5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

「君を守る」が僭越にならない関係 - シェネル『Happiness』


あけましておめでとうございます。

先日、こんなツイートを見ました。


めっちゃイイ!って私は思いました。
確かに、雑な気持ちで「君を守る」とかって言ってるみたいに見える歌詞、いっぱいありますよね。
このツイートを見て、私が想起したのはシェネル『Happiness』でした。この曲は「雑」な曲かな?と考えたのです。
サビの歌詞こんな感じ。
I'm always gonna be with you 守りたいの
世界中で一番 キミのことが 大切なの
大好きすぎて 上手く言えないけど
キミがいる それだけでいい
'Cos いつでも You are my Happiness
You are my Happiness
この曲の主人公、「守りたいの」って言ってます。主人公は「キミ」のこと、不当解雇とかサービス残業とかから守ってくれるのかな? そんな権力あるのかな?
ふつうはそんな権力ありません。でも、だからといってこの歌詞がダメなわけではないのです。
男女間のラブソングだと思うと、ちぐはぐになってしまいます。
今回はシェネル『Happiness』を読みながら、別の読み方をあぶり出しましょう。
シェネル『Happiness』歌詞(歌ネットへリンク)

母子の愛

この曲、男女の恋愛を描いているのではありません。私が思うに、描いているのは、母子の愛です。

嬉しいこと 悔しいこと
一番に伝えたいのに
空回りばかり Oh
1連を引用しました。この部分だけなら、どのようにも取れます。でもふつうは、ヘテロセクシャルなラブソングだと捉えられます。

ところが、そうだとすると、サビがちょっと変です。

I'm always gonna be with you 守りたいの
世界中で一番 キミのことが 大切なの
さっきも触れたとおり「守りたいの」のところが、なんだか引っかかります。
「守る」っていったら、対象が自分よりも弱いものだとの自覚が見えるし、対象を脅かす脅威に打ち勝てるという自負が感じられます。
この自負は、ふつうのラブソングには強すぎるのです。
だから冒頭のツイートのように、違和感が生まれがちなのです。
でもこれが母子愛を描いた曲だとすると、話は変わります。
この母にはどんな脅威からも我が子を守ろうとする強い意志が感じられるし、そういう風に読むと、この部分が変ではなくなります。
大好きすぎて 上手く言えないけど
キミがいる それだけでいい
'Cos いつでも You are my Happiness
You are my Happiness
「You are my Happiness」は少しきつい表現です。「あなたがいてくれて私は幸せ」とかではなくて、「あなたが私の幸せ」っていう文になっているから。
「I'm happy to be with you」とかだと対等な感じがするのに、「You are my Happiness」だと自分が上で相手を下に見ている感じが漂ってくるのです。
これも、母子愛を描いた曲だと思えば解決します。母が子に対して「あなたが私の幸せ」っていうのならそれほど変ではありません。
自身の子のことを歌っている(と思われる)木村カエラ『リリアン』にも「なによりもあなたが私の幸せ」という部分が出てきますし。
「幸せ」がわかりにくかったら「宝物」だとどうでしょう?
母親が我が子のことを「宝物」とかっていうのはアリだと思いますが、恋人に「宝物」って言われるのはなんかちょっと違う気がしませんか?

こういう投げ掛けに対して、
お父さんやおじいちゃんのセリフみたい・・・・
将来、嫉妬や束縛の激しい彼になりそうですね・・・・。
という声が寄せられています。
こういうリアクション、わりとふつうだと思うんですけど…。
それと同じで、母親が我が子のことを「私の幸せ」というのは不自然ではありませんが、恋人がそう言うのは変な感じが漂います。
対等な人間関係(恋人同士とか)だったら上手くかみ合わないことも、非対等な関係(親子とか)だったらアリって感じがします。*1


ところで、この歌詞からはもう少し踏み込んだことまで想像できる部分があります。
この曲の主人公はシングルマザーで、その子どもは男の子だと見えます。

雪降る夜 星が流れ
キミを思い浮かべ
つよがりすぎないでね
5連を引用しました。「雪降る夜」に「キミを思い浮かべ」ているということは、夜にはいっしょにいないということです。
夜に会えないのは、それぞれ別々の家に帰るからとかではありません。
主人公であるお母さんが夜は仕事に出ているからです。
きっと「キミ」は男の子で、保育園でばいばいするときには「大丈夫だよ」って言って胸を張るような、威勢のいいポーズを取るんでしょう。でもそんなのは強がりです。お母さんとさよならした途端に泣き出したり、してしまいそうです。てかそうであってほしい。萌える…!
完全に私の妄想ですが、こういう強がりは男の子がやってくれる印象あります。女の子だったらもっと、お母さんのことをいたわる方向に舵を切るはず。


この街の きらめきたち
どんな未来に繋がってるの?
ともに光へ
お母さんはそんな子どもを置いて、きらめく夜の街へ繰り出します。
シングルマザーと夜の仕事について、こんな記事を見つけました。

白井ゆかりさんは、以下のようなことを話しています。
「夜のお仕事をダラダラ続けるのは個人的には賛成できません。目の前の時給だけでなく、自分が得られるチャンスを掴むためのステップアップと考えてお仕事したほうが親子ともに幸せになれます。それはお店のママを目指すことや、昼職への転職や私みたいに起業を目指すことでもいい。目標があると夜の仕事もやりがいが出ますよ」
この話と同じことが、歌詞の中でも起きています。
主人公は街のきらめきの向こうに輝く未来を夢見ています。
いまは仕事が大変な時期なのでしょうけど、主人公は我が子に「Happiness」を感じながら、懸命に光に向かって進んでいるのですね。

というわけで、シェネル『Happiness』でした。
J-POPには、ふつうのラブソングと見せかけて、実際にはそうではない関係として読んだほうがすっきりいくような歌詞が結構あります。今回のと似たのだとこういう感じ。

違うタイプだとこれとか。

どれも楽しいです♪
また今回のシェネル『Happiness』の作曲はFASTLANEという方。ほかに西野カナ『GO FOR IT!』などの作曲を手掛けた方です。なんとなく似た雰囲気ありますね。
『GO FOR IT!』は会心の読みができた記事なので、よければあわせてお楽しみください☆

ネットには文才のある方がたくさんいらして大変いいなぁと思います。私は今年、お勉強ももちろんしますが、文章力を磨いたりもしたいです。
Happiness

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  • シェネル
  • J-Pop
  • ¥250
Happiness

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次回は2014年のカラオケ曲やオリコンランキングを見ながら、統計的な分析に挑戦したい気持ちです!
今年もよろしくお願いします。

*1:このへんのことは、学術的には統語論の範疇になるのでしょうか…。勉強不足なので、ふわふわした言葉遣いばかりしています…。

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