朝と「きみ」の裏表
こんにちは。何年も日の出なんて見ていないなぁ。[asin:B004GJ34JK:image]
さて今回は、ねごと『カロン』を取り上げます。
何度夢をくぐったらきみに会えるの
いま いま 涙の国を越えて
確かなものはなにもここにはないけど
っていう部分がauのLISMOのCMで使われているのをご存知の方も大勢いらっしゃるはず。あれを見て、ぜったいにこの歌詞ちゃんと読んでみなきゃ!って思った私は、ちゃんと筋道を立てるまでに、えらく時間がかかったのでした。てかもういまは夏の曲に変わっているし。
いろいろ難しいところはありましたが、夜と朝の二項対立を手がかりに読み解くことにしてみました☆
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND106988/index.html
構成はこちら→A-B-サビ-A-B-(間奏)-サビサビ-アウトロ
夜から朝へ
この歌詞の冒頭を引用してみましょう。
たったひとつの星が空から落ちて
このまま夜に溶けてしまいそうだった
もちろん、時間は夜ですよね。
では、この歌詞の最後はどうでしょう?
太陽が夢を染めて 朝になっていた 朝になっていた
時間は、朝になっていました。
つまりこの曲は、夜から朝へと向かう曲です。いままででいったらBUMP OF CHICKEN『オンリーロンリーグローリー』と同じ、物語型の歌詞といえそうな今回の曲、夜と朝の二項対立の綱引きが、いろんなところに感じることができます。
たったひとつの星が空から落ちて
このまま夜に溶けてしまいそうだった
例えば、冒頭には「たったひとつの星」が出てきます。1番のその後の歌詞には、ほかに星は出てきませんから「たったひとつの星」は月のことかな?と私は思いました。
太陽が夢を染めて 朝になっていた 朝になっていた
一方で、最後の連に出てくるのは太陽です。月と太陽は、もちろん呼応するひとつのペアだといえそうですね。
さらに別のところ。最初の1行は「星が空に溶けてしまいそう」と歌われていました。最後の1行は「太陽が夢を染める」と歌われていますね。
星が溶けるほうの空は夜空ですから、それは眠りの世界のもの。とすれば、この夜空は夢と同じようなものかもしれません。光の強さに関する記述も呼応しています。強い順に並べるなら、
太陽>夢=空>星
ところで、この曲の冒頭では状況は夜で、歌い手はたったひとりです。そして1番のサビで、
何度夢をくぐったらきみに会えるの
と歌っています。つまり、きみには会えていないってことですよね。
じゃあ、もし仮に夜が明けて、いろんな呼応する関係がひっくり返るとしたらどうでしょう? ひとりぼっちの歌い手は、きみに会えたり…
しそうですよね☆
歌い手がきみに会えたかどうかは、この歌詞には直接書いてはありません。でも、その辺はすごく気になるところ。
最後に、表にまとめておきましょう。
1番 | 2番 | |
---|---|---|
夜 | 時間 | 朝 |
月 | 天体 | 太陽 |
星が夜に溶けてしまいそう | 空との関係 | 太陽が夢を染める |
ひとり | 歌い手の境遇 | ? |
当たり前なうたへ
繰り返し引用していますが、もう一度最初の連を見てみます。
たったひとつの星が空から落ちて
このまま夜に溶けてしまいそうだった
たったひとり世界で最後に起きているような
音もしない長い夜だった
この曲は、最初ひとりぼっちです。歌い手はたったひとりで、星もたったひとつ。歌い手が孤独な自分を星に重ね合わせて考えているのは明らかですね。
で、2番にも呼応する連があります。でも、歌詞の内容は大きく異なっています。
たったひとつのうそと
たったひとつの約束を
同じように守れたら
もちろん字面はさっきと同じ「たったひとつ」。でもその意味するところは圧倒的に違います。1番の「たったひとつ」は孤独でした。でも2番の「たったひとつ」はそれぞれ無二って感じ。そして、ふたつの「たったひとつ」を大事にしているというところが1番と大きく違いますね。
2番は、1番とはもう違います。同じ歌詞を使っているけれど、歌い手は、もう孤独ではないのです。
そのきっかけは、1番の最後、サビの辺りから見いだすことができるかもしれません。
近くて遠い月が きみみたいだな
この気持ちを信じたら会えるのかな
サビの最後で歌い手は、こんな風に予感めいた手がかりを歌っています。
さっきの連でまとめてみた表を思い返してみましょう。
1番 | 2番 | |
---|---|---|
夜 | 時間 | 朝 |
月 | 天体 | 太陽 |
星が夜に溶けてしまいそう | 空との関係 | 太陽が夢を染める |
