5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

FUNKY MONKEY BABYS『サヨナラじゃない』

あこがれの「あなた」。翻って自分。
こんにちは。
もうすぐ年末。なぜか年末には歌番組が多いので、今年の曲を取り上げたいと思いました。そこで、
サヨナラじゃない(初回生産限定盤)(DVD付)
FUNKY MONKEY BABYS『サヨナラじゃない』を取り上げようと思います。今年の紅白歌合戦にも登場する予定の楽曲です。

サヨナラじゃない いつでもあなたと
希望 空 未来 全部つながってる
アリガトウでは伝えきれないほど
温かい日々 ひとりじゃなかった

サビの歌詞はこんな感じ。タイトルを踏まえたメッセージが力強く響くメロディです。FUNKY MONKEY BABYSは2013年には解散することが決まっています。それを知るとこのタイトルは解散を暗示しているようにしか見えなくなっちゃいますね。
でもよく見ると、ばっちり解散を示唆するような歌詞ではないような感じです。登場人物は「二人」だし。
じゃあ、この歌詞にはどんな世界が見つけられるでしょうか。今からそれを探っていきたいと思います。

歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND136132/index.html
構成はこちら→A-B-サビ-A-B-サビ-C-サビ-'サビ

理論編。

まあいいから、とりあえずコレを読んでいる人は自分の家族に「サヨナラじゃないよ」とかって言ってみてください。唐突でいいです。相手はなんと答えるでしょうか。
私が家族にそう言われたとしたら、とても混乱すると思います。えっ、なんでいきなり? なんか、どっか旅立つの?とかって答えそう。心の記憶領域を検索して、なにかサヨナラ要素があったかどうか必死で考えそう。
ふつう、いきなり「サヨナラじゃない」なんて言うものではありません。そういう発言が似合うのは、事前にサヨナラ要素が示唆されているときだけです。


たとえば、付き合っているふたりがいます。彼は社会人で、海外に異動することになりました。ふたりは遠距離恋愛の道を選びます。空港で、彼は最後に彼女を抱きしめて、こう言うのです。
「サヨナラじゃないよ」
…はい。これなら自然です。話がベタすぎるとか、そういう突っ込みはナシです。
次。

3月です。卒業のシーズンです。卒業式が終わって教室に戻って、先生の話も終わって最後の号令が終わりました。さようならのあいさつもこれで最後です。でも、友だちが言うのです。
「サヨナラじゃないけどね」
はいカットぉー!
そんなわけで、「サヨナラじゃない」っていう言葉が似合うのは、サヨナラが示唆されるシチュエーションだけです。この曲も『サヨナラじゃない』と歌うからには、なにか別れが裏に描かれていると考えられると思います。これが、ひとつ目の大事なポイントです。

これと同じ考え方で読んだ曲として、

なんかがあります。よければそちらも。

ところでこの曲、Aメロには過去が、それ以外のシーンには現在が描かれています。

肩を並べ走ったあの日の空の色
今でも覚えてるよ
あなたとなら何にでも手が届く
そんな気がしたんだ

最初のAメロを引用してみました。「あの日」とか出てくる時点で、過去のことが描かれているのは明らか。回想しているのは現在ですが、その回想の内容が描かれている連だと考えることができます。

陽が昇って沈むように
夢が覚め 時間は流れて
今ではそれぞれの
道を歩いてるとしても


サヨナラじゃない いつでもあなたと
希望 空 未来 全部つながってる
アリガトウでは伝えきれないほど
温かい日々 ひとりじゃなかった

続くBメロと、サビの前半を引用しました。ここからは現在に軸足を置いた歌詞です。「今では」っていう言葉も出てきますし、「つながってる」っていうアスペクトは現在の出来事であることを印象づけてくれます。
さて、2番に入るとまたAメロが過去の内容に変わります。

でかい夢を掴み取るため誓い合った
あの日の約束は
少しだけ形が変わったけど
この胸の中に

「あの日の約束」っていうフレーズがまさに過去。

ふたりの夢の跡
色あせてしまわないように
いつでも いつまでも
大きな声で歌うよ

続くBメロからはやっぱり現在の描写に戻ります。「歌うよ」って書いてあったら、普通は今から歌い始めますね!って感じで、歌う状態が今スタートすることを表現するのだと思うのです。
そんなわけで、この歌詞は過去と現在を行ったり来たりしています。そしてとても大事なのは、過去においてはふたりは一緒にいたのに、現在は主人公はひとりぼっちだと言うことです。
もう一度、1番と2番のAメロ(過去を描いているのでしたね)を引用してみます。

