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5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

欅坂46の2曲は、同じ動機付けで動いている

欅坂46サイレントマジョリティー』の歌詞が、音楽好きのひとたちやアイドル好きのひとたちに好評みたいです。
だからちょっと探すだけで、
realsound.jp
keyaki46.2chblog.jp
こういう絶賛記事たくさん出てくるんですけど! すごい! わたしも欅坂ちゃんの絶賛記事書きたい!!
というわけで、書いてみました!!
いまの時点で欅坂46は『サイレントマジョリティー』と『世界には愛しかない』の2曲のシングルがあるよ! 両方に目配りすれば立体的に欅坂ちゃんの歌詞の世界を読み取れるね!
やってみよう!

欅坂46『サイレントマジョリティー』歌詞(歌ネットへリンク)

大人のこと

この歌詞、センターの平手友梨奈さんが「本当は僕らの革命というタイトルだったみたいです。」って言っています。
www.keyakizaka46.com

たしかに、歌詞を見てみると革命を想起させるところがあります。

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めから そうあきらめてしまったら
僕らは何のために生まれたのか?
サビの部分ではこうして、主人公たちが聞いているわたしたちを鼓舞してくれます。
欅坂ちゃんたちが呼ぶ「君」は、聴き手のわたしたちを指しているような印象があります。
みんなもそう聞こえるよね??

でも歌詞の中で、代名詞が直接聴き手を指すなんて、当たり前のことではありません。

たとえば。

二分後に君が来た 大袈裟な荷物しょって来た
始めようか 天体観測 ほうき星を探して
BUMP OF CHICKEN天体観測』の「君」を聴いて、自分を名指されていると感じるひとはあまりいないと思います。たぶんこの「君」は主人公の幼馴染の人であって、聴いているわたしたちのことではありません。
hacosato.hatenablog.com

そばにいたいよ 君のために出来ることが 僕にあるかな
いつも君に ずっと君に 笑っていてほしくて
秦基博ひまわりの約束』の「君」も同様で、少なくとも一義的には聴き手のことを直接指すような言葉ではありません。普通に聴くなら主人公の彼女さんのことだと思うし、聴き手のことはストレートには出てきません。(そうじゃない読み方もできるんだけどね! わたしのブログの記事読んでほしいよ!!)。
hacosato.hatenablog.com

そんな感じで、世の中の歌詞の中のたいていの「君」は、歌詞の世界に閉じ込められただれかであって、その世界を飛び越えて私たちのことを直接指したりしません。名前空間が脅かされます。

ところが、欅坂46サイレントマジョリティー』はそれを侵して、わたしたちのことを直接鼓舞しようとしています。それがこの曲の新鮮味の源泉だとわたしは思っています。

夢を見ることは時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ
この世界は群れていても始まらない
Yesでいいのか?
サイレントマジョリティ
だからこのサビ後半の「Yesでいいのか?/サイレントマジョリティー」も、自分たちのことを指しているような印象を受けながらついわたしたちは聴いてしまいます。

もうひとついいなと思うのはこのサビの2行目。

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
欅坂ちゃんたちが気持ちよくわたしたちを奮い立たせたあとで「大人たちに支配されるな」って歌うのでした。
欅坂ちゃんと「君」(つまり聴いているわたしたちです♪)が仲間で、「大人」がその敵だってことがここにはっきり示されます。
すごい! いつもアイドルと対になる存在として描かれがちなファンにとって、アイドルと同じサイドでいられるなんてめっちゃ幸福じゃないですか!!

アイドルソングで「私」と「あなた」が出てきた場合、「私」のほうは歌い手のアイドルと重ねあわせて聴かれるし、「あなた」はその恋人とかとして聴かれることが多いと思います。「私」と「あなた」との間にはまず大きな溝があって、そのあいだにどういう感情が行き来するかで歌詞の世界が構築されます。
片思いかもしれないし、互いに飛び交う好意かもしれないし、失望かもしれませんが、とにかく最初に大きな溝があることがスタートになります。
(↓このお話もぜひ見てほしい!!)
hacosato.hatenablog.com

ところが、この曲では歌詞の主人公たちと聴いてるわたしたちとの間が地続きで、ふだん当たり前に存在しているはずの「溝」がありません。
そんな構図が、ネットのレビュアーさんたちを揺り動かしているのかもしれないですね。

でも。

それは『世界には愛しかない』だと、ちょっと変わります。

最初に秘密を持ったのは いつだろう?
大人はみんな嘘が多過ぎて 忘れてる
最後に大人に逆らったのは いつだろう
諦めること強要されたあの日 だったか?
こうして、大人に反旗を翻る描写は健在です。
でも、「君」の描き方が前作とは違います。

『世界には愛しかない』のサビはこういう感じです。

世界には愛しかない(信じるのはそれだけだ)
今すぐ僕は 君を探しに行こう
この「君」は、ちょっと微妙です。
前作では「君」はかなりはっきりと聴き手のことを指していて、わたしたちはおおっ!?て思わされたのでした。
今回の「君」は、聴いているわたしたちのことと取ることもできます。でも、ふつうは主人公にとっての恋人やヒロインと捉えるほうがしっくり来るのです。
歌詞の世界は、やっぱり曲によって、ちょっとずつ変化するんですね!

