5日と20日は歌詞と遊ぼう。

毎月5日と20日に、J-POPやボカロ曲などの歌詞を読んだり、統計したりしています。twitterは@hacosato。

サザンオールスターズ『TSUNAMI』

大人じゃなくて子ども。でも本当は大人。
こんにちは。
TSUNAMI
今回は予告通り、サザンオールスターズ『TSUNAMI』を取り上げてみたいと思います。

見つめ合うと素直にお喋り出来ない
津波のような侘しさに
I know ..怯えてる.Hoo...
めぐり逢えた瞬間から魔法が解けない
鏡のような夢の中で
思い出はいつの日も雨

サビの歌詞はこんな感じです。私は最初にこれを聞いて思いました。
「見つめ合うと素直にお喋り出来ない」って…子どもか!
見つめあうだけで言葉が出てこなくなってしまうっていうのも人生経験浅そうな初々しい感じ漂っていますし、そもそも「お喋り」っていう単語が、サザンのアダルトな感じとはどうも不釣り合いです。
このグリーンでナイーブな感じはいったいなんでしょう? この違和感にはきっと理由があるはず。
それをこれから考えていきたいと思います。
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND12255/index.html
構成はこちら→A-A-B-サビ-A-B-サビ-サビ-アウトロ

子どもか!

私は、この曲の主人公は少年だと思ったのです。「僕」=中学生ぐらいの少年です。
で、もうひとつ。相手方の女性は大人です。少なくとも中学生とか高校生とかじゃなくて、大学生以上ぐらいの。

見つめ合うと素直にお喋り出来ない
津波のような侘しさに
I know ..怯えてる.Hoo...
めぐり逢えた瞬間から魔法が解けない
鏡のような夢の中で
思い出はいつの日も雨

もう一度1番のサビを引用しました。さっきも触れた「見つめ合うと素直にお喋り出来ない」のところ、主人公が中学生ぐらいの男子だったらきちんと像を結ばせることができますね。主人公はある女性が好きで、その人と見つめ合うだけでもう言葉に詰まってしまいます。きっと初めての恋愛で、もしかしたら年上の女の人としゃべることそのものにあまり慣れていなくて、それでこんな感じになってしまうのかもしれません。ショタたまりませんね(←いろいろ違)。
さて、2番のサビも引用します。

人は涙見せずに大人になれない
ガラスのような恋だとは
I know.. 気付いてる,Hoo..
身も心も愛しい女性しか見えない
張り裂けそうな胸の奥で
悲しみに耐えるのは何故?

ココですココ! 「人は涙見せずに大人になれない」はとても示唆深いフレーズです。これの対偶をとって、ちょっと曲解して平べったい言葉でいうと「大人になった人はみな涙を経てきた」って感じになるかと思います。この部分は子どもが大人へと成長するステップを歌った部分です。2番とはいえ、サビで。サビは露出も多くなり、人々に記憶されやすいはずの特等席です。こんなところで成長を歌っているのなら、この曲の大きなテーマが成長であってもおかしくないはずです。
この曲の主人公が少年でもなんでもないただの男性で、この曲のテーマに成長が関係なかったとしたら、2番のサビの冒頭という割といい席で、成長のことなど歌詞に出てくる必然性は薄いと思います。でも実際には上記のように、この曲は成長を歌っています。私が仮説を立てたように、この曲の主人公が少年だったとしたら、その理由がスムースに汲み取れるのです。
もうひとつ注目に値するのは「ガラスのような恋」です。「ガラスのような」って言ったら、捉え方はいろいろでしょうけど私はガラスのように壊れやすい、という意味だと思います。この恋が壊れやすいのはどうしてでしょうか? それはきっと、年の差があるからです。
以下、妄想でシチュエーションを補強してみました。
主人公が14歳で中2の少年で、「愛しい女性」が20歳で大3の女子大生だとしましょう(具体的な設定にしたら急にわくわく度が高まってきましたw)。主人公の少年は、夏休みなので、お父さんの実家がある茅ヶ崎に帰省して、毎日海に繰り出しては覚えたてのサーフィンかなんかをして楽しんでいます。そしてある日、海の家でバイトをしている女子大生のカノジョに出会ってしまったのでした。
ところが、少年の夏は長くは続きません。家のある群馬へ帰る日がやってきました。最後の日、彼は海の家へとやってきました。せっかくの最終日なのに海は荒れ、海の家の女子大生にサーフィンを見せることもできません。彼は気丈に別れました。でも、空は彼の代わりに泣いていました…。
的な♪

思い出か!

