5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

RCサクセション『雨あがりの夜空に』

-効かない自己暗示-
こんにちは。今回は更新が遅くなってしまってすみません…。
EPLP
さて、今回は『雨あがりの夜空に』を取り上げます。私はたぶんRCサクセションの曲はこれしか知らないので、自分的にはこれが代表曲ってことになってるんですが、実際のところはどうなんだろう…。よくわからない(>_<)o
ところで、Wikipediaには、「下ネタとも取れる歌詞」って書いてありますけど、Wikipedia的な読みをしても私つまんないので、今回は下ネタ完全にスルーでいきますね☆ ネットでさらっと見てみたら「下ネタじゃね♪」って感じでテンション上がってるとこはほかにもあるみたいなので、そちらをどーぞ。私はもっと、明らかに下ネタじゃない曲をエロく読みたい♪って思ってるので、それはまた別の機会に☆
歌詞はこちら→http://www.uta-net.com/user/phplib/view_0.php?ID=365
構成はこちら→A-A-B-A-B-A-B

逃げ出すAメロ

この曲、AメロとBメロでかなりはっきり違う世界を描いています。Aメロは「おまえ」のことを、Bメロは天気のことをそれぞれ歌っています。見てみればわかると思いますので、Aメロからやってみますね。
Aメロでは「おまえ」のことを取り上げています。

この雨にやられてエンジンいかれちまった
俺らのポンコツとうとうつぶれちまった

っていうネガティブな状況の描写から始まるこの曲、「俺らのポンコツ」を親しみを込めて「おまえ」と呼んでいますね。エンジンがついてる「ポンコツ」ってことは、クルマかな? バイクかな?といろいろと想像が膨らみます。
そういえばフランス語では、愛車とかバイクとかは女性名詞にするんだって聴いたことあります。ちゃんと根拠は挙げられませんけど、このブログとかにはそういう言及があります♪ 簡単にいうと、フランス語ではモノをぜんぶ男のコと女のコにジャンル分けするのですよ。さっきのURLによると太陽が男性で月が女性、みたいな。それによると、クルマもバイクも女性として登場するんですって、文法上。なんかあれですよね、下ネタ的な解釈とどことなく符合しますね。…って、あれ、あたし自分で下ネタの話はしないんじゃなかったっけ?(汗)
そんなことはともかく、1連ではそんな「おまえ」について、「いかれちまった」「つぶれちまった」と、すごくストレートな表現で、ネガティブな状況を表現しています。
続く2連もそんな感じ。

そりゃあ ひどい乗り方をした事もあった
だけどそんな時にもおまえはシッカリ

と、具体的な事例を挙げて「おまえ」の昔の話をしています。「おまえ」がクルマだったとしてもバイクだったとしても、エンジンのトラブルだとすれば致命傷のはずです。動くか動かないか、存続の危機ですよね…。そんな状況について、ちゃんとまっすぐ向き合ってる感じを受けます。
なんて、どうして私がそんなことを言うかというと、そっからAメロの内容はちょっとずつ変異していくからです。続くAメロは4連になります。

こんなことはいつまでも長くは続かない
いい加減明日のこと考えた方がいい
どうしたんだHey Hey Baby
お前までそんな事言うの

ここ、「おまえ」の発言の内容についての言及にとどまっています。
さらに下って最後のAメロは6連。

おまえについているラジオ感度最高!
すぐにイイ音させてどこまでも飛んでく

って表現に変わります。ラジオはどうでもいいじゃん! エンジンは大丈夫なのっ?って心配になるじゃん。なりますよね? だんだん中心から遠ざかっていきます。肝心なところから逃げていくような印象を受けるのです。

晴れ渡るBメロ

で、Bメロはなんの話をしてるのかっていうと、

Oh どうぞ勝手に降ってくれ ポシャる迄
Woo… いつまで続くのか見せてもらうさ

Oh 雨あがりの夜空に輝く
Woo… 雲の切れ間にちりばめたダイヤモンド

Oh 雨あがりの夜空に輝く
Woo… ジンライムのようなお月様

Bメロ3つあるので、それぞれの連の前半を一気に3つ引用しました。もうわかりますよね。Bメロはぜんぶ天気のことを歌っています。しかも、天気は雨から曇りになり、曇りから晴れになります。
その上、描写の仕方がちょっとずつ変化していますよね。天気の描きかた、最初は視野の狭い感じで雨を描いているだけです。

Oh どうぞ勝手に降ってくれ ポシャる迄
Woo… いつまで続くのか見せてもらうさ

雨が降って「ポシャる」のは「おまえ」ですから、天気はあくまで身近な「おまえ」にまつわる描写でしかないわけです。
ところが、ふたつめのBメロになると、

Oh 雨あがりの夜空に輝く
Woo… 雲の切れ間にちりばめたダイヤモンド

こんな表現に変わります。歌い手は地上を見てただけなのに、いまや空を見上げるぐらいの余裕があるのです。でしょ?