動機付けのこと

でもね、でもね!
共通してる点もあります。それは、主人公を動かす動機付けです。

サイレントマジョリティー』にはこういう歌詞があります。

夢を見ることは時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ
自分の夢の方に歩けばいい
さあ未来は君たちのためにある
つまり、この曲で主人公たちが立ち上がるのは「夢」のためであって、その先に「未来」がある、っていう世界だってことがわかります。

それは『世界には愛しかない』も同じです。

世界には愛しかない(信じるのはそれだけだ)
今すぐ僕は 君を探しに行こう
未来には愛しかない(空はやがて晴れるんだ)
悲しみなんて そのときの 空模様
1番のサビでは愛だけが信じるものだと歌われています。
2番でもおおむね似た感じで、未来を所与のいいものっぽく描きながら、やはり愛を不変のものとして信じているみたいです。

サイレントマジョリティー』では「夢」が、『世界には愛しかない』では「愛」が、動機付けとして主人公を突き動かしています。

そうやって思えば、『世界には愛しかない』、終わりはこういう感じです。

全力で走ったせいで 息がまだ弾んでた
自分の気持ちに正直になるって 清々しい
僕は信じてる 世界には愛しかないんだ
「自分の気持ち」って言葉がナチュラルに出てくるあたり、なんかこの主人公たちの心象がわかる気がします。
「自分の気持ち」は信じるに足るもので、それが状況によって「夢」として表出したり「愛」として表出したりするんですね! わかる!

「君」というキーワードだけで見るとこの2曲は違って見えるけど、動機付けの点で見ると、この2曲はとっても似ているのです。
やっぱり、トータルで統一した世界観を持ってるんだねすごい!!

関係ないけど、EXILEとかのプロダクションはLDHという名前です。これはLove, Dream, Happinessの頭文字です*1
ここから察するに、欅坂ちゃんの次の曲はハピネスがテーマになるよ!って思ったけどどうでしょうね。次回作に期待しましょう!



…でーきたー!!
最近音楽ブロガーさんとか、音楽ライター気取りさんとが欅坂ちゃんのことみんな絶賛してるっぽいと知ったので、それにあやかって、めっちゃいつもと違う感じで書いてみました! 音楽ブロガーさん感を出したよ!
どういうふうにいつもと違うのかというと、

ふだんのhacosato
アーティストと歌詞は別物。
今回のhacosato
アーティストと歌詞は表裏一体。

という感じでやってみました。ふだんの自分だったら同じアーティストさんの曲でも、関連付けて考えることはまれなのでした。でも音楽界隈のひととかだとどうやらアーティストありきで作品を考えるっぽいので、マネしてみました!!

ところで実際、欅坂ちゃんのこと絶賛しているのっておじさまが多い(印象)感じするんですがどうなのかなぁ。
というのはですね、この歌詞、わたしよりもっと若い人たちにこの歌詞がどう響いているのか、じつはちょっと気になっているのです…。

それには理由があります。
この曲は大人を敵にして、主人公たちと聴き手が団結するように仕向ける仕組みがあるのは書いたとおりです。
でも、若者が大人社会に反発するっていう構図自体は、うんと昔の80年代のものだと思うのです。
昔は若者は、自分のアイデンティティの発露として、大人に歯向かうっていうスタイルがありました。80年代のことです。
ところがバブルが去って、大人の社会が傷だらけになって、しかもマスコミなどを通じて若者にもそれが露呈するようになったら、若者は自身のアイデンティティのために大人を使うことなどできなくなってしまうのです。
なぜなら、大人の社会がもう一枚岩ではないし、歯向かうに足るものでもないからです。
それは90年代のことです。いまはそっからさらに20年も未来を、わたしたちは生きています。あれ、おかしいぞ??
って話はこの本に載っているので読んでね〜!

さらに。
若い人に人気のボカロPさんにNeruさんってひとがいます。
この人の曲は表面的には欅坂ちゃんの曲とよく似ています。たとえばこんな感じ。

父さん母さん 今までごめん
膝を震わせ 親指しゃぶる
兄さん姉さん それじゃあまたね
冴えない靴の 踵潰した


あるいはこんな感じ。

黒板のこの漢字が読めますか あの子の心象は読めますか
その心を黒く染めたのは おい誰なんだよ おい誰なんだよ


家族、あるいは学校という身近な大人に楯突いて、踵を潰したり「おい誰なんだよ」と迫ったりするのは欅坂ちゃんと少し似ています。
でもNeruさんの曲の先には、単純な夢や愛があるわけではありません。
わたしにはそのほうが、2010年代のリアルな若い人の感性が反映されている感じがします。

そういう話は、また今度にとっておきたいと思うので、次回以降に遊びましょうね。

きょうはここまで! ありがとうございました。

サイレントマジョリティー

サイレントマジョリティー

世界には愛しかない(通常盤)

世界には愛しかない(通常盤)

次回はUNISON SQUARE GARDENシュガーソングとビターステップ』をやりまーす!

2016/08/07 加筆修正しました。

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