5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

あの生物学者みたいになりたい!-kemu feat. GUMI『敗北の少年』

今日はkemu feat. GUMI『敗北の少年』の歌詞のことを考えます。

『敗北の少年』の冒頭はこんな感じ。

ぶつかって 逃げ込んで
僕はいつしか ここに立ってた
誰もが憧れる ヒーローに
なりたくて でもなれなくて
この歌詞、最近TVとかで話題だった、あのニュースをすごく想起させると思いませんか?
あのニュースです。あれ。
今回はそんな私の妄想にお付き合いください。
歌詞(初音ミクWikiへリンク)


敗北の少年勝利の少女

この曲のタイトルは『敗北の少年』ですが、その背後には少年の対になる、別の存在が常に見え隠れしています。「勝利の少女」です。
さっきも引用した1連を見てみます。

ぶつかって 逃げ込んで
僕はいつしか ここに立ってた
誰もが憧れる ヒーロー
なりたくて でもなれなくて
「誰もが憧れる ヒーロー」という人が出てきます。
このヒーロー、主人公とはいろんな意味で対照的です。なのでここではその人物を「勝利の少女」と呼んでみます(「ヒーロー」は男性名詞だけどさ)。
これ踏まえて1番のBメロを見てみます。
これぐらいじゃ 届かないこと
分かっていたのに
「届かない」のはもちろん、敗北の少年で、届かないあて先は勝利の少女です。
敗北の少年は、この曲のスタート地点ですでに敗北しています。一方で勝利の少女は、少年の憧れる先です。
ここでいう勝利の少女は、「勝利の女神」みたいな言い方とは違います。勝利を擬人化したものではなくて、単に勝利している少女を描いた言葉です。主人公は、勝利の少女を勝ち取ることを目指しているのではありません。勝利の少女と同じようになりたいと願っているのです。
1番のサビはこんな感じ。
敗北の少年 現実を謳(うた)え
あんな風に空は飛べやしないんだ
こんな夜に 意味があるなら
僕らは地を這(は)う
「あんな風に」はもちろん「勝利の少女」を指しています。少女が空を飛ぶ中、少年は地を這っています。ふたりのキャラがはっきり分かれています。

奇跡

2番になると、3人目の人物「奇跡」が登場します。2番のAメロから順に引用します。

耳鳴りが こだまして
僕に 奇跡が 問いかけるんだ
「君の夢 憧れたヒーローに
今すぐ させてあげよう」
「奇跡」は甘い言葉で主人公の少年を誘います。
飴みたいに 差し伸べられたって
嬉しくないんだ
けれど主人公は気乗りしません。
敗北の少年 存在を謳(うた)え
君みたいに眩しくはなれないけど
こんな夜に 意味があるなら
僕らは地を這(は)う
まだ地を這(は)う
ここでもう1度サビが来ます。
1番のサビでは天と地のコントラストがありました。
2番のサビでは明暗のコントラストがあります。「君」は眩しく、「僕」は夜の中です。
表にまとめると、こんな感じになります。

敗北の少年 勝利の少女
地を這う 空を飛ぶ
こんな夜 眩しい

2番のサビのあとはしばらく間奏が続きます。間奏の間には、逡巡があります。
「君の夢 憧れたヒーローに 今すぐ させてあげよう」という「奇跡」の申し出に、主人公はまだはっきりと返事をしていないからです。申し出のあとは、「嬉しくないんだ」という意志の表出があったり、「敗北の少年」である自分への吹き込みなんかがあっても、まだ「奇跡」への返事はありません。
でも間奏が開けると、Bメロが入ります。

鼓動を知って 息を吸い込んで
「僕は遠慮するよ」
主人公は「奇跡」の申し出を断ってしまいます。
敗北の少年は、勝利の少女みたいになりたかったはずです。そのための近道は「奇跡」が提示してくれたし、それに乗っていけばきっと夢だって叶ったんでしょう。
でも、主人公はそうしませんでした。「飴みたいに 差し伸べられたって 嬉しくない」からです。

勝利の少女とは、だれ?

