、まちがえてとろろ
すしすしすし、さびなしはこども
でもね、(寿司って意味ではネタなんだけど)曲としてはただおもしろいだけじゃないのよ!!
いまも頭の中でイントロが回り続けています。はやくもっと世間に見つかってくださいますようお願い申し上げます。
今日はふぇのたす『すしですし』の歌詞を妄想したいと思います。
『すしですし』歌詞(うたまっぷへリンク)
すしですし
この曲のAメロは、同じ言葉を3回繰り返したあとで、それを展開して別の言葉へ繋いであります。つまりですね、
- 最初に、寿司ネタを提示(提示部)
- 次に、そのネタをどう料理するかを展開(展開部)
- 最後に、元の寿司ネタがどう変わったのかを再現(再現部)
という3段飛びが各行に現れているのですよ! つまりソナタ形式なのです。おわかりいただけるでしょうか。
さばさばさば、まちがえてさんまですので、冒頭の4行の場合、いかのようになります。
すしすしすし、シャリなくてさしみ
とろとろとろ、まちがえてとろろ
すしすしすし、さびなしはこども
提示部 | → | 展開部 | → | 再現部 |
---|---|---|---|---|
さばさばさば | → | まちがえて | → | さんま |
すしすしすし | → | シャリなくて | → | さしみ |
とろとろとろ | → | まちがえて | → | とろろ |
すしすしすし | → | さびなしは | → | こども |
と、こういう感じになるわけです。
で、私が惹かれたのは展開部です。
上記の表の中には、2種類の展開部があります。音に関するものと、意味に関するものです。
さばさばさば | → | まちがえて | → | さんま |
---|
とろとろとろ | → | まちがえて | → | とろろ |
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この2つは、音に関する展開部を持っています。「さば」と「さんま」の音は似ているし、「とろ」と「とろろ」もよく似ています。音は違うのにぜんぜん違うネタの話をしてるから、ギャップがおもしろいのですよね。
一方で、
すしすしすし | → | シャリなくて | → | さしみ |
---|
すしすしすし | → | さびなしは | → | こども |
---|
この2つは、意味に関する展開部を持っています。すしからシャリを取るとさしみになるし、すしからさびを取ると子ども用になります。word2vecでやってみたいですねこれ。
私がおもしろいと思うのは、シャリを取るのとさびを取るのとで、見てる観点が全然違うということ。シャリを取ってさしみになるのは見た目の問題だけど、さびを取って子ども用になるのはさび抜きのすしが社会でどのように受容されているのかと関係があります。全然違うのになんだか似てる! 楽しい!
しかもこのあと、歌詞はどんどん新しい展開を見せてくれます。切り口がほんとに多様なのです。
かにかにかに | → | 毛があると | → | 毛ガニ |
---|
これは見た目の問題だけど、音も関係ありますね。意味かつ音!
すしすしすし | → | シャリなくて | → | さしみ |
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これは見た目。意味!
しゃけしゃけしゃけ | → | もともとは | → | いくら |
---|
これは出自っていえばいいでしょうか。しゃけの特徴の話。
すしすしすし | → | さびありは | → | おとな |
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さっきの逆バージョンだから意味!
この「さびありはおとな」って、すごくおもしろい表現だと思うのですよ。だって、「さび抜き」という言葉が世の中にがあって初めて「さびありはおとな」と言えるようになるのです。お酒に酔う人が世の中にいて初めて「シラフ」って言葉があるのと同じ。
この歌詞がこの場所にあるのはすごくいいことなのです!
好きですし
で、そんなことより私が好きなのはその先の部分です。この歌詞楽しいだけじゃないのです。
楽しいだけじゃなくてめっちゃかわいいのですよ!!
この歌詞で一番大事なとこはどこでしょうか。
一番大事なのはAメロじゃないのです。
答えは〜、
海にもね、川にもね、頭の中にもあなた泳いでどう考えたってここでしょ!
いつかはね、どこかでね、会えるのなら、明日も来るわ
すしすしすし、あなたが好きですし
ここで唐突に登場する「あなた」、どうせ曲の最初からいたに決まってるのです。
主人公はそんな「あなた」のことなんて見向きもしないで、寿司ネタをネタに、変な言葉遊びの歌をうたっています。
「あなた」はそんな主人公の歌を聴いてるだけ。曲の前半では「あなた」に存在感はありません。
ところが、曲調が変わって、歌詞の視野も急に広くなって「海にもね、川にもね、頭の中にもあなた泳いで」という歌詞が出てきます。ここへきてようやく、聴いている私たちは「あなた」って人がいたんだ、っていうことを発見します。
そして、その驚きが冷めないうちに、
すしすしすし、あなたが好きですしってフレーズが飛んできます(!) ら、ラブソングだったの!?
ここ、「すしすしすし」の部分はAメロと同じです。だから私たちはここまで聞いてて、ああどうせまたソナタ形式なんだろ、サビがあるとかないとかの話をするんだろ、みたいな気持ちになります。
違うのですよ! 好きだったのですよ! 「あなた」のことが!!
「好きですし」はもちろん「すしですし」と韻を踏んでいます。
だからこの曲で「すし」のことが出てくるシーンは、ぜんぶ「すし」が「好き」に変わる可能性があったのです。
Aメロの
すしすしすし、シャリなくてさしみとか
すしすしすし、さびなしはこどもの部分は全部、ほんとだったら「あなたが好きですし」って歌いたかったとこだったかもしれないのですよ!!
主人公は「あなた」への好意をずっと伝えたかったのに、いっつも直前でためらってしまって、「シャリなくてさしみ〜♪」なんて言いながらごまかしてきたんです。
おわかりいただけるでしょうか、この歌詞のかわいさが!!
というわけで、ふぇのたす『すしですし』でした。楽しい! かわいい!
なお、本文中にソナタ形式についての不適切な発言がありましたことをお詫びします。もちろん私だってさすがにほんとのソナタ形式が違うものだってことぐらいはわかります。
…なんとなくだけど。
ふぇのたすって私、2週間前まで知らなかったのですがたいへん楽しいしみんなもっと聴いたらいいです♪ あと、今日ぜんぜん関係ない友だちからすしざんまいオススメされたので今度行ってみたいです!https://itunes.apple.com/jp/album/sushidesushi/id868755029?i=868755052&uo=4&at=10lrtS
次回はMr.Children『CROSS ROAD』を取り上げたいと思います。なんと、
1年も前にしおれさんにリクエストいただいてた曲です。何のひねりもない読み方しかできないのが嫌で、ずっと考えていたのでした。遅くなってごめんなさい…。