5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

GReeeeN『オレンジ』

うわべだけのラブソングじゃない!
こんにちは。いまガストでこれを書いています。外で書くなんてとてもレアです。
さて、予告を変更いたしまして、今日はGReeeeN『オレンジ』を取り上げたいと思います。お察しの通り、SEABREEZEのCMに胸を打ち抜かれちゃった私です。発売からおよそ1ヶ月ほど遅くなりましたががんばります(汗)。
ちなみにGReeeeNは前に『キセキ』を読んだことがあるので、GReeeeNお好きな方はそちらもどうぞ。
『オレンジ』は、

ああ わかんない 何回 君を追いかけ駆け出した
愛なのかい?恋なのかい? どれもわからない感情
ああ 止めらんない これなんだい? 焦るこの胸の鼓動が
君に聞こえそうで 近づけない
どうしようもないくらい 君が好きなんだ

っていうサビのフレーズがとにかくキャッチーです。最初のほうは「o」の音が、後半は「ai」の音が、それぞれきれいに韻を踏んでいて、GReeeeNの真骨頂を私たちに見せつけてくれます。
歌詞自体は「どうしようもないくらい 君が好きなんだ」っていうのがメッセージのシンプルなラブソング、に見えます。でもその表現は割と手が込んでいて、そんなにシンプルじゃありません。例えば、タイトルの『オレンジ』ってなに? そのへんをこれから考えていきたいと思います。
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND126654/index.html
構成はこちら→イントロ-A-B-サビ-A-B-サビ-C-サビ-サビ

PVおもしろかったのですが消えてしまったようです。

サビはただ繰り返してるんじゃない!

この曲、さっき引用した部分がサビになっています。1回めと2回めはまったく同じ文で、3回めだけはちょっと違います。
でもこのサビ、1回めと2回めとでは意味が違います(!)。おんなじ文なのに、です。
この曲は、1連だけはイントロで、歌詞の時間軸は2連めから始まっています。

始まりはなんとなく 君の声も知らなくて
同じ帰り道で 少し前歩いてたよね

2連の始まりはこんな感じ。「始まりは〜」って感じで連が始まっているので、読んでいる私たちは始まりのことが描かれているのだと気持ちを準備して読み始めることができます。

夕焼け染まる背中が 振り返り目があった瞬間(とき)
赤く染めた頬を 空の色のせいにした

雨があがった 校庭の隅で
オレンジの背中 を待っててくれたって
気付いた日から

2連の続きから3連にかけてはこんな感じ。
ここでタイトルの「オレンジ」が登場します。オレンジは夕日の色ですね!
この曲は一人称が「私」だから女の子目線の曲で、夕日を浴びてふたりが出会ったのだからきっとふたりは部活帰りぐらいの中学生か高校生ぐらいで、目が合って頬を染めている女の子はたぶん「君」のことが好きで…っていうビジュアルのイメージがたくさんわいてくるような部分です。実は私は主人公が女の子だと気づいて、これすごい!大発見!とか思っていたんですが、PV見たらふつうに女の子で出てましたね…υ

ああ わかんないよ 何回も 君を追いかけ駆け出した
愛なのかい?恋なのかい? どれもわからない感情
ああ 止めらんない これなんだい? 焦るこの胸の鼓動が
君に聞こえそうで 近づけない
どうしようもないくらい 君が好きなんだ

そしてそのままサビに突入していきます。君を追いかけ駆け出す気持ちは、さっき出てきたばかりのオレンジ色にひもづけられています。これはあとあと大事なとっても注目ポイント。君が好きだっていう気持ちが、オレンジ色ととても強く結びついているってことです。
「どうしようもないくらい 君が好きなんだ」っていう表現もあとあととても効いてくる部分。とりわけ大事なのは最後の「んだ」です。益岡・田窪『基礎日本語文法-改訂版-』によると「のだ」の項目のあたりは


ある事態を別の事態の説明として述べるムードを「説明」のムードと呼ぶ。説明のムードを表す形式には、助動詞の「のだ」、「わけだ」がある。
「のだ」は、ある事態に対する事情・背景の説明を述べる形式である。「わけだ」がもっぱら理屈に基づく説明の表現であるのに対して、「のだ」は、話し手の主観的な判断による説明であってもよい。
(p.131)
って書いてあります。
「のだ」には、さらにふたつの用法があると私は思っています。自分に対する説明と、相手に対する説明です。
自分に対する説明とは「本当はキミ、嘘をついていたんだね」って感じ。それに対して相手に対する説明とは「本当は私、嘘をついていたんです」って感じ。どちらも説明なのですが、説明の宛先がちょっと違うのが分かると思います。前者は気づきとか納得って感じ。後者は告白や説得って感じです。
『オレンジ』の1番の「どうしようもないくらい 君が好きなんだ」は、2つの中では、自分に対する説明だっていうことが分かりますよね。やっといま気付いたけど、私は君が好きだったんだ、って感じ。
ところで、2番だとどうでしょう。2番は、