肩を並べ走ったあの日の空の色
今でも覚えてるよ
あなたとなら何にでも手が届く
そんな気がしたんだ

「肩を並べ走った」ということは、ふたりは一緒にいるみたい。

でかい夢を掴み取るため誓い合った
あの日の約束
少しだけ形が変わったけど
この胸の中に

「でかい夢を掴み取るため」に「約束」を誓い合うことができるので、やはり過去において、ふたりは一緒でした。
ところが。1番のBメロを引用してみます。

今ではそれぞれの
道を歩いてるとしても

「今ではそれぞれの/道を歩いてる」だと!?
さらに2番のBメロにおいても。

二人の夢の跡
色あせてしまわないように

「二人の夢の跡」って。掴み取るために約束した夢は、もう痕跡でしか残っていません。それは、現在において、主人公はひとりだからです。「あなた」はもういないからです。
ここで、タイトルのフレーズが胸に響いてきます。この曲は『サヨナラじゃない』という曲でした。私は確信したのです。やっぱり主人公は「あなた」とどこかでサヨナラしたんだ!って。

妄想編。

さて。この曲の「二人」は、どんな関係なのでしょうか。
二人の関係の特徴としては、

  • さいころからの仲
  • あるていど対等
  • 夢のために約束を誓い合う
  • でもその夢は今は叶っていない

みたいな感じだと思います。これに当てはまる関係といったら、どんな感じでしょうか。
私は、主人公はスポーツの選手なのではないかと思いました。たとえば、主人公も「あなた」も野球選手、っていう設定だとどうでしょう。ただ、ふたりには決定的な違いがあります。「あなた」は人気も実力もあって、メジャーリーグに挑戦する旨の記者会見を開いています。一方で主人公は、戦力外通告を受けたところだとしたら。

肩を並べ走ったあの日の空の色
今でも覚えてるよ
あなたとなら何にでも手が届く
そんな気がしたんだ

何度も引用している、最初の1連です。ふたりで「肩を並べ走った」のは練習場への道のりかもしれません。ふたりは幼いころから、プロ野球の選手になるという夢を共有しながらがんばってきたのだと思います。

陽が昇って沈むように
夢が覚め 時間は流れて
今ではそれぞれの
道を歩いてるとしても

続くBメロです。時は流れて、ふたりとも曲がりなりにもプロの選手として活躍しています。でも、主人公が戦力外の通告を受けたのとは対照的に、幼なじみの「あなた」はテレビの画面の向こうで晴れ晴れしい笑顔です。

サヨナラじゃない いつでもあなたと
希望 空 未来 全部つながってる
アリガトウでは伝えきれないほど
温かい日々 一人じゃなかった

「サヨナラ」と「アリガトウ」がカタカナなのは、両方とも「あなた」が口にした言葉だからなのではないかなと思いました。「あなた」は記者会見で「サヨナラ」とも「アリガトウ」とも言うのです。主人公はそれの言葉の一つ一つをかみしめながら画面に釘付けです。メジャーリーグは海の向こうのアメリカでのことです。遠い世界に旅立つ幼なじみを、感慨深い気持ちで見送る主人公がいます。距離はもちろん隔たりますが、それでも離ればなれではありません。「全部つながってる」のは事実だし、「一人じゃなかった」とも実感するのです。

あなたのその笑顔は
僕をこんなに強くする
悲しみも 切なさも 越えて来たんだ
悲しみも 切なさも 越えて行くんだ

主人公は翻って我が身に思いを馳せます。確かに今は戦力外通告を受けたところですが、トライアウトに望みをつなぐ気概がないとこれから選手を続けていけません。シーズン中もあまり結果を残せなくて、悲しい思いも切ない思いもしてきました。その気持ちは「あなた」に支えられながら乗り越えてきました。「あなた」に会うことは難しくなるけれど、それでも、これからも辛い気持ちを乗り越えていけるように、自分を奮い立たせているみたい。
野球選手だとしたら、そんな感じでキレイに筋の通った読み方をすることができそうなのです!



というわけで、FUNKY MONKEY BABYS『サヨナラじゃない』でした。
実はずっと前からFUNKY MONKEY BABYSは何曲も取り上げては挫折していたので、今回きちんと形になってよかったです。以前ゆきさんからリクいただいた曲とは違うのですが、FUNKY MONKEY BABYSはひとつ、このへんでお許しください…。ほかの曲なかなかキレイに読めなくって…。
次回は年明けの更新になります。次回は年始から早々、人力検索はてなで質問を立てて、それに絡めた記事にする…つもりです(汗)。ちなみにこういう前科があります。やるとしたら次回はもっとうまくやろっと。
さて、2012年は今までよりもたくさんの方に訪問いただき、刺激の多い年でした。では、よいお年をお迎えくださいませ。Youtubeでも30秒しか試聴できませんが、クリックすると1分半聴けます♪
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