5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

私も君も太陽のように−『友達より大事な人』

こんにちは。
このお正月にURLを引っ越し、デザインを変えました。今年もよろしくお願いいたします。
さて、今日は剛力彩芽『友達より大事な人』を読んでみます。私は最初、この曲の歌詞はあまりきれいじゃないと思っていました。

ねえ 君はもう 友達じゃない
友達より 大事な人
秘密の涙はナシにしよう
いつまでも そばにいてねMy Friend
この曲のサビを引用しました。
1行めには「友達じゃない」と呼びかけがあるのに、4行めには「My Friend」と呼びかけがあります。どっちなんだよ!
こう思ったのはどうやら私だけじゃないらしく、
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こういう記事も見つかりました。でもずっと考えていったら、矛盾だと思ったのは私の勘違いでした。皮肉とかじゃなくて、この矛盾らしきものは、ちゃんと意味をなしている風に読めるなぁと思い至りました。
今回はそんなことを考えてみたいと思います。
友達より大事な人(通常盤)
歌詞(歌ネットへリンク)

「私」と「君」

この曲の歌詞の1行めは、

ねえ 君はもう 友達じゃない
と始まります。このブログには前にも何度か出ている否定文です。
とても逆説的ですが、「友達じゃない」なんて風に言えるのは、主人公と「君」が友達に近い関係のときだけです。
だれかが別のだれかに向かって「友達じゃない!」と言うシーンを想起してみます。すると、ある発見があります。だいたいそういう発言は(周りから見ると)友達関係にある人の間だけで聞かれる、ということです。ある程度友達っぽくないと「友達じゃない」って言葉は成立しません。
例えば、私の祖母は友達ではありません。でも、だからといって私が祖母に「おばあちゃんは友達じゃないよ!」なんて言っていいことにはなりません。文脈と発言が合っていないし、それはなんだか唐突で、不適切な発言です。
でも例えば、私が「友達が川で溺れてても、助けたりはしないと思う」と言ったとします。それを聞いた私の祖母が、残念そうな顔をしたとしましょう。私は慌ててこう言うことができます。「おばあちゃんは友達じゃないよ!」と。
さっきと同じ発言をしているのに、文脈によってはこの発言も不適切ではなくなります。今回の場合、友達だったら溺れていても助けないけれど、おばあちゃんは友達じゃない(から、おばあちゃんが溺れていたら助けてあげよう)、という括弧内の意味が透けて見えます。
否定文とはそういうものです。否定文は、肯定文の時点で意味があるようなことじゃないと発言に意味が沸いてきません。
『友達より大事な人』に戻りましょう。
1行めが「ねえ 君はもう 友達じゃない」となっていました。ということは、主人公が話しかけている相手は、少なくともある程度友達っぽい間柄の人だということです。
そんなこの歌詞の「君」って、私にとってどんな存在なのでしょうか?
「君」の描写を探してみると、1番のAメロにこんな部分が見つかります。
晴れた空見上げたら 少し会いたくなった
太陽が 君に似てるみたい
2番のAメロにはこんな部分も。
そっくりな好き嫌い 話のツボも趣味も
似すぎてて 鏡見てるみたい
1番も2番も、Aメロの同じ場所に「君」の描写があります。
1番には「太陽が 君に似てるみたい」とあるので、「君」≒「太陽」だと分かります。また、2番には「そっくりな好き嫌い」とあります。何と何が「そっくり」なのかはっきりとは書いていませんが、きっと「私」≒「君」ということなのでしょう。
つまり、

  • 「君」≒「太陽」…①
  • 「私」≒「君」 …②

となります。①、②より、

だと分かります。「君」とは「私」を映すものでもあります。同時に「君」は太陽にも似ているところがあります。
ここから分かることは、「私」は「太陽」に似ているということです。なんだかうぬぼれにも見えるかもしれませんが「私だって本当は太陽のような人でいられるはず!」という信念だと思うと、そんなに突飛なことでもないように思います。