それからの帰り道は 2人で並んで歩いた
笑顔 泣き顔 全て オレンジ色に染めて

という部分がから始まります。ふたりがもうお互いの思いに気づいているところなのだと思います。この状態でまた1番と同じ表現のサビに入ります。そしてサビの最後はこんな言い回し。

どうしようもないくらい 君が好きなんだ

1番と同じフレーズですけど、違って聞こえませんか? 1番だとこの部分は「君が好きなんだ」と私は気づいた、っていうシーンだと思います。でも2番だと「君が好きなんだ」と君に伝えたい、っていうシーンに思えます。1番の「んだ」は自分へのひとりごとだけど、2番の「んだ」は相手へのメッセージになっています。

シーンはひとつじゃない!

唐突ですが、たぶんこの曲は、2つの時間が流れていると私は思います。さっき考えてみていた学生時代のシーンは実は回想で、思い出されているシーンとは別に、思い出している側のシーンがあるみたいなのです。それが1連です。

1つ2つと 星が出てきた
夕焼け あの日の 帰り道で
並び歩いた 何気ない日と
空色 同じ色 重ねた 君を想って

キーワードは「あの日」です。空に浮かぶ星を見ながら、あの日の夕方に見た星に思いを馳せているのではないかな、と私は思いました。
ところで1連と同じような連はこの曲にもうひとつあります。8連です。だから私は、1連と8連以降が現在のシーンで、それにはさまれている部分が回想シーンみたい、と思っています。

1つ2つと 星が出てきた
この街 あの空 見えないけど
君との想い 繋げた星は
変わらないよ どこにいても 見えるだろう
あの日のように

8連を引用してみました。1連と少し似ているけれど、1連には書いてないことがたくさん書いてあります。ふたりはいまは離ればなれであること、でも思いはまだ途切れていないこと、などです。
このあと、1番や2番とほとんど同じサビがすぐに続きます。そして最後の連、

ああ 君が好き 君が好き
あの日見上げた星を今日も
夕焼け色の中 見つけたよ
どうしようもないくらい
こみ上げるオレンジ

という部分まで一直線です。ずっと昔の思い出を歌っていたはずの曲なのに、この曲の最後に至っては、昔の思い出の部分よりもずっと熱っぽくて鮮やかで、強い力に突き動かされているのを感じます。
最後の最後でこみ上げている「オレンジ」とは一体なんでしょうか。私は「オレンジ」は高校時代の好きな気持ち、だと思いました。いまはそれから長い時間が経って社会人になったし、ふたりは離ればなれで暮らしているし、それでも高校時代の衝動はいまもこみ上げるよ、っていう意志がこの部分にはこもっているのかな、と私は思いました。
この曲のタイトル『オレンジ』は、若い時代の恋の衝動のことだと思います。主人公は今は若いとは言えないけれど、それでも衝動はまだ胸の内にあるよ、っていう歌詞の世界なんでしょうね。ほら、やっぱり一筋縄の曲じゃなかった!



というわけで、GReeeeN『オレンジ』でした。いい曲♪
ぜんぜん関係ないのですが、この間カラオケに行きました。こんなダイアリーを書いている私は、みんなどういう曲に興味あるのか気にしています。そこで最近 歌われた曲の履歴を999件全部見てみました(←ヒマ)。そして私は結論づけたのです。いちばんよく歌われていたのは、『リンちゃんなう!』だと。
家に帰って調べたよ。みんなリンちゃん好きすぎ。
そんなボカロ好きなみなさんは、livetune feat.初音ミク『Tell Your World』家の裏にマンボウが死んでるP feat.GUMI『クワガタにチョップしたらタイムスリップした』もお楽しみください♪(番宣)リンちゃんじゃないけど。
https://itunes.apple.com/jp/album/orenji/id516533480?i=516533482&uo=4&at=10lrtS
↑クリックするとサビの続きも聴けます。いいとこで終わってるのもったいない…。
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