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5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

嵐『Breathless』

歌詞を読む

夢とうつつの行き来の彼方に。
こんにちは!
実は、ずっと気にしていたことがあります。このブログは「J-POP」って標榜しているはずなのに、選曲にはすごく偏りがあるってことです。だっていまのところももクロもB'zもSKEもEXILEもPerfumeもない上、K-POPも演歌もないし、アニソンはアンパンマンだけ。ジャニーズはTOKIOだけという謎展開です。TOKIO曲はジャニーズの王道じゃないと思うぞ!!
…という現状を踏まえまして、今回は嵐やります! 実はずっとやりたかったのです。
Calling/Breathless(通常盤)

体中叫んでる まるで無限の迷路に
傷だらけの記憶 悲しみの果てまで 彷徨(さまよ)って
嘘のない世界など どこにもない時代でも
確かめたい 自分だけに 刻まれてるDNA

サビの歌詞はこんな感じです。「確かめたい 自分だけに 刻まれてるDNA」のあたりから、どうやら自分自身のルーツとか、そういうものを探求するのがテーマの曲みたい。
…だと思ってた私はこっから先、予想を裏切られるのでした。歌詞が途中からぜんぜん違う方向を向いたように見えるのです。私は歌詞の冒頭を思い出しました。

何を求め どこへ行くのか

おい! それはこっちのセリフだよ!!
ちなみに私は、嵐に関する周辺の情報はまったく詳しくありません。映画も見ていないので、以降は歌詞だけから見える世界に対する考えが中心になります。それでもよければ続きをどうぞ。
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND141518/index.html
構成はこちら→イントロ-A-B-サビ-A-B-サビ-C-サビ

夢なの? うつつなの?

この曲は、夢の中と外を行き来する複雑な構図になっているみたいです。
イントロが終わってAメロの部分を引用します。

見覚えのあるその姿を まどろみの中で追いかけてみる
夢が覚めても思い出せない 欠け落ちた時間(とき)の隙間を漂うだけ

ここは夢が覚めたときのシーン。意識はまだまるで夢の中のようで、うつつの世界が「欠け落ちた時間(とき)の隙間」のように感じられます。とても詩的な表現ですね。
このシーンは、「まどろみ」「思い出せない」「隙間」「漂う」みたいに、手触りのない、不確かな言葉ばかりが並んでいて、まだ起きたばかりで意識がはっきりしないイメージが強く伝わってきます。すごく緻密な歌詞だなぁって思います。

吐き出した この想いは もう届かない
孤独さえ運命(さだめ)ならば 震える心を強く抱き締めて

続くBメロを引用しました。ここでは想いが「もう届かない」と断定されていたり、「孤独さえ運命(さだめ)」なんて大げさな表現が出てきたりするあたり、さっきとは明らかに雰囲気が違って見えます。私たちはこのギャップを見て、あ、こっから夢の中の世界の描写に入ったんだな、って気づくわけなのですね。夢の中では、根拠がなくても何かをしないといけない強い思いがあったり、何かが不可能であることがはっきりと分かっていたりするもの。そういう感じがこの部分から感じられます。

体中叫んでる まるで無限の迷路に
傷だらけの記憶 悲しみの果てまで 彷徨(さまよ)って
嘘のない世界など どこにもない時代でも
確かめたい 自分だけに 刻まれてるDNA

もう一度1番のサビを引用します。ここも、体中で叫んでいたり、迷路が無限だったりと、夢の中にありそうな極端な言い回しばかりです。日常的な言い回しで考えると、夢の中のできごとのほうがふわふわしていて、現実のできごとのほうが確かな実感を伴うような印象があります。でも自分の寝起きを考えてみたら、逆のようなこともよくありますよね。さっきまで見てた夢の中のほうがリアルっぽかった! いま起きたみたいだけどなんだこの部屋? ここどこだ?(自宅です)みたいなことってありますよね。今回の歌詞が、まさにそういうスタンスで描かれているように見えました。

いつしか涙も涸れ果てた 塗りつぶされてた痛みさえ疼きだして

さらに、続く連も引用しましたよ。ここは注目です。
さっきまで体中叫んでたはずなのに、この連では「いつしか涙も涸れ果て」ています。この間に長い時間がはさまっているのは明らかですね。
この連では、そればかりでなく「痛みさえ疼きだして」います。夢の中では痛みを感じないのはお約束です。夢の中かどうかを判別するためにほっぺたをつねったりすることになっていますもんね。このシーンでは痛みが疼きだすわけですから、ここは夢の中ではありません。うつつです。
この先は逐次引用したりはしませんが、もう夢の中と外が切り替わる表現は出てこないみたいでした。
つまりこの曲、1番では主に夢の中のことが描かれ、2番以降はうつつでのことが描かれているということになります。くっきり分かれた!

自分なの? 恋人なの?

