5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

THE BLUE HEARTS『情熱の薔薇』

-ぼんやりした悩みが晴れていくまで-
こんにちは。iPod買おうかなと思っている私です。しばらく前に壊れてからずっとそのままにしてた…(11/08/07現在)。
Bust Waste Hip
さて、今回はTHE BLUE HEARTS『情熱の薔薇』を取り上げたいと思います。このブログは始まってからこれまで20もの曲を取り上げてきたわけですが、同じアーティストの曲を2度取り上げるのは今回が初めてです! よければTHE BLUE HEARTS『1001のバイオリン』の記事もどうぞ。この曲は、少し前にearth music & ecologyのCMで宮崎あおいさんが「ヒマラヤほどーの♪」と歌っていたあの曲です。いまは、docomoのCM渡辺謙さんがギターかき鳴らしながら歌ってるのがこの曲。人気だなぁ。

答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方
涙はそこからやって来る 心のずっと奥の方

宮崎あおいさんが歌っていたのはこの部分。

情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう
花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方

docomoのCMで、渡辺謙さんと新井浩文さんが歌っていたのはこの部分。
なんか、ぜんぜん違う曲に見えますね。宮崎さんが歌ってる部分はつかみ所のないふわふわした歌詞だけど、渡辺さんが歌ってるほうはちょっと暑苦しさすらある感じ。どんな歌詞の世界かな? いっしょに追いかけていきましょう。
歌詞はこちら→http://www.uta-net.com/user/phplib/view_0.php?ID=2565
構成はこちら→AA-B-A-(B)-B

ぼんやり→はっきり

永遠なのか本当か 時の流れは続くのか
いつまで経っても変わらない そんな物あるだろうか

こんな風に始まるAメロ。私はさっきの悩みと、もっと大きなかたちでぶつからなければならないみたいです。つまり、歌詞につかみどころがなさすぎ…υ
試しにAメロの名詞だけ取り出してみるとはっきりします。名詞っていうのはしりとりに使える“モノの名前”のことですよ。


永遠 本当 時 流れ 物 物 事 今 全部 気持ち
…感動を覚えますね。だって、最初の連に出てくる名詞は、ひとつも“手で触れられるものがない”んですもの。ふつうはわざわざ選ばないとこんな風な単語ばかり集まらないと思います。つまり、このつかみどころのなさは狙ってやってるんだと思います。つかみどころのない歌詞の世界を作ろうとしているんですね。
さて、最初の連はそんな感じでしたが、最後の連はどうでしょう。

情熱の真っ赤な薔薇を胸に 咲かせよう
花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方

うっわ。さっきとは段違い。また名詞を取り出してみますか。


情熱 薔薇 胸 花瓶 水 心 奥 方
びっくりしてね。最後の連に出てくるのは、“手で触れられる”名詞ばっかり! しかも、名詞の羅列も見比べてみてください。1連の名詞だけを取り出したリストは、正直、これだけ見ても何を言いたいのかいまいち把握できません。でも、最後の連の名詞のリストを見たら、まあ大ざっぱでも意味がなんとなく分かると思うのです。あ、花瓶に水を注ぐのね、花瓶には薔薇が咲いてるのね、ぐらいのストーリーはほら、単純な連想でつながってくるはず。
ここではもうほかの連の名詞をいちいち取り出したりしませんけど、なんならぜひ見てみてください(カンタンですし)。自分でやってみたらちゃんと気づくはず。この歌詞、手に取れる名詞が最初はほとんどなくて、後半になるにつれてそれがどんどん増えていくってことにね。

答え→問い?

答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方

Bメロの最初を引用してみました。ここまで来たときに、私は思ったのです。あれっ、「答え」ってなんだ? そもそも問いなんてあったっけ?
話の流れからして、問いはAメロにあるはず。

永遠なのか本当か 時の流れは続くのか
いつまで経っても変わらない そんな物あるだろうか

さっきも引用したAメロの最初です。ふつうに考えて、問いっぽいのはここしか見当たりません。これの答えが「心のずっと奥の方」からやってくるんでしょう。そんなことを念頭に置きながら、ちょっとこの問いを考えてみます。
ところが何度 読んでみても、この抽象的な問いは私の心にすとんと落ちてこないのでした。ふつう、「AなのかBなのか」って文章があったら、AとBとは反対の言葉が入りますよね。「一か八か」だってそうだし、「生きるべきか死ぬべきか」だってそう。
ってことは、ここでいう「本当」とは、「永遠」の反対だから、有限の時を表すはず。「時の流れは続くのか」という疑問文は、「永遠なのか本当か」という部分とだいたい同じ意味なんだろうなと予想しながら次の行へ進みます。
「いつまで経っても変わらない そんな物あるだろうか」って言われたら、私ならNOって答えます。こんなに短い曲の中でも、名詞の登場の仕方がこんなに変化するぐらい。この歌詞の世界でも、NOって答えるのがたぶん正解なんだと思います(自信ないけど)。
でも、それにしてはちょっと変です。だって、「答えはきっと奥の方」ですから、歌い手自身もきっと答えに気づいてるはずなのです。だからといって、「NOだぜ!」って高らかに歌い上げるわけでもないのです。正気に考えれば、せっかくの曲の冒頭で、この問いを歌うことにいまいち意味がないのです。
だとしたら? 正気じゃないのかも。
なんか、この問いって悩みごとみたいに見えるのです。そもそも悩みごとって実体がないからずぶずぶと悩んでしまいがちなもの。この問いだってぜんぜん手で触れる実体の感じがないですよね。そういうところが似ています。
具体的な悩みの内容ははっきりとは書かれていません。でも、永遠だと思っていたものが永遠ではなかった、ということに気づいてしまったような、そういう気配を歌詞の中に感じてしまいます。たとえば失恋とか。たとえば親しい存在との別れとか。