Oh 雨あがりの夜空に輝く
Woo… ジンライムのようなお月様

最後のBメロになると表現もこんなにオリジナリティあふれる感じに。情景描写はどんどん詳細に、独創的になります。天気は晴れるし、気持ちは冷静になってます。
でも、気持ちが晴れることはありません。
最後まで、

こんな夜に おまえに乗れないなんて
こんな夜に 発車できないなんて

というフレーズは続いたままなのです。

曇り空の気持ち

っと、ここまで見てきたように、この曲は「おまえ」と「天気」が平行して描かれています。そして(ほぼ)交代でこのふたつのモチーフが登場してて、モチーフは両方ともちょっとずつ変化しています。でも、変化の方向は違っています。
この曲は、天気でいったら雨から始まっています。そして、雨によって「おまえ」はエンジンがいかれちゃっています。天気の悪さと、「おまえ」のコンディションの悪さが符合しているわけです。
で・も! その後、天気は回復します。「おまえ」のコンディションの悪さは符合してたわけですから、理屈で考えれば、天気がよくなれば「おまえ」もよくなるはず。私、小学生の時に読んだ物語とかってたいていそんな感じでしたよ? いろんないやなことがあっても、
「タカシの前には大空が広がっていた」
って感じで文章が終わっていたら、なぁんだタカシの気持ちもちゃんと晴れたんだ!って解釈して、私は安心して本を閉じることができたものです。
話が脱線しちゃいましたが、そんなわけで天気が回復すれば「おまえ」のコンディションも回復するはず。ところが、
回復しません。

どうしたんだHey Hey Baby

繰り返されるこのフレーズが、どんどん空回りして響いてきちゃいます。そしてBメロの印象に残るメロディ、

こんな夜に おまえに乗れないなんて
こんな夜に 発車できないなんて

に続くのです。
この曲が始まる前に思いを馳せると、雨が降る前、天気は晴れていたのだと思います。もちろん「おまえ」もいい調子。ところが「おまえ」の調子は悪くなってしまいます。雨のせいです。その後、天気は勝手に回復します。天気は昔のままです。でも、「おまえ」は昔のようには戻りません。このギャップが、この曲の切なさになって光っているんだな、って私は強く思います。ありますよね、こういうこと。どうしてこんなに条件が揃ってるのに、昔みたいに楽しくなれないんだろう…って気持ち。
表にするなら、

おまえ 天気
曲開始前 たぶんすごく快調 晴れ
1〜3連 いかれちまった
つぶれちまった
4〜5連 そんな(ネガティブな)事言う 曇り
6〜7連 ラジオ感度最高
(「おまえ」自身からは目をそらす)
晴れ

こんな感じ。タテに読み進めてもらえたらいいかなと思います。
さて、そんな状況に対して、歌い手は自己暗示みたいなやり方で、いろんなポジティブな状況をわざわざ口に出しています。
だってほら、

どうしたんだ Hey Hey Baby
バッテリーはビンビンだぜ
いつものようにキメて フッ飛ばそうぜ

こんな風に周りの状況を口にして、明るくひとつの連を締めくくろうとしているんですから。それは「おまえ」に語りかけるようでもあるし、自分自身を鼓舞しているようでもあります。
そもそも、この曲は

こんな夜に おまえに乗れないなんて
こんな夜に 発車できないなんて

ってトコでぐっと来ちゃう感じの流れなので、わざわざ天気を持ち出さなくてもいいはずなのです。「おまえ」のことだけ語ってたとしてもこんなステキなキラーフレーズがあるならもう大丈夫のはず。でも実際には歌詞全体のおよそ半分を使って、それとはぜんぜん違う話をしています。天気の話です。これもたぶん、自己暗示。
だってさっきも書きましたけど、天気の描写って歌い手の気持ちとシンクロしがちだと思うから。晴れてるよ!って状況をわざわざ口にすれば、歌い手の気持ちも晴れそうだし、「おまえ」も復活しそうだし、って思うじゃないですか。それを歌い手自身も期待しているんだと思います。
そして、それは成功しません。ほんとに胸をぎゅっとする曲だなぁって私、思うのです。

つながリンク

さて、では前回の曲、YUKI『COSMIC BOX』とつながってみましょう。前回の曲と今回の曲との共通点は、乗る。ふたつの曲で、乗るはどんな風に違うのか見てみます。
YUKI『COSMIC BOX』には、

公園の砂場から 大気圏突入用のロケットに乗って
誰かが残したシャベルを コックピットにして 還ろう 還ろう

サビの部分にこんな表現があります。ここに出てくる「乗る」はほんとにさらっとした、脇役的な意味しか与えられていないように思います。それよりもこの部分でいったら「還ろう」が、乗る意味や移動する意味を論理的にがっちり補強してくれる強い言葉なのでした。『COSMIC BOX』では、乗ることに対してぜんぜん深い意味を持たせていないようなイメージです。
一方で今回ここまで読んできた『雨あがりの夜空に』はどうでしょう?

いつものようにキメて フッ飛ばそうぜ

こんな夜に おまえに乗れないなんて
こんな夜に 発車できないなんて

と、引用したのは両方とも連の最後です。両方とも乗ることや、それをイメージさせる言葉で連が終わっています。そして、それっきりです。つまり、『雨あがりの夜空に』では乗ることそのものが目的なのです。
考えてみれば『COSMIC BOX』は作詞が女性で、『雨あがりの夜空に』は作詞が男性です。女性は乗るのを手段として考えてて、どっかに行ければいいと思っています。で、男性は乗ることそのものが楽しくて、別にどこに行くとかは問題じゃないと思っていたりします。あれ、なんか、私の身近のヒトを考えてもそんな一般論が通っちゃいそうな気がする…気のせい? ジェンダー的にNG?(汗)



というわけで、『雨あがりの夜空に』でした。
ところで歌ネットは誤植が多いっぽい気がしませんかっ?(汗)私、今回は曲のタイトル『雨あがりの夜空に』で通したんですけど、歌ネットでは『雨上がり〜』になってるんだよなぁって思って。でも今回はWikipediaとかうたまっぷとかでは『雨上がりの〜』になってるので、そっちに合わせました。でも個人的な決め手はGoogleのイメージ検索でした。Googleさんいつもありがとう☆
でもまだ残る問題が…。ほんとは作詞ってだれなのっ?(作詞・作曲も歌ネットうたまっぷで違うし…)
EPLP

EPLP

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