5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

YUKI『ひみつ』

恋の火遊び?
こんにちは。ひみつにしてたことがあります。ほんとは今回違う曲を取り上げようと思ってました。挫折orz
ひみつ
さて、気を取り直しまして、今回はYUKI『ひみつ』を取り上げたいと思います。
YUKIといえば以前YUKI『COSMIC BOX』を読んだことがある以来です。このときには個人的にかなり会心の読みができたと思っているので気に入っています。というか、全般的に私はYUKIの歌詞と相性がいいです♪
今回の『ひみつ』は、

「三日月…夜空が笑っているみたいに見えるよ」っていう話
わかってくれて ありがとう
2人を写す記念写真は残らなくってもいい
今の君が好い

っていうサビのフレーズがキラーすぎる一曲です。
けど、よーく考えてみて。「「三日月…夜空が笑っているみたいに見えるよ」っていう話/わかってくれて ありがとう」って歌詞は、ちょっと不思議。だって、ありがとうって言っている時点で、このふたりはそばにいないっぽい感じだから。
それに「2人を写す記念写真は残らなくってもいい」っていうのもちょっと変。写真を撮ってるならふつうは残すためだし、残らなくていいなら撮らないはず。
いろんな疑問はひとつに収斂させることができます。ねえ、この曲の「君」ってだれ?
これからそれを考えていきたいと思います。
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND109801/index.html
構成はこちら→ABサビABサビ(間奏)Bサビ

「君」ってだれ?

ところで『ひみつ』は、

火傷したいわ

という部分が冒頭に来ています。「火傷したいわ」って! これもしかして、恋の火遊びってやつでは?と勘繰るに十分です。おぉ、たとえば「私とホスト」とかだったりしたらぴったりだ! 「君」ってホストだったのか!
そうやって考えると、ひとつひとつのフレーズが急に立体的に見えてきます。

赤い糸 手繰り寄せて
辿り着いた指先が君じゃなかったとしても

さっきの行の直後です。ふたりの関係は、赤い糸という運命で結ばれるようなものではないことが示唆されます。もっとインモラルで、許されないような恋なのかも、って感じで、妄想はどんどん膨らんでいきます。主人公とホストだったとしたらそれは確かに運命の恋じゃないし、赤い糸で結ばれているわけでもなく、でも火遊びだし、歌詞の雰囲気ととてもよく合う感じがします。

雲は流れて 形を変えては消えてく
始めから意味なんて何も無かったみたいに

2番のAメロです。「始めから意味なんて何も無かったみたいに」なんてなかなかストレートです。ほんとうはホストとお客さんっていう関係は最初からなかったみたいに、っていう風に取れますから。雲がかたちを変えるように、私たちの関係も変わっていく、っていう意味がこの歌詞に込められているように取れます。

ねえ!このままどこかへ2人で消えてしまおうよ
誰も2人を知らない遠くまで

さらにその直後を引用します。でもこのふたりはどこかのお店で出会っているわけで、お店の近くだったら別のなじみのホストさんとかお店の人とかがいるかもしれませんし、主人公の行動圏内なら主人公自身の顔なじみがいるに決まっています。ふたりの関係性を考えるなら、そういう顔なじみは、邪魔者です。こんなとき「誰も2人を知らない遠くまで」消えてしまうことを、ふつうは駆け落ちといいます。駆け落ちソングか。

でも、ほんとうにホスト?

と、私はここまでホスト仮説によって盛り上がってきたわけですが、私の本当の考えは違うところにあります。「君」はホストとかじゃない気がします。
私は、「君」=主人公の弟なのだと思うのです。姉弟ラブです。かなりの火遊びです。

赤い糸 手繰り寄せて
辿り着いた指先が君じゃなかったとしても

だとすると、ふたりは赤い糸で結ばれていなくても当然です。日本も含めてだいたいの社会ではインセンスト・タブーがありますから、運命の赤い糸さんが姉妹間をうっかり結んでしまうようなことは想定できません。

雲は流れて 形を変えては消えてく
始めから意味なんて何も無かったみたいに

さらに先ほど引用したシーンをもう一度。2行めのシーンもすっと心に落ちてくる感じ。初めから姉弟ではなかったみたいに、っていう風に取れますよね。それに注目なのが1行め。雲の描写は、ふたりの関係性が時間を追うにつれて変化していくことを示しているのだとは思いますが、最後「消えてく」になっています。雲が消えていってしまうように、ふたりも「誰も2人を知らない遠くまで」消えてしまおうとしています。雲とふたりは重ねあわせられていますね。

ああ 結びあった小指の約束が哀しくなるわ

引用したのは2番のBメロです。小指を結びあって約束するなんて、まるでコドモです。でも姉弟だったら小さいころから一緒に暮らしているでしょうから、こんな描写も不自然ではありません。さいころ、ふたりは小指を結んで約束をしたんだと思います。それをいま、果たそうとしているのです。

2人を写す記念写真は残らなくってもいい
今の君が好い

そして最後。ここに来て写真の意味が分かってきます。ふたりが姉弟だとすると、ふたりが写った家族写真はきっとたくさんあるはずです。でも、いまのふたりは家族ではありません。ふたりは、いわば恋人。だったら「2人を写す記念写真」はいまのふたりを正確に表すものではありません。だから「残らなくってもいい」と歌えるのです。
「今の君が好い」も最後の最後にぐっときます。弟としての「君」ではなくて「今の」(=恋人としての)君が好いって歌っているように読めるから。
こんな風につじつまを合わせて読めるから、私は「君」って弟のことだと思ったのでした。



というわけで、YUKI『ひみつ』でした。
今回私は「君」=弟として読みましたが、ほかの読み方もできる気がします。お客さんとホスト、っていう読みでも最後まで矛盾なく読める気もします。でもそれより私が推したいのはもっとインセンスト・タブーに触れちゃうようなインモラルな恋愛。例えば母と息子、とか。例えば姉と妹、とか。いろんな読み方がこの歌詞ではできて、そのたびに少し異なったイメージの大風呂敷を広げることができます。YUKIとっても楽しい!
ところで「君」ってだれ?的な疑問は、歌詞を読むにあたってとってもポップでわかりやすい切り口だと私は思っています。これまでもスキマスイッチ『奏』とかWhiteberry『桜並木道』とかで取り上げてきました。実はただの恋人のように見える「君」が、よく読んでみるとそうではなかったりして、そういう読み方をこれからもできたらいいなと思っています。
ところで最近、どんな曲を取り上げたらいいのかぜんぜんわからず路頭に迷っています。リクエストあったら教えてください。というか指針をください(汗)。新しい曲で、自分があんまり読んだことのない曲を読みたいなぁ…。
https://itunes.apple.com/jp/album/himitsu/id570091306?i=570091393&uo=4&at=10lrtS
↑クリックすると90秒聴けるので、Youtubeに上がってるぶんと合わせればタダで2番のサビまで聴けます。
でもね! この曲は最後まで聴くべきだと思うのです。最後の最後のブレスまでこの4分10秒間、私は余すとこなくぜんぶ好き!!
[asin:B0031B67Q6:detail]