5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

身を守るためのうろこについて(または粘膜について) - 秦基博『鱗(うろこ)』

こんにちは。

きょうは秦基博『鱗(うろこ)』の歌詞の話。

君に今 会いたいんだ 会いに行くよ
たとえ どんな痛みが ほら 押し寄せても
鱗のように 身にまとったものは捨てて
泳いでいけ 君のもとへ 君のもとへ それでいいはずなんだ
あああわたしこういう振り切れた歌詞大好きです。

「会いたいんだ」で満足してしまいがちなところを、そのあとさらに「会いに行くよ」と、気持ちを行動に変えて歌い直すところ、サビの突き抜け感のあるメロと相まって胸のすくような気持ちになりますね。

でもそんな軽やかさとは裏腹に、タイトルは『鱗(うろこ)』という重々しい単語。

このチョイスがおもしろいと思ったので、きょうはうろこのことから調べてみました!


秦基博『鱗(うろこ)』歌詞(歌ネットへリンク)

うろこ編

話の枕に辞書の定義を安易に持ち出す人好きじゃないんですけど、ここはひとつ目をつぶって『新明解国語辞典』の「うろこ」の項目を見ていただきたいんですよ。

①魚類・爬虫類の表皮を瓦のように重なっておおっている薄い片。からだを保護するためのもの。(後略)
*1
鱗は「からだを保護するためのもの。」っていうのが新明国のアピールです。
そしてこれが秦基博『鱗(うろこ)』でも同じようにいえるぞ、っていうのが今回のわたしの主張です。

そう思うと、この曲には自分の身を守るものがたくさん出てきます。

たとえばこの曲の冒頭はこうです。

少し伸びた前髪を かき上げた その先に見えた
「伸びた前髪」のは、J-POPの慣用句で、以下の3つの意味があります。

伸びた前髪
①1ヶ月ぐらい時間が経った
②自分の外見に手を入れる余裕がない
③自分の顔を隠して身を守りたい
(出典:ハコサトJ-POP辞典)
今回の意味はもちろん3番です。前髪が伸びるのは、そうすることで表情を隠したいからで、隠したいのは自分の身を守りたいからです。

続く連にも自分の身を守る表現があります。

いろんな言い訳で 着飾って 仕方ないと笑っていた
「言い訳で 着飾って」というシーンがそうです。
先ほどの連は外見のことでしたが、今度は言動のことについて触れられています。

同じことを歌っていても、切り口がより深くなっているのがわかります。

鱗のように 身にまとったものは捨てて
泳いでいけ 君のもとへ 君のもとへ それでいいはずなんだ
サビでありタイトルでもある「鱗」はその流れにあります。つまり「鱗」は自分の身を守るものです。

でもこの曲は自分の身を守ろうとする曲なのではありません。

逆に、いままで自分の身を守ろうとしていたものを取り払おうとする曲です。

その証拠に、鱗は「鱗のように 身にまとったものは捨てて」という文脈で歌われます。

この曲には守り攻めの対比があるわけです。

さらにこの守り攻め過去現在の対立とも符号しています。

少し伸びた前髪を かき上げた その先に見え
緑がかった君の瞳に 映り込ん 僕は魚
 
いろんな言い訳で 着飾って 仕方ないと笑ってい
傷付くよりは まだ その方がいいように思えて
1連と2連をまとめて引用しました。

この部分は「かき上げた」「見えた」「映り込んだ」というように、動詞はぜんぶタ形になっています。過去です。

そして、この部分は前髪が伸びているし、言い訳で着飾っているシーンです。

守りのシーンが過去のものとして描かれています。

一方で、サビはこうです。

君に今 会いたいんだ 会いに行くよ
たとえ どんな痛みが ほら 押し寄せても
鱗のように 身にまとったものは捨てて
泳いでいけ 君のもとへ 君のもとへ それでいいはずなんだ
動詞は「会いたい」「会いに行く」というように、今度は言い切りの形で歌われます。時制でいうなら現在形です。

そしてこのシーンは鱗を捨てて泳いでいくシーン。

攻めのシーンが現在のものとして描かれているわけです!!

こんな風にまとまるということがわかりますね!

時制 過去 現在
攻守 守り 攻め
粘膜編

さてこの主人公、鱗を捨てて今後どうしていくのでしょうか。

君に今 会いたいんだ 会いに行くよ
たとえ どんな痛みが ほら 押し寄せても
サビでは「痛み」の予兆があるとはいえ、そんなことは意に介さずに「君」に向かって突き進んでいく様子が描かれています。

でも、鱗は捨てて大丈夫? 魚なんでしょ?

Wikipediaによると、鱗が退化している魚類についてこういう記述があります。

エイやウナギなどの鱗が退化している魚では粘液によって体表を防御する傾向が強まるため、特に粘液の分泌が多い。また、稚魚、幼魚も鱗は未発達で、もっぱら粘液によって体表を防御している。*2

また、さかなクンさんはこのようにおっしゃっています。

魚たちは自分を守るためにうろことぬるぬるした粘液を持っているんです。うろこががっちりした魚はそのぬるぬるが少ない魚も多いのですが、うろこが小さかったり、ナマズのようにうろこを全く持っていない魚は、体を守るためにぬるぬるの量が多いのですね。*3

ということは、主人公は今後、粘液によって自分の身を守っていく可能性があります。ぬるぬる。主人公はぬるぬる。

以降、歌詞を断片的に引用すると、このようになります。

鱗のように 身にまとったものは捨てて
身にまとったものは捨ててる…。なにもかぶってない…。

泳いでいけ 君のもとへ 君のもとへ それでいいはずなんだ
「泳いでいけ」……。

あふれそうな この想いを もう ちぎれそうなくらい
「あふれそう」……。

あーっっ!!!
(以降あふれ出そうになる18禁ワードは自主規制により削除)



というわけで、秦基博『鱗(うろこ)』でした。われながらこの文章の後半ぜったいおかしい……。

この曲、繰り返し聞いたことがあるのでじぶんのiTunesに入ってるはずだと思い込んでいたのに、調べてみたら入ってなかった…。いったいどこで聞き覚えがあるんだろう…。

hacosato.hatenablog.com
秦基博さんの曲、以前『ひまわりの約束』も歌詞を考えたことがあります。

割と会心の読みできました! 今回のとはぜんぜん違うからぜひ読んでほしい! 先っちょだけでいいから!!

さて今回は突撃!カワウソ君!さん(@kawauso_AVA)からリクエストいただきました。いつも読んでくださってありがとうございます。励みになる♪♪

以前からいろんな方にリクエストいただいていたりしたのに、なかなか叶えられず申し訳ない気持ち…。

これからもよろしくお願いします!

鱗(うろこ)

鱗(うろこ)

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