5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

全身雨に濡れてしまうような気持ち - Eve『ドラマツルギー』

このツイートを読んだのでした。

このツイートにはリプライがたくさんついていて、「好い記事」「一見の価値あり」「読む機会を与えられて良かった」と、たくさんのひとが言っています。

わたしは、単純に全身雨に濡れてしまったような陰鬱な気持ちになりました。雨に濡れるのは、いやです。

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帰りの会を操っているのはだれ?

帰りの会

「今日の困ったこと」というコーナーがこの帰りの会に導入された。
毎日、誰かが手をあげて、今日の困ったことを発表することになっていた。そこで誰が悪いのかを論じ合い、謝ってもらおう、というものだった。

女子に糾弾される側から見ると、たぶんこんな気持ちだと思う。

頭でわかっては嘆いた
転がってく様子を嗤った
寂しいとか愛とかわかんない
人間の形は投げだしたんだ

廊下を走ってはいけないというルールがあるのはわかる。

そして確かに自分は廊下を走った、と思う。

だけどどうして、それによって自分は謝らないといけないんだろう。

抱えきれない 言葉だらけの存在証明を

だれに対して、なんのかどで、どうやって謝ればいいんだろう。

「山岡君」は、そういう風に思わされるように、誘導されています。

そういうふうに、自分で演じているし、演じされられています。

それは『ドラマツルギー』の力です。

この小さな劇場から出らんない
気づいたら最後逃げ出したい
僕ら全員演じていたんだ
エンドロールに向かってゆくんだ

「小さな劇場」とは、この教室の「帰りの会」のことです。

「エンドロール」とは放課後のこと。「僕ら」はそれに向かって、描かれた役割をなぞっています。

さあ皆必死に役を演じて傍観者なんていないのさ

“ワタシ”なんてないの
どこにだって居ないよ
ずっと僕は 何者にもなれないで

ある女子が言う一人称としての“ワタシ”は、その女子の内面を指すものではありません。

その女子がクラスの中で置かれた立場を指すだけです。

この「小さな劇場」の中で、自分だけのアイデンティティを持つ者はいません。

みんな「何者にもなれない」ままです。

僕ら今 さあさあ 喰らいあって
延長戦 サレンダーして
メーデー 淡い愛想
垂れ流し 言の愛憎

ドラマチックな展開をどっか期待してんだろう

「喰らいあって」というのは議論にならない議論をすること、「サレンダーして」というのはそれを(多数決などといった)雑な方法で切り上げることです。

君も YES YES 息を呑んで
采配は そこにあんだ
ヘッドショット 騒ぐ想いも
その心 撃ち抜いて さあ

「采配は そこにあんだ」と歌われます。

各人のアイデンティティがなくても「采配」があれば、物語は前に進みます。

この教室を支配しているのは「采配」です。

まだ見ぬ糸を引いて 黒幕のお出ましさ
その目に映るのは

そしてその「采配」の糸を引いているのは「黒幕」です。

これがこの曲の核心に位置しています。

「黒幕」とは先生のことでしょうか。

わたしはそうは思いません。先生も先生の「“ワタシ”なんてない」からです。

先生は、この教室の中で、別の「役を演じて」いるのです。

活発な議論に火をつける、というキャラクター。

では「黒幕」の正体は何なのでしょう。

わたしは『ドラマツルギー』こそがその正体なのだと思っています。

この教室の構成員のそれぞれに、役を演じさせているのは、ひとえにドラマツルギーだから。

2番になって、場面が変わって、今度は別の人が「ドラマツルギー」によってスケープゴートになります。

触れたら壊れてしまった

きっかけは、ドッジボールのボールが当たってしまった、みたいなささいなものだったかもしれないのです。

間違ってく様子を黙った

帰りの会が間違っていくのがだんだんわかっていっても、みんな黙ってその流れに従うしかありません。

なぜなら、全員「“ワタシ”なんてない」からです。

僕ら全員無垢でありました

だれかが悪者であるわけではありません。

だれも悪くないのです。

でも、誰かが悪者というキャラクターを身にまとわなければなりません。

それが『ドラマツルギー』の思し召しだからです。

いつのまにやら怪物になったんだ

だれも悪くないのに、いつの間にか「正しさ」を求める議論の流れは、暴走の果てに「怪物」になってしまいます。

隠してきた真実はどこにもない
嗤ってきた奴らに居場所はない
思い出してぽいってして感情はない
流した涙 理由なんてない

その議論には「真実」も「居場所」も「感情」も「理由」もありません。

僕ら今 さあさあ 喰らいあって
延長戦 サレンダーして
メーデー 淡い愛想
垂れ流し 言の愛憎

ドラマチックな展開をどっか期待してんだろう

ただ同じ展開を繰り返すだけ。

「ドラマチックな展開」は期待するだけ。

叶うことはないのです。

君も YES YES 息を呑んで
采配は そこにあんだ
ヘッドショット 騒ぐ想いも
その心 撃ち抜いて さあ
まだ見ぬ糸を引いて 黒幕のお出ましさ

“その目に映るのは”


Eve『ドラマツルギー』でした。

Eveさんの曲はいままでにこのブログで書いたことないけどよく聴くので大好きです。

ドラマツルギー

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