時間のリボンに作る結び目
こんにちは。今回は予告した通り、AKB48『GIVE ME FIVE!』を取り上げたいと思います。AKB48を読んでみるのは『10年桜』以来になります。桜の時期だけAKBって感じの私です。

この曲とってもいいですねー♪(しばし聴き入る自分…+゜*。♪:゜+(人*´∀`)+゜:。♪*゜+)
…さて。タイトルの『GIVE ME FIVE!』。歌詞を引用するなら「ハイタッチしよう」って意味があるそうです。FIVEが5なので、5本指の手を示すのですね。
私はよく知りませんでしたが、AKBは毎年、桜の時期にシングルを出すのが恒例になっているみたい。ユ〜カのいろいろブログ♥によると、とのこと。私みたいなにわかには勉強になります。『桜の花びらたち2008』はカウントされないのかな…。よくわかんないけど。
あと、桜はふつう五弁花で捉えられるものなので、タイトルのFIVEは暗に桜を示しているのかな?とも思いました。FIVEのことだけで、とても多面的な意味があるのかもしれません。
さて、では歌詞を読んでいきましょう。AKB48“今年の”桜ソング、いったいどんな歌詞なのでしょうか。
歌詞はこちら→http://www.uta-net.com/song/125628/
構成はこちら→A-B-サビ-A-B-サビ-間奏-サビ
未来には、つながらない
この曲は、未来にはつながらない歌詞です。
桜の歌が街に流れ
あっと言う間だった別れの日
校舎の壁のその片隅
みんなでこっそり寄せ書きした
最初のAメロを引用しました。ここから明らかに分かるように、この歌詞は卒業をテーマにしています。「別れの日」「校舎」「寄せ書き」この短い4行だけでもこんなに卒業をにおわすキーワードがあふれています。
ふつう、卒業の曲っていったら、別れてもまた会えるさ♪っていうメッセージを込めることが多いような印象を私は持っています。AKB48『10年桜』なら、
10年後に また会おう
この場所で待ってるよ
というメッセージがサビの一等地に来るし、Whiteberry『桜並木道』なら、
「ガンバルヨ!!」もっと大きくなって 君と会いたい!!
と、いつか大きくなったらまた君と会いたいというメッセージがサビに来ます。
ところが。
『GIVE ME FIVE!』には、未来の再会がありません。卒業の曲としては、とても特徴的だと思います。
友よ
思い出より
輝いてる
明日を信じよう
サビの部分を引用しました。明日が輝いているのは確かに明るい歌詞ですが、それにしても、輝かしい明日の世界に「友」の気配はありません。それどころか「思い出より」なんて言われてしまって、思い出そっちのけの様子。友情は過去の思い出といっしょに切り捨てられてしまうのでしょうか。
また すぐに会える
だから 今は
ハイタッチしよう
サビの終わりも引用しましたが同じ調子。「また すぐに会える」なんて、いかにもオトナがコドモをだますときに使うような易い言い訳に聞こえちゃいます。 再会を描くにはこの描写じゃあまりにも雑だし、この歌詞自体が、再会を描く気はないみたいな…。
どうも未来には、つながらないようなのです。
現在、つながっている。
でも代わりにこの曲でつながっているものがあります。それは、現在です。とても象徴的なのは2番のAメロです。
何枚 写真を撮ってみても
大事だったものは残せない
ケンカして口きいてなかった
あいつとなぜか肩を組んでた
この4行は、前半の2行と後半の2行に分かれています。まずは前半から考えてみましょう。キーワードは、写真です。
写真って、現在の思い出を未来に残すためのものです。写真が残れば、それは未来へとつながるよりどころになるといえます。
でもここでは「何枚 写真を撮ってみても/大事だったものは残せない」という歌詞になっています。写真は役に立ちません。写真をもってしてもやっぱり、未来にはつながらないという歌詞全体の雰囲気は崩れないのかな…。
ただし、そのあとに続く部分はとっても注目に値します。「ケンカして口きいてなかった/あいつとなぜか肩を組んでた」なんて歌詞。
肩を組んでいるのは現在です。「あいつ」と、こんなに近くでつながっていられています。物理的な距離の近さは、心理的な距離の近さでもあるでしょう。「仲直りをした」と歌うわけでもないし、「友だちになった」と歌うわけでもないけれど、でもそんな風に、気持ちがとても近くに戻ったことは、このエピソードを見るだけでとてもよく伝わってきます。写真じゃつながれないけれど、リアルタイムでならつながっていられるんですね!
でもそのつながりは、写真には残らないし、未来にも生き続けるかは、分からないのです。
一生の親友だ
忘れるなよ
ハイタッチしよう
現在ならつながっている、その一番象徴的な部分は、なんといってもタイトルにも通じる「ハイタッチ」です。
WIkipediaによると、ハイタッチは「2人が同時に頭の高さで互いの手のひらを平手打ちをするような動作」のことです。大事なのは「同時に」ってところ。
ハイタッチを上手にするためには、手の位置をきちんと合わせるのが大事だし、互いの力がつり合うのが大事です。つまり相手と息が合うのが大事。『GIVE ME FIVE!』にも、そういう要素が隠れているように思います。ハイタッチって、現在をつなげる、象徴的なやり方なのかなと私は感じたのでした。
どうしてハイタッチで現在をつないでいたいのでしょうか。それはきっと、未来が不確実だからです。
さっきの章でも考えてきたように、この曲は未来をとても不確実なものと捉えています。もちろん離ればなれになって、再会したい気持ちはあります。ありますが、でもできるかは分かりません。だからこそ、いっしょにいられるいまがとても大事なのです。「一生の親友だ」って思うし、口にするし、そう信じているけれど、でも忘れてしまいそうにもなります。だから「忘れるなよ」なんて添えないといけないのです。
そしていっしょにいられる現在を結びつけるのがハイタッチです。これからそれぞれの道へ進んでいくけれど、その前に結び目を作っておこうね、という試みの表れがハイタッチなんだろうな、と私は思いました。時間のリボンに、結び目をつけておきたいのです。一瞬で弾けちゃうし、どうせ写真には残らないけれど、でも確かな結び目になるような。
この曲の「ハイタッチ」には、そういう意味が込められているんだろうな、と私は歌詞を読んで思ったのでした。
というわけで、AKB48『GIVE ME FIVE!』でした。
実は私は「写真には残らない」的なメッセージがこもった曲がなぜか大好きです。写真に残らないことを歌った曲ってほかにもいくつかありますよね。いずれ絶対に取り上げる機会があると思います! それはまた、そのときに。
ではー。 ↑クリックすると2番のAメロのちょっとまで聴けます♪
2017/01/28少し書き換えました。