5日と20日は歌詞と遊ぼう。

歌詞を読み、統計したりしています。

GOING UNDER GROUND『トワイライト』

渡っていく昼と夜の間
こんにちは。昨日はあったかくて半袖だったけど、今日は長袖でも寒いぐらい。こうして秋は深まっていくんですねー。
トワイライト
というわけで、GOING UNDER GROUND『トワイライト』を取り上げてみたいと思います。ずっと前から秋口のこの時期にこの曲を取り上げたいと思っていたんですが、去年はタイミング的に失敗…。晴れて今年、ちゃんと取り上げることができてよかったです☆

主役が君と僕の脇役のいないストーリー
少しだけ勇気を出した 頼りない声しぼって

というサビばかりが印象的でもないこの歌詞は、全体に物語仕立てになっているみたい。だからサビだけが極端に引き立ってしまったりしないのでしょうね。
だから一部分を引用して「こうだよね!」って言うのは難しいですが、

風と稲穂の指定席へ座る 上映間近のアカネ空
半袖じゃちょっと寒くなってきたな 待ちぼうけいつも僕の方だ

ここの描写が私はすごく好きです。「半袖じゃちょっと寒くなってきたな」っていう表現だけで、季節感と時間を表すことができますよね。うっかり半袖を着てしまうぐらいに昼間は暑くて、そしてそれを少し後悔するぐらいに冷え込んでくるぐらいのタイミング。
つまり、秋の始めの、夕方。
こんな短い表現でこれだけのことを伝えてくるなんて、この歌詞、ただものじゃないっ。
歌詞はこちら→http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND17779/index.html
構成はこちら→イントロ-A-B-A-B-サビ-A-(間奏)-イントロ-B-サビ

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本当は不正確な言い回しだとは思いますが、この曲、イントロが2回も出てきます。
基本的にはエレキギターでがしがし進んでくれる爽快な曲ですが、1連と8連だけは、アコースティックギターだけでしっとりと歌われます。

鉄塔のガイコツ ネオンのゼリー 眠れぬ夜を旅する声
瞳を閉じて広がった世界 あぁ そうかあれは…

鉄塔のガイコツ ネオンのゼリー あぁ そうか あれは僕の街だ!!
「夢の中で泣いてみたよ」強がったポーズの男の子

この2ヶ所。歌詞の内容も重複させてありますが、後者は「僕の街だ!!」が入っているところがポイントですね。「あぁ そうか」っていうフレーズを勘案すれば、これが気づきのシーンだとはっきりわかります。ということはこの歌詞、この部分を折り返しにして、“気づきの前”“気づきのあと”その2つに塗り分けることができますね。その部分だけ演奏もこうして特徴的なしるしが付けられていて、歌詞の意味がたとえ分からなかったとしても、転換期だということは聞いてちゃんと分かるようになっています。
転換期を示すしるしは、Cメロによく訪れます。NIKIIE『HIDE & SEEK』とか、スピッツ『チェリー』でもそうでした。どちらも新しいメロディが曲の途中(どちらかというと後半寄り)に出てきて、そこが大きな折り返しをイメージさせるものだったりしました。今回の『トワイライト』は、たまたまイントロと同じ感じなので私は8連もイントロと呼びましたが、言い方を変えれば、曲の冒頭にCメロが付いてるとも言えますね。
ところで、Cメロとも呼べる8連、この曲には3個所の「ああ そうか」があります。
1連。

鉄塔のガイコツ ネオンのゼリー 眠れぬ夜を旅する声
瞳を閉じて広がった世界 あぁ そうかあれは…

7連。

風と稲穂と速くなる呼吸 生きるってことを知りました
あぁ そうか夜の群青色は 誰かが観てた夢のせいだ

8連。

鉄塔のガイコツ ネオンのゼリー あぁ そうか あれは僕の街だ!!
「夢の中で泣いてみたよ」強がったポーズの男の子

最初の「ああ そうか」は、続きがありません。だからなにかに気づいているんだろうに、私たち読み手にはその続きは教えてもらえません。もしかしたらそもそも気づいていないのかもしれないですが、だとしても、気づきのすぐそばに近づきつつある気配があるのは間違いのないことです。この曲は、最初の最初からすでに気づきのさなかにあるのだということができます。
7連の「ああ そうか」には、1連とは違うメロディですがちゃんと続きがあります。「夜の群青色は 誰かが観てた夢のせいだ」とありますね。私たちは、疑問の海へ放り投げられてしまいます。「夜の群青色」ってなに?「誰かが観てた夢」ってなに? 選んでいる言葉は長いし、はっきりと手に触れられるものではありません。
8連になるとそれが「あれは僕の街だ!!」という手応えのあるフレーズへと変化します。「誰か」というアバウトな方向から「僕」という確実なものへ、目的となる言葉も進化しています。きっと主人公のたどりついた答えは、ここだったのでしょう。
でもぶっちゃけ言いますが、私はこの部分、よくわかりません。ふわっとしたものから確かなものへと変わった、ということ自体は理解も納得もできるのですが、その「確かなもの」がなんなのか、いまいち決め手にかけることしか考えつきません。
たぶん7連「誰かが観てた夢」は、1連「眠れぬ夜」と結びつくのでしょうし、それは8連「夢の中で泣いてみたよ」とも符合するのだと思います。でも、つながっているものがなんなのか、まだ考えが及びません。
それからもうひとつ、8連でついにたどりついた「僕の街だ!!」という結論めいたフレーズは、1連の「鉄塔のガイコツ ネオンのゼリー」という風景描写と関連するものなのでしょう。でもこれがさっきの「夢」とどういう関係にあるのか、いまひとつ腑に落ちる答えが見つかりません。やっと気づいた答えは、実は曲の冒頭の時点ですでに存在していたいものなのです、的なその場しのぎの文章も書けるぞ自分♪とか一瞬 考えましたが、もっと深遠な意味が含まれている気がするんだよなぁ。だからいまは、簡単に気づいたところだけ列挙しました。いつかこれが一つの線で結べたらいいんだけど。

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さて、1連、7連、8連という特別な意味を持つ連ばかりに注目してきました。それは、この曲で左記の部分(特に8連)が大事なんじゃないかなと考えたからです。
じゃあ、それ以外の部分はどうでしょう? 8連の前とあとで、本当に歌詞の世界は変わったのでしょうか?

