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5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

ひとすじの「線」になる - サカナクション『新宝島』

歌詞を読む

こんにちは。

今回はサカナクション新宝島』の歌詞を考えます。
この曲は映画『バクマン。』の主題歌だそうです。ro69.jp
ということはこの記事にある通り、

映画からインスパイアされ、「線を描く」をテーマに制作された。曲中の《丁寧に描くよ》という歌詞は、音楽家として「モノを作る苦しみ」に深く共鳴したがゆえに生まれたとのこと。また、楽曲タイトルは手塚治虫が1947年に発表した同名の漫画から決定したもの
ということは想像に難くないのですが、今回はわたしはそういうことからいっさい離れて、歌詞のことだけを考えていこうって思います。
歌詞だけを見ると、漫画を描く歌詞にも見えるけど、そうじゃない風にも見えると思ったのでした。

一次元の世界

この歌詞、すごく一次元的だと思うんです。
一次元的というのは、歌詞の中に面的な広がりがなくて、一本の直線の上だけで世界が完結しているようなイメージです。
思えばこの曲は、線の話ばかりをしています。

次と その次と その次と線を引き続けた
揺れたり震えたりした線で
漫画のことはよく知らないんですが、漫画はたぶん二次元的なものなので、線じゃなくて面で構成することができるはずです。
なのになぜだかこの曲は、線のことばかりを歌います。
それは、「宝島」を目指す、という歌詞の仕組みと関係があると思います。
次と その次と その次と線を引き続けた
次の目的地を描くんだ
宝島
この歌詞は、そのままに読めば「宝島」を目指す歌詞だと思えます。
「宝島」を目指す一次元的な世界の捉え方が「線」の話と符合するのです。
一次元的な世界の捉え方というのは「宝島」に近づいているかそうでないかだけを考えているような捉え方です。リアルな深みはないかもしれないけれど、シンプルでわかりやすい冒険譚です。
二次元的な捉え方っていったら、「宝島」に近づく以外にも目指すべき要素があって、それがときに背反したりするイメージです。物語は複雑になって、単純な善悪では捉えられないことが増えそうなイメージ。
今回は一次元です。目標は「宝島」ひとつだけ。それが「線」のイメージとも符合してきます。

さてサビの部分はこういう歌詞です。

このまま君を連れて行くと
丁寧に描くと
でもこの2行目は「ていねい ていね ていねいに」と歌われています。
これは、線の引き方を表現しているとわたしは思ったんですよ!
とくに男子って、たくさんの線を重ねることで、ひとつの線を結ぶような、そういう絵を描くイメージないですか?
http://www.lemon-slice.net/a2-2.jpg
http://www.lemon-slice.net/illust_lecture_a2.htmlwww.lemon-slice.net
この図でいう、左の段の上から2つ目や4つ目の線です。
この描き方、歌で表現すると「ていねい ていね ていねいに」って感じになりそう。
たくさんの短い「ていねい」があって、それが組み合わさってひとつの大きな「丁寧」になるイメージです。
試行錯誤を繰り返して「揺れたり震えたりした線」でも、目指すのはひとつの「宝島」なのです。

線と歌

2番は「線」の話がなくなります。代わりに出てくるのは「歌」です。

このまま君を連れて行くと
丁寧に歌うと
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌う
と決めてたけど
でも「歌」も「線」とだいたいいっしょです。「歌」は時間の芸術なのだから、1次元のものと捉えることができます。
英語でlineには
(一連の)メロディー
という意味がある(『ジーニアス英和大辞典』)そうなので、線も歌も、両方ともlineなんだね、っていうことができそうです。
この歌詞は「宝島」を目指すことを、ふたつの観点から捉え直している歌詞だと思います。「線」の観点と、「歌」の観点です。
つまり図鑑的な歌詞だということです。
図鑑型と物語型の歌詞については以前に書いたことがあるので、よければこちらお楽しみください。

1番で2連かけて「線」の話をし、2番では2連かけて「歌」の話をしました。
その次の連はこういう感じです。

このまま君を連れて行くよ
丁寧に描くよ
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌うよ
この連は、「線」の話と「歌」の話が混ざっています。前半2行が「線」の話、後半2行が「歌」の話です。
手がかりは「丁寧に」のあと。「描くよ」か「歌うよ」かで判断することができます。

それでも君を連れて行くよ
揺れたり震えたりした線で
描くよ
君の歌を
最後の連。ここには「丁寧に」がありません。だから「それでも君を連れて行くよ」が「線」の話なのか「歌」の話なのか、判断ができません。
でも「揺れたり震えたりした線で」は「線」です。
「描くよ」は「線」です。
「君の歌を」は「歌」です。
こうして、この曲は終わります。
最初は、2連ごとに分かれていた「線」と「歌」が、最後には1行ごとに交互に繰り返されるようになりました。
さらに、「線」なのか「歌」なのかわからないようにもなっています。
どうして?

立ち返れば、この曲は図鑑型なのでした。
だから「線」からのアプローチであっても「歌」からのアプローチであっても、目指すものはひとつ「宝島」だけです。
「線」と「歌」の切り替えがだんだん早くなって、境界が薄れていくということは、ふたつのアプローチの境界が薄れていくことであるともいえます。
ふたつのアプローチはきっとすぐにひとつになって、もっと本質的な問題である「宝島」こそにフォーカスできるようになるのでしょう。
この歌は、その直前のおはなしなのでした。



ということで、サカナクション新宝島』でした。
この曲の歌詞の音については、柴 那典さんの記事がおもしろかったです♪note.mu
やっぱりプロは違うよね!

ところで、今回「線」とか「line」とかを辞書で引いてたら、こんなことがわかりました。
『新漢語林』には「線」の字義として

いと。糸すじ。また、糸のように細く長いもの。
とあります。
また『ジーニアス英和大辞典』には「line」の項目に
16c;ラテン語 linus(リンネルの)より、「リンネルの糸」が原義
とあります。
つまりですよ!「線」も「line」も両方とも「糸」が語源なんですね! 今日もわたしたちのもとには、ムダ知識が増えてしまったのでした。

あと、この曲、音階が独特だなぁって聴いてて思っていました。
調べてみたら、どうやらおおむね琉球音階のようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E7%B8%84%E9%9F%B3%E6%A5%BDja.wikipedia.org
沖縄っていったら島だし、島といったら宝島なので、こういう音階の部分でも特徴を出していっているんだろうなぁ、ってわたしは思ったのでした。
ひとつのものをいろんな角度で示す、という図鑑型のアプローチを、音階の面からも体現したって捉えられそう。

shiba710.hateblo.jp
音階と和音の話はここのブログが楽しいです。サカナクションも出てくるよ!
サカナクションは以前、この曲も読みました。
よければあわせて楽しんでください! hacosato.hatenablog.com
次回の予定は未定です。なにがいいかなー。

新宝島

新宝島

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