5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

「未来成就型」のヒット曲はレアなんだよ! - μ's『Snow halation』

こんにちは。

μ's『Snow halation』の歌詞の話をしたいです。

この曲、かなり珍しい未来成就型のラブソングなんです! それが流行るってすごくないですか?

訳わかんないですよね。でもきょうはそういう話をしたいんです。


μ's『Snow halation』歌詞(歌ネットへリンク)

分類するなら「未来成就型」

伊藤(2017)*1は、ラブソングをいくつかタイプによって分類しています。
それを時系列に整理したのが、わたしが前に書いた記事に出てきます。
hacosato.hatenablog.com
図示するとこうです。
f:id:hacosato:20151005224730p:plain
恋愛は過去から現在、そして未来に至るまで分類ができると思っていて、そのそれぞれに対していくつかのタイプがある、というのがわたしの仮説です。

そこへきて、μ's『Snow halation』の歌詞のことなんですが。

Snow halation』は明らかにラブソングです。

ということは、わたしが考えているラブソングのタイプ分類のどこかに当てはめることができるはずです。

そこで、歌詞を見てみます。

予感に騒ぐ心のMelody
想いが重なるまで待てずに
飛び込む勇気に賛成 まもなくStart!!
「予感に騒ぐ」「待てずに」「飛び込む勇気」「まもなくStart!!」などの表現から見ると、この曲ではまだ恋愛ははじまっていないように見えます。

だからこの曲は、未来成就型といえます。

じつは、このタイプ分類の中では、未来成就型に分類される曲は非常に少ししかありません。

未来のラブソングをみんなあまり歌わないのです。

たとえば、前回わたしが引いた富永(2014)*2では、いきものがかりのラブソング46曲を分類し、未来成就型が2曲あると報告しています。割合でいうと4.3%…。すくない…。

また、伊藤(2017)では、流行歌ランキング・ベストワンの70曲の中で未来成就型は1曲もないと報告しています。

わかるか? まだ実っていない恋愛を歌う曲は売れねぇんだよ!!

でも、『Snow halation』は未来の恋愛を歌っています。そして、μ'sを代表する曲として育ちました。

それはとってもめずらしいことなのです。

「いまの気持ち」と見せかけて

この曲が過去ではなくて未来を歌っていることは、子細に見てもはっきりしています。

不思議だね いまの気持ち
空から降ってきたみたい
特別な季節の色が ときめきを見せるよ
最初の連は「いまの気持ち」について歌われています。

ここに出てくるのは変わりやすいものばかりです。
「空」「季節」「色」っていうふうに。
変わりやすいものは、たいていその現在(それかその変化そのもの)に値打ちがあります。

お母さんが小さい子どもの写真をたくさん撮るのは子どもがすぐに成長してしまうからだし、卒業ソングが切ないのは卒業が変化の淵にあるからです。

ここで「空」「季節」「色」ってことばが出てくるのは、「いまの気持ち」を引き立てるのにうってつけの脇役だからです。

「いまの気持ち」を歌うのは、ラブソングの王道です。わたしたちは最初、そういう王道だと思ってこの曲を聴き始めるのです。

初めて出会った時から
予感に騒ぐ心のMelody
とめられないとまらない な・ぜ
でもその「いまの気持ち」は、実は未来を向いています。

「いまの気持ち」には「予感に騒ぐ心のMelody」が鳴り響いています。

「とめられないとまらない」ということは、つまりいまの心の高鳴りが、未来に向かって地続きだということです。

わたしたちはこの瞬間に、この曲は現在ではなくて未来についての曲なんだと気づきます。

そしてそれと同時に曲はサビに入るんです。

届けて
切なさには名前をつけようか“Snow halation
想いが重なるまで待てずに
悔しいけど好きって純情
微熱の中 ためらってもダメだね
飛び込む勇気に賛成 まもなくStart!!

曲のメロディがいちばん高まるときにタイトルをコールして、きちんとアクセントを合わせてくるの職人すぎる…。好きかよ……。

ところで切なさに“Snow halation”って名前をつけたって、他の人には通じないじゃないですか。

でもそういうふたりだけのジャーゴンがあれば、今後ふたりで「スノハレ」って言ったときに、同じ気持ちを共有できるんですよね。

だからこれも未来のほうを向いた歌詞だと思うんです!

あとは

想いが重なるまで待てずに
ためらってもダメ
飛び込む勇気に賛成
まもなくStart!!
と、ひたすら未来向きフレーズの弾幕でサビがおしまい、って感じ。

ここへきてわたしたちははっきりと、この曲は現在に軸足のあるありふれた曲じゃなくて、未来を向いてる特異なラブソングだって気づくのです。天才か。



そんなμ's『Snow halation』でした。

わたしはオタクがオタクとして活動しているのを見るのがほんとーーに大好きで、そのために最近足しげく通っているところがあります。それが大学の学園祭です。


https://twitter.com/hacosato/status/934388237086236673

学園祭にいる間のわたしのツイートはひたすらこういう感じになるのでフォロワーが減ります♪

で、最近学園祭に行くとだいたいある団体さんたちがステージに登場するということに気づきました。

それがラブライブのコピーダンスグループです。

待って。ありすぎじゃないですか。

しかもこういうステージ、観客もただ珍しいもの見たさに集まってくるのではなくて、みんなちゃんと光る棒を持ってくるし、統一感あるコールで盛り上げてくれるし、ちゃんと“わかって”てやってるんですよ!

すごくないですかこのオタクたち!! あいしてる!!

わたしはパフォーマンスの間、ステージの上ってよりはオタクのみなさんのことを見つめているよ…。この高まりは……ドラッグ!!

そんなドラッグにハマっていたら、いつも会場が沸く曲がいくつかあるってことに気づいたんですよ。なんか聞き覚えがあると思ったら紅白でやってたやつじゃん!!

ってなって調べていったら、いつの間にかこんな記事ができていました。

ラブライブの楽曲の作詞を一手に手がけている畑亜貴さんは、非常に多作なことで知られています。Wikipediaの記事のこの長さ!

畑亜貴 - Wikipedia

μ'sが紅白歌合戦に出場したのは2015年なので少し前のことになりますが、いまでもいろんな学園祭でラブライブのコピーダンスグループはたくさん活躍していて、なんかわかんないけど不思議! たのしい!!

熱狂の現場はいいよね。わたしはこれからも、邦ロックの夏フェスもLDHのライブもアイドルの現場もジャニーズのコンサートも2.5次元も歌舞伎もなんでも行ってみたいです。

今回の参考文献はこちら。歌詞読み業界は狭いから、この本はぜったい避けて通れないのでした。

Snow halation

Snow halation

  • μ's
  • アニメ
  • ¥255

次回は今年最後の更新の予定! クリスマスなソングをやりたいぜ!!

*1:伊藤 雅光『Jポップの日本語研究-創作型人工知能のために–』

*2:https://opac.library.twcu.ac.jp/opac/repository/1/5717/14TOMINAGAAi20150315.pdf