旅立つ勇気を 歩き出す元気を
いつも探してる いつも探してる
 
約束しよう僕らは それぞれの地図を持って
旅立つ事はきっと さよならなんかじゃなくて
いつだって主役は君と僕で 期待とプライド背負って
主役は君と僕で それぞれほら違うストーリー

ごっそり、8連のあとを引用してみました。9連と10連です。これをぼんやりと眺めてから、2連あたりに目を戻してみます。新しいことは、なにか見つかるでしょうか。
私が気づいたのは、主人公がすごくアクティブになっている、っていうこと。たとえば“気づき前”の2連では、

風と稲穂の指定席へ座る 上映間近のアカネ空

と、アカネ空を映画のスクリーンに例えて、主人公は指定席に座っています。でも10連は、

旅立つ事はきっと さよならなんかじゃなくて

と、その場を旅立つことを選んでいます。
さらに3連では、

胸のポケットにキップが二枚

だったのが、10連では、

僕らは それぞれの地図を持って

になっています。「キップ」って、未来に約束をしてくれるものです。キップは未来の権利と引き換えになって、それは安心を約束してくれます。それに対して「地図」はそんなもの約束してくれません。地図は情報提供をするだけ。でも見えづらい自分自身の立ち位置と、それから歩むべき道を、地図はそっと示してくれます。約束された未来ではなくて、切り開くべきの未来のためのツールを手にしているじゃないですかっ。
ほかにも。4連では主人公は、

灯りが落ちてストーリーを探す おかしいな!?夜は暗いままだ
気付けば僕と君しかいない 風と稲穂のその中で

と、なかなか始まらない映画に不安を抱いている様子が見えますね。「僕と君」は風と稲穂に包まれて、どことなくさびしげです。そうそう、それから「ストーリー」という単語が出てきますが、ここでは探すものですね。
ところが最後の10連では、

いつだって主役は君と僕で 期待とプライド背負って
主役は君と僕で それぞれほら違うストーリー

なんて歌われています。「君と僕」はいつだって主役、と考え方が変わるようになりました。それに、「ほら違うストーリー」なんて。ストーリーは主人公が提示することができる単語に変わったんですね。
ストーリーについてはもうひとつ大事なことがあります。最初は同じキップを持っていたふたりが、最後にはそれぞれの地図を持って、それぞれのストーリーを歩むようになります。受け身だった主人公は、最後には能動的に変わります(BUMP OF CHICKEN『オンリーロンリーグローリー』にも同じような変化が訪れましたね)。そして、いっしょだったふたりの未来は、ばらばらになってしまいます。
でも、それはさよならなんかじゃないのです。きっとなにか、新しいスタートなんでしょうね。

つながリンク

前回は福山雅治『家族になろうよ』を取り上げました。今回のGOING UNDER GROUND『トワイライト』との共通点は「いつ*」。です。「*」はワイルドカードね。
家族になろうよ』では、とにかくたくさんの「いつか」が出てきます。サビには毎回必ず、

いつかお父さんみたいに大きな背中で
いつかお母さんみたいに静かな優しさで

と、枕に「いつか」が登場しています。
一方で、GOING UNDER GROUND『トワイライト』には「いつも」がたくさん。

半袖じゃちょっと寒くなってきたな 待ちぼうけいつも僕の方だ

という言い回しもあれば、

旅立つ勇気を 歩き出す元気を
いつも探してる いつも探してる

というように、ぜんぜん別の使い方でも「いつも」が出てきます。「いつか」はないです。
「いつか」というのは、未来のどこかを指し示しています。「いつも」は違っていて、常にっていう意味をベースにして、いまに軸足を置いている気がします。
家族になろうよ』は、結婚してその先の遠い未来を見据えた曲です。だから未来を意識した「いつか」がたくさん使われるのでしょう。それに対して『トワイライト』は、現在の気づきが起点になっている曲です。だから未来のことよりも「いつも」のほうが大事なのでしょう。
いきものがかり『ありがとう』でも取り上げましたね。歌詞にはたぶん、時制があるのです。



というわけで、GOING UNDER GROUND『トワイライト』でした。
私はこの曲を現在に軸足を置いているのだと捉えましたが、そういえばトワイライトとはそもそも、空の色の暗闇と光が混じり合う様子を表した言葉でした。変化の途中を示している「トワイライト」という言葉、この歌詞には直接は出てきませんが、意味的にもすごくぴったりきますね!
私はGOING UNDER GROUND、すごく好きなバンドのひとつです。このダイアリーでは女性が歌う曲のほうが若干 多いので、そういう系が好きなのかと思われそうですが、そんなことないんだなぁこれが。
でも、アクセスされている記事を見ると、そのほとんどが男性の、しかもバンドが歌う曲の記事です。歌詞サイトのランキングとかとはちょっと違いがあって、興味深いところ。
トワイライト

トワイライト

↑クリックするとカップリング曲も聴けます。『足音のブルース』超大好き!!
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