見てきた物や聞いた事 今まで覚えた全部
でたらめだったら面白い そんな気持ちわかるでしょう

これも同じ感じ。今の自分の回りにあるものごとを否定したいような、そういうネガティブな気配がありませんか? 前にTHE BLUE HEARTS『1001のバイオリン』で、

ミサイルほどのペンを片手に
おもしろい事をたくさんしたい

こんな歌詞に出会ったんでしたね。あのときの野方図な「おもしろい」と、比べて、今回『情熱の薔薇』に出てくる「面白い」がどことなく投げやりな感じに見えてきてしまうのは勘違いじゃないかも、って私は思ったのでした。

1つめのBメロ→2つめのBメロ

答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方
涙はそこからやって来る 心のずっと奥の方

そんな悩みごとの部分を抜けて出てくるBメロはこんな歌詞です。悩みごとの答えは自分の心の中にすでにあるみたい。とはいえ、それに気づいていながらも、なかなかすぐにすっきりと晴れ渡るところまではいかないみたい(まあ、だからこそ悩みごとなんですよね)。そういえば、知り合いのカウンセラーさんが言ってました。メンタル面の悩みごとを扱うカウンセラーって、実はクライアントにはほとんどアドバイスをすることはなくて、クライアントがすでに知っているはずの答えを引き出す手助けをするのが仕事なんですって。その話とも符合するように、歌い手の悩みは歌い手自身の中にすでに解決の糸口を持っているみたい。
ところで、2つめの(つまり最後の)Bメロはどんなでしたっけ?

情熱の真っ赤な薔薇を胸に 咲かせよう
花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方

再度引用してみました。歌い手の悩みは吹っ切れていること、もう明らかですね。この曲、悩みごとが晴れ渡っていく、物語を歌っているのです。
悩みの最中の歌詞と、解決を描いた歌詞。ぜんぜん違うように見えて、実はこの2つのBメロ、歌詞がそっくりです。それぞれの1行めの前半を見比べてみてください。それぞれの中で一番 重要そうな単語を抜き出してくるとどれになりますか? 私だったら、「答え」と「薔薇」をそれぞれ挙げてみたいです。同じように、1行めの後半は? 2行めも同じように前半と後半に分けたら? ってわけで、表を作ってみます。

1つめBメロ 部分 2つめBメロ
答え 1行め前半 薔薇
1行め後半
2行め前半
2行め後半

ちょ、見て見て! そっくりじゃん!
「心」と「胸」はほとんど同一の意味といってもいいし、「涙」と「水」がこのタイミングでキレイに符合して出てくるなんて、偶然にしてはできすぎです! Bメロは1つめと2つめできちんと対応関係を見せながら、私たちに悩みごとの解決を伝えてくれるのです。それにしても、どっちも「心のずっと奥の方」で終わるなんて。やっぱり、答えはすでに、曲の前半でわかっていたんですね。
とはいえ。同じ「心のずっと奥の方」でも、実はベクトルが反対だったってことに触れて、今日はおしまいにしましょう。1つめのBメロにおいては、「心のずっと奥の方」から涙がやってくる、という歌でしたよね。でも2つめのBメロでは、「心のずっと奥の方」水をあげましょう、って歌になっています。最初は答えの方からやってくる歌を歌っていたのです。最後には答えの方へと向かう歌に変わっていきます。

まとめ

さて、前回はGReeeeN『キセキ』を取り上げました。今回の歌詞との共通点は、「小さな幸せ」。どんな風に似ているんだろう? そしてどんな風に違うんだろう?
GReeeeN『キセキ』では、

日々の中で 小さな幸せ 見つけ重ね ゆっくり歩いた『軌跡』
僕らの出会いは大きな世界で 小さな出来事
巡り合えた それって『奇跡』

2番のBメロでこんな感じに「小さな幸せ」が出てきます。ここでは「小さな幸せ」、ふたりの日々を形づくっている大事な要素みたいな感じ。それをひとつひとつ取り上げたりはしないけれど、その積み重ねがふたりの『軌跡』になっていくのでしょう。「小さな」ってあたりに端的に表れています。
一方でTHE BLUE HEARTS『情熱の薔薇』では、

なるべく小さな幸せと なるべく小さな不幸せ
なるべくいっぱい集めよう そんな気持ち分かるでしょう

という2番のAメロに「小さな幸せ」が出てきます。「そんな気持ちわかるでしょう」という歌詞は1番のAメロにも出てきましたから、悩みの渦中の気持ちのほうにきっとリンクしているんでしょう。
だからこの部分は、歌い手の中で大きな存在だったなにかを喪失してしまって、幸せも不幸せもできるだけ小さいサイクルで生きていけたらいいのになあっていう気持ちの表れなのかな?とか私は考えちゃったのでした。



今回ははてなダイアリーの[[今週のお題]]が「今年の内にやっておきたいこと」なので、今回ちょびっと乗っかってみようと思います。今後ここで取り上げてみたい歌い手さんははどなたかな? と考えてみましたよ。その結果、

って感じになりました。しかしですね、もうばればれですが、このダイアリーは月に2度しか更新しませんので、いまからだとあと5回しかありません。つまり今年じゅうに全員はムリじゃん…υ まあ、気長に待ってください。いつか必ずぜんぶ取り上げてみせます☆
まあ、私のことなので次回はしれっとここに挙がってないかたを取り上げたりするんでしょうケドo

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