「私」と「太陽」

太陽に似てるって、つまりどんな感じでしょうか。
Wikipediaには、こんな説明が出てきます。

象徴的に太陽は、朝を告げ、光を与え、活力の源であり、陽であり、プラスである。
太陽は月などとは違って常に“正面”を向いています。太陽は見えるところから全ての方位に向かって等しく光を放つし、そういう丸いものは普通、完全とか完璧とかを意味します(完璧の「璧」にも玉という意味があります)。
主人公にとって「君」は完璧だし、光と活力の源です。そして主人公である「私」も本来は太陽のように、光と活力に満ちあふれた存在のはずだと主人公は考えています。
ところが、実際はそういう風にはいきません。「秘密の涙」を流したりもするし「今日のミス」を起こしたりもします。そんなとき、主人公には「君」がいます。2番のAメロにはこうあります。
ホントの自分が 見えなくなったら 会いたくなるの
すぐに 教えてくれるから
主人公が自分らしくいられないのは「君」と離れ離れのときだけです。「涙」が「秘密の涙」なのは、主人公が「君」と離れ離れだからです。
なので対偶をとれば、主人公は「君」と会うことで、本当の自分を取り戻すことができます。
涙を笑顔に変える魔法 見つめ合えばかかる
「見つめ合え」るのは、主人公が「君」と、面と向かって顔を合わせているからです。顔を合わせているときなら、主人公は泣いたりしません。
今日のミスもいつか
笑い話に変わる
遠回りの旅は
想い出が増えていく
Cメロを引用しました。「今日のミス」というのは、つまりは主人公が自分らしくいられないということです。主人公が自分らしくいられなかったのは「君」とそばにいられなかったからです。そしてそれを笑い話にできるのは、ひとえに「君」がそばにいるからです。
ところで、きっとそれは「君」にしてみても同じです。「君」のほうだって、一人でいれば失敗もするし、自分らしくいられなくて涙を流すこともあるんだと思います。けれど「君」のほうには主人公という頼れる人がいます。こうして二人は鏡合わせになって、お互いを参照し合い、少しずつ違うお互いを見つめ合ったり、合わせ直したりしていくんだろうなぁと私は思います。二人にとってはこれが積み重なってだんだん「想い出」になっていくのでしょう。主人公にとって「君」が太陽であるように、「君」にとっても主人公は太陽です。みんな違ってみんな太陽なのですね。

「君」と「友達」…?

こんな風に考えていくと、私の冒頭の矛盾めいたなにかが霧消していくような感じがします。
主人公にとっては「君」がかけがえのない存在です。太陽がこの世に一つしかないように、「君」も代わりの利かない存在です。そういう存在を「親友」と呼べます。
でも主人公はそんな親友に「ねえ 君はもう 友達じゃない」と言い放ちます。「友達じゃない」のは、親友だからです。
とはいっても「君」はとまどうでしょう。普通は「友達じゃない」と言われたら、友達よりも重要度が低いのだと烙印を押された気持ちになるからです。自分にとっても代わりの利かない「太陽」が急に輝きを失うような衝撃が「君」を襲うでしょう。
主人公は、そんな「君」に対して、あらかじめ用意していた、続きの言葉を告げます。それがこの曲のタイトルでもある『友達より大事な人』というフレーズです。主人公は「君」をびっくりさせた上で、そのあとで本当に大切なことを続けて伝えようとしています。
主人公はきっと、親友とかいうのが恥ずかしいんだと思います。「ねえ 君はもう 友達じゃない」という1行めは強い呼びかけなのに、「友達より 大事な人」という2行めは文ではなく、ただの語です。こんな不安定な言い回しじゃ、「君」の側のとまどいは薄れることこそあれ、ぜんぜん消えはしないでしょう。だから主人公はだめ押しします。

いつまでも そばにいてねMy Friend
と。「いつまでも そばにいてね」というフレーズで「君」はやっと、ちょっと安心できるでしょう。「友達じゃない」のは親友だからであって、もっと関わりの薄い存在だと烙印を押されたわけではないのだ、って曲がりなりにも納得することができます。
でも本当は「My Friend」ではなくて、「友達だよ」って言っておいたほうが、いいような感じもします。日本語だし、伝わりもいいし、とまどいも解けると思うのに、主人公はそうしません。私が考えた理由は2つです。
ひとつは、恥ずかしいからです。
そしてもうひとつは、(伝わりづらいからあんま言いたくないけど)「友達より大事な人」だからです。
「君は友達だよ」って言えば、きっと言いたいことはだいたい伝わるでしょう。でも、主人公はそれじゃ嫌なのです。私にとって「君」は「友達」とか「親友」とかみたいに手あかのついたありふれた言葉じゃなくて、固有名詞でしか呼べないような、かけがえのない存在なんだよ、っていうメッセージこそ、主人公が本当に「君」に伝えたいことなんだろうなぁと私は思ったのでした。

というわけで、剛力彩芽『友達より大事な人』でした。
ところで、はてな今週のお題は「私の年末年始」とのことなので、少し振り返ってみました。
hacosatoとしては、ブログの引っ越しが大きなイベントでした。それに際して、記事の書き方もいままでと変えました。デザインはほとんどありもののままなので、これから手を加えていくところです。HTMLとかCSSとか、詳しくないので学んでいきたい!
それから、テキストマイニングのお勉強をしています。いずれこのブログで、テキストマイニングを活用していくのを目標にしています☆
という感じ。いつまで飽きずに続けられるか分かりませんが(!)、今年もよろしくお願いします。

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