ところでこの曲、1番と2番との間には深い溝があるようです。
前回米米CLUB『浪漫飛行』をやったときのように、今回も登場人物のことを考えてみたいと思います。
1番には、登場人物はひとりしか出てきません。「自分」です。だから必然的に、この曲のテーマは自分自身を探ることなのだと構えて、私はこの歌詞を読み進めるわけです。歌詞中、それが端的に出てくる個所があります。

確かめたい 自分だけに 刻まれてるDNA
もがいている 叫んでいる 生きる自分の姿を 探し続けて

1番のサビの最後の2行を引用しました。「確かめたい 自分だけに 刻まれてるDNA」ってフレーズは強いですねぇ。自分自身やそのルーツをもっと知りたい、というのがこの部分の趣旨でしょうし、歌詞全体の趣旨でもあるのでしょう。
…って思っていたのですが、2番を読み進めてみると、どうもそうではないらしいことに気づくのです。
2番の登場人物を洗い出してみると「お前」「二人」というふたつがヒットします。これだけを見るとなんだか演歌みたいですが、いまは演歌は関係ないです。問題なのは「お前」です。「お前」ってだれだよ! さっきまで自分のことばっかり気にしてたじゃんか!

終わらない深い闇 触れられない時間にも
二人だけの記憶 変わらずあるのなら 教えて
叶わない願いでも 答えのない世界でも
愛すること それだけは 決まっていたDNA
振り返るとき その微笑みを 強く焼き付けたいから 幻でも

2番のサビを全部引用しました。ここだけを取り出すと、ふつうのラブソングに見えます。まるで歌詞の最初からずっと「お前」がいて、ふたりの愛を描いた曲に見えます。前半の自分自身への探求は、一体どうなったんだろう。主人公がずっと追い求めていたのは「お前」だったのでしょうか。
特に混乱するのは4行めです。「愛すること それだけは 決まっていたDNA」って。さっきはDNAが「自分だけに刻まれてる」アイデンティティのよりどころだったはずなのに、いまはそういう要素はぜんぜん感じられません。いったいどっち?
最終的に私がたどり着いた結論はこうです。どっちもひとつ、っていうのはどうでしょう。
「愛すること それだけは 決まっていたDNA」ということは、愛はDNAに記されているということになります。つまり、自分のDNAを探ることは、自分の運命の人を探ること。自分自身を探求することは、恋愛を追求することと裏表の関係だったのですね。
そこからCメロを経て、もう一度現れるサビは1番と同じかたちをしています。これはどうしてでしょうか。主人公は「お前」のことなんて忘れて、もう一度自分の探求に戻ったのでしょうか。それともこれは、なにかまた違うことを意味しているのでしょうか。
おさらいしましょう。
主人公は1番では夢の中で、自分自身のDNAを探っていました。このときにはまだ主人公は、恋愛のことについては自覚的ではありません。夢の中の自身は、単に自分自身を追求しているように感じています。
ところが夢から覚めた2番で、主人公は自分のDNAに愛が刻まれていることに気づき始めます。そして、Cメロで重要なことに思い至るのです。

自分に隠された もうひとつの姿 何かを囁(ささや)いてる
「求めるものはひとつ」 この手が真実を話してる

それは「自分に隠された もうひとつの姿」です。これは具体的にいうと、自分自身がDNAのキャリアなのではないか、ということだと私は思いました。普通の感覚では、自分がDNAを所有していて、自分と「お前」で愛をかたちづくっているように私たちは感じています。でもそうではなくて、DNAや愛のほうが行動の主体で、自分や「お前」はその乗り物にすぎない、という世界観を前提にしていると私は思いました。「自分に隠された もうひとつの姿」とは、乗り物としての自分です。DNAや愛というような、目に見えないものに動かされている自分です。
それに気づいた主人公は、もう一度自分自身のDNAを探り直そうとしています。1番では夢の中だったので「無限の迷路」も「悲しみの果て」もどことなく茫洋とした感じでしたが、最後の部分では違います。無限の迷路はほんとうに無限だし、悲しみの果てはほんとうに果てです。でもその手触りのあるリアルな世界の中で、自分を探ることは「お前」をもっと知ることでもあります。
夢から覚めて、DNAのことを知った主人公は、最後の連でもう一度DNAのことを確かめようとしています。それは自分自身を探ることでもあるし、自分の恋人のことを深く知ることでもあるのだと思います。自分も、「お前」も、DNAも、ぜんぶひとつのことなのでしょう。



ということで、嵐『Breathless』でした。
この間の金曜日はMステの「昭和vs平成 春の応援ソングBEST25」を見ていました。私が2時間のTV番組をきっちり見るなんてレアですよレア。で、いろんな人の紹介VTRを見ながら曲を当てていっていたのですが、平成は25曲あるうち、1位の曲を当てられませんでした…。見る人が見れば分かったんだろうになぁ。私は別に知識を磨きたくて歌詞を読んでいるわけではないのでいいのですが、もっとJ-POPのことを知識として分かっていたらおもしろいだろうなぁ、と思った2時間でした。
ちなみに1位は嵐『サクラ咲ケ』でした。ジャニーズには暗いのです…。
Calling/Breathless(通常盤)

Calling/Breathless(通常盤)

次回はフラワーカンパニーズ『深夜高速』を取り上げたいと思います。でも実はほかにすごく読みたい曲もあるので(まだ歌詞が手に入らない)、そちらが読めたらそちらを読みます♪
(2013/05/05フラワーカンパニーズの曲名が間違っていると教えてもらったので直しました。)

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