ひとり | 歌い手の境遇 | ? |
1番は月にひもづけられていて、ひとりにひもづけられていました。「ひとり」っていうのは歌い手自身のことですから、ここでいう歌い手は月と重ねて考えることができるのだろうと思います。
さて、
近くて遠い月が きみみたいだな
ということは、この歌詞は、こういう風に読み替えることができます。
私は、きみみたいだな、と。自分たちは似ている、ということに、歌い手は途中で気づいたのです。
だから2番ではもう歌い手は、はだしのまま飛び出たベランダで、果てない空に両手を伸ばしたりはもうしません。
確かなものはなにもここにはないけど
当たり前な愛のうた 歌って
でこぼこな胸の奥 あふれそうだよ
ずっと星とか、空とか、夢とか、涙の国とか、そういう遠くて不確かなものばかりに思いを馳せていた歌い手はもういません。でも代わりに見つけたのは「当たり前な愛のうた」です。「でこぼこな胸」なんか歌詞に出てきたりして、歌い手の見ているものが自分のすぐ目の前の物へと移動したのは明らかです。はるかな遠くに、「確かなもの」などなかったのです。
1番のサビの最後は、
この気持ちを信じたら会えるのかな
でした。それが2番の最後は、
いま いま いま信じたい すべてを
に変わります。「信じたら」っていう仮定の話が「信じたい」という意志の話に変化しています。
「信じたら会えるのかな」という予感で、1番は終わっていました。2番はどうでしょう?
太陽が夢を染めて 朝になっていた 朝になっていた
いままでまったく出てこなかった「太陽」や「朝」という単語が出てきて、この曲は締めくくられてしまいます。でもそこに潜む予感は、もちろんちゃんと感じることができますよね☆ 歌い手は、きみに会うことができたんだと思います。
つながリンク
さて、前回 取り上げた曲と比較してみましょう。前回は、GLAY『BELOVED』を取り上げました。今回のねごと『カロン』との共通点は、夢です。
GLAY『BELOVED』には、サビの最後に夢が出てきます。
やがて来る それぞれの交差点を迷いの中 立ち止まるけど
それでも 人はまた歩き出す
巡り会う恋心 どんな時も自分らしく生きてゆくのに
あなたがそばにいてくれたらAH 夢から覚めた これからもあなたを愛してる
この曲では、夢→愛、という大きい移行を感じることができます。愛はこの曲では木立にたとえられるように確固たる存在です。とすれば夢はまさにその逆。夢はふわふわして頼りなくて、一夏の恋のように当てにならない存在です。
では、ねごと『カロン』ではどうでしょうか?
何度夢をくぐったらきみに会えるの
とサビに出てくるこの歌詞ですが、最後の最後は、
太陽が夢を染めて 朝になっていた 朝になっていた
と歌われています。
歌詞の初めのうちはずっと夜の世界です。「何度夢をくぐったら」は、眠るときに見る夢のことでもあるでしょう。それをたくさんくぐりながら、きみに会える日を探しているのです。
そして最後の最後、太陽が夢を染めて、朝を迎えます。ずっと求めていたものはここにあるんだろうな、と私は歌詞を読んで思いました。つまり、ずっと夢にひたっていたけれど、求めていたものは夢を染め上げてしまうぐらいに強い存在だった、っていう感じの構図のように見えます。
『カロン』では、夢はきみに会えない世界を表しているみたいでした。
さて、次回はZONEの新曲『約束〜August,10years later〜』を取り上げたいと思います。とはいっても、これを執筆している現在、私はまだ歌詞の全文を見たことがない状態です(汗)。大丈夫かな。
私はもちろん、この文章を書くにあたっては取り上げる歌詞を何度も読み返します。何度も読み返したあとで、やっぱり難しくて読み切れないからこの歌詞を取り上げるのはやめよう、って判断することもしばしばあります。というか、1つの記事を書くにあたって、だいたい2つか3つの歌詞を読んでいます。こんな風に歌詞を見ないまま決め打ちで次の歌詞を選んでしまうのは初めてなのです。
でも、できれば読んでおきたいんですよね。だってせっかく今年の2月にZONE『secret base〜君がくれたもの〜』をきちんと一通り読んだんですから。今回の新曲はこの曲のアンサーソングだってことですから、きっとあの早まった読みが今さら活きるはず! そういう予感に気づいてしまったら、もう、取り上げずにはいられないのです。楽しみー。
https://itunes.apple.com/jp/album/karon/id570084771?i=570084773&uo=4&at=10lrtS
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