ところで、この曲の冒頭を振り返っておきましょう。

風に戸惑う弱気な僕
通りすがるあの日の幻影
本当は見た目以上
涙もろい過去がある

「あの日」「過去」と、昔を想起するような単語が並びます。聴いている私たちは、これから昔話が始まるのかと思いながら続きに耳を傾けます。

止めど流る清か水よ
消せど燃ゆる魔性の火よ
あんなに好きな女性に
出逢う夏は二度とない

で「あんなに好きな女性に/出逢う夏は二度とない」と続きます。ある女性との恋愛の思い出を歌った曲なんだ、と聴いている私たちは気づくわけです。
この文章の前半で、私はこの曲の主人公が少年なのではないかと予期しました。でも実は本当の主人公は少年ではなくて(たぶん)大人で、大人になった自分が少年のころの自分を思い返している、という入れ子のシチュエーションになっていたようです。これは前回読んだ井上陽水『少年時代』と同じです。
『少年時代』は現在と過去が交互にやってきますが、『TSUNAMI』では最初に思い出す側の連があって、そのあとは思い出される側の連が続いています。交互に現れるのではなくて、入れ子の構造になっています。
入れ子といえばGReeeeN『オレンジ』がまさに同じかたちをしていました。『オレンジ』の場合は最後にまた思い出す側(現在)の連が配置されていましたが、『TSUNAMI』ではどうでしょうか? 『TSUNAMI』の最後のほうは、どんな終わり方でしょうか?
ここで私が注目したのは、時制です。この曲、思い出を描いているはずなのにほとんど全部が現在形というか、言い切りのかたちで表現されています。

見つめ合うと素直にお喋り出来ない
津波のような侘しさに
I know ..怯えてる.Hoo...
めぐり逢えた瞬間から魔法が解けない
鏡のような夢の中で
思い出はいつの日も雨

引用した部分で、テンスを表現しうる個所は全部で3つあるみたいですが、全部言い切りのかたちです。これが過去形だったら、「出来なかった」「怯えてた」「解けなかった」となるはず。でもそうはなっていません。思い出の記憶の中に入り込んで、聴き手もリアルタイムで少年の主人公の心の動きを感じ取れるような表現になっています。
が、最後の最後で、そのポリシーが崩れます。

見つめ合うと素直にお喋り出来ない
津波のような侘しさに
I know..怯えてる,Hoo...
めぐり逢えた瞬間から死ぬまで好きと言って
鏡のような夢の中で
微笑をくれたのは誰?

好きなのに泣いたのは何故?
思い出はいつの日も…雨

3つめのサビから、最後までを引用しました。
3つめのサビ、前半は最初と同じです。「出来ない」「怯えてる」と、時制も現在形です。
ところが、最後になって「微笑をくれたのは誰?」「好きなのに泣いたのは何故?」と、時制は過去形に変わります。曲の最後の最後になって、やっと過去形が出てきます。
過去のことを思い出していたのに、ずっとそれを現在形で歌ってきました。だから私たちは思い出の中に入り込んで、思い出の中の人物の感情をそのままなぞってきました。でも、思い出はもう過去のことです。表現に過去形が出てきて、私たちはそれに気がつきます。
そしてやっと、過去を過去として切り分けることができるようになるのです。きっと主人公も過去の思い出を思い出の箱にしまって、新しい恋に向かえるようにと気持ちが切り替わったのでしょう。



というわけで、サザンオールスターズ『TSUNAMI』でした。
サザンじゃないですが、前に桑田佳祐『波乗りジョニー』も読んだことがあります。夏と恋愛を絡めるスタイルはおんなじですが、片方は失恋、片方は新しい恋と読めます。さすがにバリエーションに広がりがありますね。今度、桑田さんが絡んだ夏以外の曲を考えてみるのもおもしろいかも。
次回こそYUKI『うれしくって抱きあうよ』を取り上げたいところなのですが、今もってうまく読めないので、しばらく寝かすかもしれません。Leoさんごめんなさい。本当は『TSUNAMI』も『波乗りジョニー』を取り上げたのと同じ時期に一度挑戦して挫折しているクチなので、寝かせたほうがいいかもしれないのでした。
YUKIより前になるかあとになるかわかりませんがmihimaruGT『幸せになろう』を取り上げるつもりです。たまたまこの間 歌詞を見たら、ぴんときちゃいました!

追記:次回は遊助『ミツバチ』を取り上げます! いろいろ浮気してすみません…。
TSUNAMI

バラッド3 ~the album of LOVE~

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