5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

宇多田ヒカル『Goodbye Happiness』

なにからのgoodbyeなの?
こんにちは。
今回は、Marchさんのリクにお応えしまして、宇多田ヒカル『Goodbye Happiness』を取り上げたいと思います。ありがとうございました☆

So goodbye loneliness
恋の歌 口ずさんで
あなたの瞳に映る私は笑っているわ
So goodbye happiness
何も知らずにはしゃいでた
あの頃へはもう戻れないね
それでもいいの Love me

サビはこんな感じ。「goodbye〜」がいくつかあって、なにかお別れを強くイメージさせるような歌詞です。なにからのお別れなのでしょうか。過去の自分? それとも元カレ? いろんなことが考えられますが、私の考えは…。
って話をしていきたいと思います。
Utada Hikaru Single Collection Vol.2
歌詞はこちら→https://www.uta-net.com/song/105236/

構成はこちら→A-A-B-サビ-A-B-サビ-C-サビ

Cメロ歌うのうまいなー。

なにとgoodbyeしてる?

この曲には、サビに入るところに「goodbye」が出てきます。サビの最初という特等席に、こんなにキャッチーなメロディまで合わさって、この上ない目立ち方でgoodbyeが配置されているわけです。なにからgoodbyeしているのか、見てみると、

So goodbye loneliness

So goodbye happiness

So goodbye innocence

と、こんな感じです。日本語に訳すなら、孤独、幸福、無邪気さ、って感じになるかなと思います。昔は孤独で、幸福で、無邪気だったのに、いまはそのどれでもない、と主人公が捉えているということがわかります。
これと同じメロディの部分には、goodbyeじゃないものも含まれています。2番のサビは

過ぎ去りし days

ってなっていますね。
孤独で、幸せで、無邪気という特徴は、みんな過去のものです。それをひっくるめて「過ぎ去りし days」と呼んでいるのだとすると、とてもきれいにつじつまが合います。ほかのたくさんの曲でそうであるように、同じメロディに乗る言葉は同じ役割を持つことが多いように思うのです。


Salyu『青空』Whiteberry『夏祭り』フジファブリック『若者のすべて』あたりで同じ考えを使った読みをしています♪ よろしければそちらもぜひ。
ほかにもgoodbyeじゃないサビのメロディがあります。最後のサビにも注目してみましょう。最後のサビは、

ありのままで

っていう風になっています。今までの読みを絡めるなら「ありのままで」は「innocence」と同じものとして捉えることができるかもしれません。孤独で、幸せで、無邪気で、ありのままだったのは、みんな過ぎ去りし daysだということか。この曲は、そんな過去への郷愁を中心に据えた曲みたいです。

じゃあ、過去ってなに?

でも問題は「過去への郷愁」の「過去」の中身です(><)o
ネットでいろんな人の意見を見たんですが、ある人は昔の天才少女としての自分自身だ、というし、ある人は元カレだ(つまり失恋を歌った歌だ)というし、まちまちなのです。
というわけで、私はちょっと違う感じで考えてみたいと思います。
この曲には二人称が出てきます。つまり、だれかに向けて歌いかける曲です。その歌いかける相手が郷愁の対象だから、二人称の宛先がわかればもう解けたも同然です♪
…なんて思って、私はこの曲から二人称を洗い出しました。そしてびっくりしました。
君、あなた、ダーリン、you…二人称が4つもあるじゃんか! コレどういうこと!? コレってトリビアになりませんか?

  *  *  

…そのトリビアの種、つまりこういうことになります!(自問自答)
メインの二人称は「君」です。

甘いお菓子 消えた跡には
寂しそうな男の子
雲一つ無い summer day

日に焼けた手足 白いワンピースが
汚れようがおかまい無し
無意識の楽園

この曲の最初を引用しました。「無意識の楽園」のことが描かれています。ここは曲の始まりであり、郷愁の宛先であり、goodbyeの対象です。白いワンピなんて“いかにも”な「innocence」ですよね。でもそれでいいのです。なにせ「楽園」ですから。

夢の終わりに待ったは無し
ある日 の名を知った

続く部分を引用しました。
さっきの「楽園」は「夢」だったことが描写されます。「夢」は終わってしまい、現実へと引き戻されてしまったとき、主人公は「君」の名を知ります。この曲のメインの二人称です。
私、この「君」は“恋愛の神さま”のことだと思います。
「夢」が終わってしまうことと、「君の名を知った」ことは同じことの表裏の関係です。
「君」=恋愛の神さまだとすれば、この曲はひとつの像を結びます。
主人公は最初、孤独で、幸せで、無邪気でした。でもいつか恋を知ってしまって、そうしたらもう恋を知る前には戻れなくなった、ということだと思ったのです。
そこから先のサビの部分は、初恋を描いています。

So goodbye loneliness
恋の歌 口ずさんで
あなたの瞳に映る私は笑っているわ
So goodbye happiness
何も知らずにはしゃいでた
あの頃へはもう戻れないね
それでもいいの Love me

特に印象的なのは「あなたの瞳に映る私は笑っているわ」という部分。ここがあるからこの曲はただの自問自答ではないのです。また、二人称がふたつ出てくることも、私の仮説なら破綻しません。 「君」=恋愛です。そして「あなた」=カレなのです。

考えすぎたりヤケ起こしちゃいけない
子どもダマしさ 浮き世なんざ

このあと2番のAメロでは、口調が少し変わります。さっきは「夢」を歌っていたのに、今度は「浮き世」。ここから察するに、主人公は失恋したんじゃないでしょうか。
そしてそのあとに続く2つめのサビが、この曲のメインの部分。

過ぎ去りし days
優しい歌を聴かせて
出会った頃の気持ちを今でも覚えてますか?
So goodbye innocence
何も知らずにはしゃいでた
あの頃へはもう戻れないね
君のせいだよ Kiss me

このフレーズは最後の部分でわかるように、「君」に向けて歌われているフレーズです。つまり、恋愛の神さまに向けて歌っている部分ということになります。主人公は、恋愛の神さまに向かってこう歌うのです。あなたのせいで恋愛のステキさを知っちゃったじゃない!って。一度恋愛を経験してしまったら、もう恋愛を知る前の自分には戻れないのです。恋愛なしでも孤独で、幸せで、無邪気だった自分には、もう、戻りたくても戻れないのです。
失恋を経てひとりになってしまったいま、主人公は昔みたいに、ひとりで幸福を感じることはもうできません。
幸せになるためには恋愛の神さまに従って、また別のだれかを見つけるしかないのだと思います。
この曲は、その気持ちを歌っているのではないかな、と私はこの歌詞を読んで思いました。



というわけで、宇多田ヒカル『Goodbye Happiness』でした。宇多田ヒカルは初めて読んだのですが、なかなか骨があって難しかったです。でも世の中、難しくてあきらめたくなるタイプの曲と、難しいけどぜったいにいい読みができそうな曲と、2種類あります。今回は明らかに後者でした。食らいついてよかったです。なんとかカタチになる読みができました♪
次回はYUKIうれしくって抱きあうよ』が読めたら読みます。ほかにリクあったらそれやりますので、いつでも教えてください♪
https://itunes.apple.com/jp/album/goodbye-happiness/id720586371?i=720587322&uo=4&at=10lrtS
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