5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

TOKIO『花唄』

僕の正体。君の正体。
こんばんは。
今回はTOKIO『花唄』を取り上げます。
花唄

嗚呼〜花が咲く 理由もないけど
肩落とす僕の上 凛と微笑む
やたら咲き誇る エラクもないけど
泣きだしそうな僕のために 舞う花吹雪

冒頭のサビはこんな歌詞。キレイに咲き誇る花と対照的に、主人公の「僕」はどこか暗いムードです。肩を落としたり、泣き出しそうだったりしています。でも、最後まで歌詞に目を通してみても、主人公がこんなにがっかりしていることの理由は、ストレートには書いてありません。
そしてそれとは不釣り合いな、とっても晴れやかな曲調。晴れやかなエンディング。
いったいどうして? そして主人公の気持ちはどんななの?
ふたつの対照的な特徴は、どんな風に両立するのかなぁ。これからそれについて、考えていきたいと思います。じっくり考えたい方は「続きを読む」の前にちょっと考えてみてください!
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND15272/index.html
構成はこちら→サビ-A-サビ-A-サビ-C-サビ-サビ

「僕」とは、実は…

この曲、後半に「満開の桜木」が出てくるので、「花」は桜の花であることは読み進めれば分かります。主人公は泣き出しそうになっているわけですが、あれ。そういえば。
桜×涙がコラボする曲ってけっこうあるはず。
私がいままで読んだ曲だけでも、AKB48『GIVE ME FIVE!』とかたむらぱん『ちゃりんこ』…って具合にいくつか思いつきます。今回も同じ感じ?
…なんて考えてみましたが、でも『GIVE ME FIVE!』『ちゃりんこ』の「涙」は、卒業に伴うお別れの涙だったりしました。TOKIO『花唄』はそういうモチーフないみたいですし、やっぱり少し不思議な感じがします。変なの。謎な涙。謎な晴れ晴れしさ。私は最初、投げ出しそうになってしまいました。最後はちゃんと筋の通る読み方ができてよかったです。
さて、私なりの結論を書きましょう。この曲は、罪人が逮捕される曲かな、と私は思いました。一番のきっかけになったのは、2番のAメロです。

常識という正義のせいで
君の悩みひとつ救えないままだ
間違ってても罪だと知っても
見失わずにいよう本当の願い事

2番のAメロを引用してみました。ここの部分だけ、歌詞の雰囲気がほかの部分とは違っています。これ以外のところは花や鳥や風なんかを引き合いに出して、主人公の身近なものごとを自分と対比させて歌っているように見えます。でも2番のAメロだけはちょっと違う感じ。「常識」「正義」といった抽象的な単語が急に多く並ぶようになります。なんといっても私が引っかかったのは「罪だと知っても」という部分。これってもしかして、主人公が犯罪を犯してしまったってことではないかな、と思ったのです。
この部分だけでははっきりとは分かりませんが、この「罪」は、主人公が「君」のことを思って犯してしまったものであることも想像できます。それは相手のことを思えば罪でもなんでもないように思えます。でも「常識という正義」に照らせば本当はとがめられるようなことであることも、きっと主人公は自覚しているのでしょう。
そう思うと、いろんなシーンがすごくしっくり来ます。

嗚呼〜花が咲く 理由もないけど
肩落とす僕の上 凛と微笑む
やたら咲き誇る エラクもないけど
泣きだしそうな僕のために 舞う花吹雪

1連を再び引用してみました。「肩落とす」みたいな言い回し、卒業とかに伴う涙とは何となくイメージが合わないってところはすでに触れました。でもこれが、捕まってしまったことへの落胆だと捉えてみたらすごくしっくり来ます。
この歌詞は曲の冒頭に来るわけなので、歌詞を見ている私たちからしてみたら、主人公がいきなりどうして肩を落としているのかよく分かりません。でも読み進めてみて、あとになって、あーっ!って気がつくような仕掛けになっているのですね。

痩せた時代の鏡にうつる
カサつく唇のそいつが僕なら
キスしただけで傷つけるんだろ
優しすぎる君の唇と微笑を

続く1番のAメロを引用してみました。主人公が罪人で「君」がその恋人だとしましょう。そしたら「君」はその日から罪人の恋人になります。
「キス」は比喩です。主人公は罪人。その主人公に少し触れるだけですぐ「犯罪者の恋人」呼ばわりされてしまうだろう「君」に思いを馳せているシーンだと読み取れます。