さて勝利の少女とはだれでしょう。私はあの人だと思っています。
最近テレビとかでしきりに取り上げられていた女性の生物学者に思い当たりはありませんか?
もう一度歌詞を引用しながら妄想します。

ぶつかって 逃げ込んで
僕はいつしか ここに立ってた
誰もが憧れる ヒーローに
なりたくて でもなれなくて
主人公である「敗北の少年」は、大学の博士課程で研究活動をしています。博士をやっているのは、研究が好きだからではありません。「ぶつかって 逃げ込んで」きたからです。たとえば、就活とかから。
主人公の理想は、だれもが憧れるヒーロー的な研究者になることです。でも、そんなの簡単にはなれません。
これぐらいじゃ 届かないこと
分かっていたのに
主人公は知っています。自分のような中途半端な動機では、ヒーローなんかになれないことを。就活から逃げてきたような人が取り組む研究なんて、きっとたかが知れているのです。
敗北の少年 現実を謳(うた)え
あんな風に空は飛べやしないんだ
こんな夜に 意味があるなら
僕らは地を這(は)う
主人公はTVを前にして、現実を噛みしめます。TVの向こうでフラッシュを浴びているのは「勝利の少女」です。対照的に冴えない自分は、今日も泥臭い研究活動に打ち込むしかありません。
そんな主人公にも転機はやってきます。転機は2番です。
耳鳴りが こだまして
僕に 奇跡が 問いかけるんだ
「君の夢 憧れたヒーローに
今すぐ させてあげよう」
この部分は端的に言えば、こういうことだと思うのです。
ただ純粋に悲しく悔しい - アメリカポスドクの歩き方
ある一流ラボに留学した知りあいがいた。
うつっていきなり非常に面白い現象を発見した。ボスは大興奮し色々なところで宣伝した。
しかし、その知りあいは最後の詰めのデータがどうしても良い結果にならなかった。
まわりに相談すると、間接的に捏造することを勧められたという。そうやって皆ポジションを得るんだよ。と。
『敗北の少年』に出てくる「奇跡」とは、つまり、捏造です。
飴みたいに 差し伸べられたって
嬉しくないんだ
鼓動を知って 息を吸い込んで
「僕は遠慮するよ」
主人公が「奇跡」の申し出を断ったのも、これなら納得がいきます。主人公は、捏造などしたくないのです。
そして主人公はだからこそ、いつまで経っても「敗北の少年」のままなのです。

敗北の少年 平凡を謳(うた)え
あいにくと神は信じないタチで
すれ違いの 物語よ
さよなら
主人公は平凡のままです。愚直だからです。
主人公は最初から「誰もが憧れる ヒーローに なりたくて」と歌っていました。目標があるのなら、それに向かって生きていくのが正しいやり方です。
でも、主人公はそうしません。主人公のその不器用さが、この歌詞のキーです。
敗北の少年 現実を謳(うた)え
僕らは泥を這(は)い蹲(つくば)るもの
こんな夜も 愛しいから
僕らは地を這(は)う
ただ地を這(は)う
勝利の少女は、仮に捏造を告発されても、肩書きを外されても、これからもきっとたくさんの支持を得つづけます。勝利の少女は、敗北の少年よりもずっとしたたかだからです。
愚直なままの敗北の少年には、スポットライトは当たらないままです。
その愚直な営みの向こうに、光はきっとありません。研究の先が見えないように、博士の先が白紙であるように、地を這う先には地しかないでしょう。だから主人公はいつまでも敗北の少年のままなのです。そこにはまだ、未来はありません。
主人公にできることは、ただ地を這うことだけです。地の先に、あるかもわからない架空の光を夢見ているだけです。

というわけでkemu feat. GUMI『敗北の少年』でした。
私ボカロはわりと好きなのに、このブログではいままでに2度しか取り上げていません。
hacosato.hatenablog.com
hacosato.hatenablog.com
あと、ボカロ曲っていうかわかりませんが、
hacosato.hatenablog.com
これとか。
今後はも少しボカロも読んでみたいです!
kemuさんって顔出ししてないらしく、ニコ動の界隈では“あの人”と同一人物なんじゃないか…みたいなうわさが絶えません。いま私統計学をお勉強中ですので、あるていどカタチになったら統計的な手法でそのへんの検定とかやってみたいと思っています。
賢くなりたい!
敗北の少年 (feat. GUMI)

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次回予告:次回はAKB48『ポニーテールとシュシュ』を取り上げたいです!

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