僕らがいる 意味は奪えない
そのままでも これからも ここからでも
そして歩き出す 迷ってもいいさ
果てしなき道のド真ん中で 明日を信じる

「僕らがいる 意味は奪えない」という部分にも意味が見いだせます。主人公からしてみれば、警察は自分自身の存在を奪う敵役です。逮捕されてしまえば、シャバでの「君」との生活は警察に奪われてしまうでしょう。でも主人公は警察にこう突きつけるのです。お前は俺たちの表面的には存在を奪うけれど、俺たちの“存在する意味”までは奪えないのだぜ、と。

「君」とは、実は…

さて、主人公は捕まってしまったみたいです。彼はここから、どういう行動に出るのでしょう? 逃走? 黙秘? それとも自白?
主人公は、2番のAメロにもある通り「本当の願い事」を信念にして生きています。つまり「君」の悩みを救うことが、この主人公の行動の指針になっているということです。それに照らして考えると、主人公はこのあとの行動もだいたい見通しがつきます。
この曲は後半に進むにつれて少しずつ未来志向になっていきます。とりわけ私が注目したのは、Cメロの部分。

無口でも さあ伝えよう 満開の桜木が はげましてるから

「さあ伝えよう」です。ここは、主人公から警察に「伝えよう」というシーンでしょう。つまり主人公が選んだ道は、自白です。きっと自白して、最短距離でまた「君」のもとへと戻る道を選んだのでしょう。

La〜lalalalala…
泣き出しそうな僕のために 舞う花吹雪
そして今君に心込めて 唄をうたおう

さて、最後の1連です。
みてみて!
「歌う」は、警察用語で自白を意味するんだよ!
さっきの「さあ伝えよう」と「唄をうたおう」は、どちらも自白のことと捉えればとても意味がすっきりします。でしょ? さすが私です。最後までキレイに読めました。これにて一件落着♪


…ん?


君に心込めて 唄をうたおう」って、あれ、変かな? 自白の相手は警察のはずなのにな…。
ここまで思いいたって、私はもうひとつ、大事なことに気付きました。主人公が罪人だっていう設定だけ気付いて満足していた私は、「君」のことをただの恋人かなんかだろうと見くびっていたようです。
「君」の本職は、警察官です。だとしたらどうでしょう?
最後の1行「そして今君に心込めて 唄をうたおう」はとてもすっきりくる結末に変わります。「僕」は、恋人でもあり警察官でもある「君」に、罪を告白するシーンになります。そうだとしたら主人公は「肩落とす」ような気持ちにもなるし「泣き出しそう」でもあるし「無力」も感じるけれど、でも「君」のことを考えれば「さあ伝えよう」という気持ちにもなるし「歩き出す」ことで「明日を信じる」こともできるのでしょう。

痩せた時代の鏡にうつる
カサつく唇のそいつが僕なら
キスしただけで傷つけるんだろ
優しすぎる君の唇と微笑を

1番のAメロ、こんなシーンがありましたよね。私は完全にスルーしてしまっていましたが、「優しすぎる君」がいまになってはっきりと引き立ってきます。「君」はたぶん、主人公の罪を薄々感じていながら、それを言い立てたりはせずにいたのではないでしょうか。主人公が自首したかたちになれば、それだけで減刑の可能性があるはずです。「君」はそれに期待してくれていたのでしょう。だから「優しすぎ」なのです。

常識という正義のせいで
君の悩みひとつ救えないままだ

2番のAメロにはこんなシーンがありました。これも同様です。「君の悩み」の内容についてここまで私はあまり考えてきませんでしたが、もうわかります。恋人でもあり犯罪者でもある主人公の罪をどう考えたらいいのか、が悩みだったのではないでしょうか。「君」が主人公の恋人モードだったら、いっしょに隠れて生きるのもアリです*1。でも「君」が警察官モードだったら、罪は暴かれるべきです。主人公はそれを察したのでしょう。
そして主人公は「君」を思って、明日を信じて、少しの間は離ればなれになるけれど、罪を償う道を選んだのです。



というわけで、TOKIO『花唄』でした。
そういえば私はタイトルにまで思いを馳せていませんでしたが、私の読みと符合させるならアレと関係するのかもしれません。Wikipediaの説明がとってもわかりやすくてよかったです♪
ところで。
今回の曲に関しては、ちょっとそそのかされた(←ぇ)のもありまして、人力検索はてなにて質問を立てさせていただきました。
【歌詞読み・ナゾ解き】ある歌について3人が話をしています。
↑コレです。
回答してくださったみなさん、どうもありがとうございました。これが私なりの『花唄』読みでした。[asin:B000086F7G:detail]
次回予告:次回はレミオロメン『Sakura』を取り上げたいと思います。今年も3月9日号やりますー。花が君を包んで咲く? なにそれどゆイミ?

*1:社会的にはアリじゃないですケド